今回、「Onboarding Hack! ~アプリUXの最適解を考えよう~」というイベントに参加してきました。
今回は、ブログ枠ということで各企業様の講演を聞かせていただいていたので、そのまとめを行います。
イベントの詳細は こちら です。
落井 麻紀さん「SnapDish 料理カメラ」
まずは、SnapDishという料理の写真を投稿するSNSについてお話を聞いてきました。
イメージしやすく簡単に言うと料理の画像に特化したInstagramといったところでしょうか。
このアプリのおもしろいところは、カメラに料理の写真が映るとAIが料理の「美味しそうさ」を点数化してくれて、100点に近いほど料理が”美味しそうに”撮れているかどうかを見ることができる点です。
現在は約400万人ものユーザがいて、なんとSnapDishのコミュニティから結婚の報告が生まれたほど濃いコミュニティとなっているそうです。
そんなSnapDishはどのようなオンボーディングの変遷があったのでしょうか。
オンボーディングの変遷
ローンチは2011年なので約7年前ということだそうです。まだまだ当時はTwitterやInstagramなどは完全に流行る前でmixiがメインのSNSだったとか。
そんな中で生まれたSnapDishですが、3ヶ月でiPhone 4の宣伝素材として採用され、1年半でAppStoreのベストアプリに選出されるなど最高の滑り出しといってもいいくらいの滑り出し(のように聞こえるくらい)でした。
絶好調な流れのままユーザーを増やそうと広告を打ち、起動画面を変えたりと気軽に広いユーザーに使ってもらえるような施策をいろいろとされ、順調にユーザーが増えていき…と失敗といえる事例があるのか?と思わされました。
ターゲットユーザーを絞ることの重要性
しかし、ユーザー数の成長は一時的で一定以上伸びなくなったそうです。
その理由は、写真を共有するためのサービスであるにも関わらず、料理の画像を投稿する前(=最も体験してほしい体験がされない)段階でユーザーが離脱してしまったため、ヘビーユーザーになかなかなってもらえなかったためでした。
そこで、現在はユーザー体験を見直し、初期フローでカメラ起動から投稿をするところまでとかなり初期ユーザーには重いとも言えるフローをさせているのだとか。
これが結果的には、ヘビーユーザーを取り込むことになり「ターゲットとなる人をしっかり取り込む」ことができるようになったそうです。
ユーザーをインストール前から絞る
最後の懇親会で少しお話させていただきましたが、広告は全く打っていないそうで、メディアに投稿してもらったり純粋な検索のみで新規ユーザを獲得しているみたいです。
こうすることで、どのようなアプリかを理解している人のみがインストールする結果となりライトユーザーはそもそもインストールしないという結果になっているのかなと感じました。
枝根 聡樹さん「FOD / フジテレビオンデマンド」
続いて「FDO」について枝根さんからお話していただきました。
FDOは定額見放題の動画サービスです。
フジテレビが提供していることもあり、ドラマなど過去のコンテンツに非常に強みを持っています。
上記のSnapDishとはまた話の内容が違っていて、細かく分析することへのこだわりを強く感じました。
分析事例紹介
基本的に1軸は1週間あたりのアクティブユーザー数を計測の材料として使っていましたが、もう1軸としては
- 機能軸に切って顧客に受ける施策を調査
- どのようなドラマを見ているユーザがアプリを利用するか?
- シリーズや出演者軸に切る
などの多様な軸でどのようなユーザーが価値を感じてくれているのか、また、上記のような定量的な結果から「10月はドラマの期間として区切りがあるから過去のドラマを見る人が増える」といった定性的な予測を立てておられました。
他にも上記の軸でアプリ内のメッセージや配信する作品でA/Bテストを行ったり、プレミアム会員に向けたアプリ内メッセージだったりと盛りだくさんで全てが伝わりきらなかったというのが少し残念ではありました。
また、お時間があればもう少し詳しくお話を聞ければと思います。
伊藤 くみさん「キャリトレ」
続いては高年収転職サイトとしておなじみのビズリーチが運営する20代向けの転職サイト「キャリトレ」についてです。
キャリトレは、求職者と企業の双方がダイレクトにアプローチできるという点で、その他の求人サイトとは異なる独自の価値提供を行っています。(最近は類似のサービスも増えてきましたが)
そんなキャリトレで行われているオンボーディングの最適化には、大きく「課題特定のコツ」と「最適解発見のコツ」という2つの軸でサービスの改善が行われていました。
課題特定のコツ
キャリトレでは、サービスをなぜ継続的に利用していただけないのか?という問いに対して継続する・継続しない人の違いはどこにあるのか?ということを重要視しています。
一見当たり前のように聞こえるかもしれませんが、そこの違いが見えれば改善するとインパクトもそれだけ大きいということです。
ビズリーチさんの課題発見はとにかくロジカルだなと感じました。
課題発見のためにも様々な思考ツールを用います。例えば、コンサルなどでよく用いられる”漏れなくダブりなく”を考えるMECEというフレームワークがあります。
MECEによって問題のボトルネックとなっているのがどこなのか?という問題をより細分化して可視化することができていると感じました。
また、その他にもなぜ?を何度も繰り返すWhy型ロジックツリーなどを使うことで、こちらも同様に問題のボトルネックはどこにあるのか?を徹底的、かつ定量的に考えられておられました。
最適解発見のコツ
最適解発見ということは見つけた課題に対してベストな解決方法を探すということです。
課題を見つけたとしても、それに対するアプローチが間違っていると意味ないですしね。
ビズリーチさんは課題発見の際には、エンジニアやデザイナーの方も含めて多様な面から課題を見つめるそうです。
その中でもチーム内で共有すべきとしていることが、
- 現状
- ゴール像
- 課題
- KPI
- 役割分担
- リスク
- スケジュール
の7つのポイントだそう。確かに共有事項がなにもないと話が発散して収集がつかなくなりそうですからね。
ここで最適解だ!と考えたからリリースとすぐになるわけではなく、社内でユーザーテストを行い、想定シナリオ通りに進むかの検証までを行っているそうです。
ビズリーチさんはとにかく課題に対しても解決策に対しても、ボトルネックとなる部分はなにか?を明確にした上でアプローチを取り、それが想定通りの解決に繋がっているのかを細かく検証していると感じました。
加藤 雄一さん「Smooz」
とにかく快適なブラウザ体験を作るSmoozというアプリについてです。
Smoozは片手で簡単かつ効率的に情報を発見できるブラウザアプリということで、片手でブラウザを簡単に切り替えることができたり、検索をより快適に行えたりとSafariの上位互換版と考えてもらえればわかりやすいかと思います。
上位のアプリはリリース7日後の継続率が20%
今回、本題に入る前にそもそも優れたアプリってどれくらい使われているのか?という話から入りました。
現在、AppStoreには約300万ものアプリが登録されていますが、その中でトップ5000に入るアプリ(上位0.16%?)のアプリはインストールから7日後の継続的利用率が20%だそう。
この継続率は今回のアプリを作成した上で一つの指標としておられました。
オンボーディング変遷
ブラウザアプリをより快適に!というコンセプトはあったものの、最初は使い方を学習させるための方法は特にありませんでした。
ですから、ベータテスターの人からは「Safariと何が違うの?」と突っ込まれる始末。当たり前ですが、頑張って作ったものでも使い方がわからなければ意味がないということなんですね。
とにかく既存のものをより便利にするアプリなので、ユーザーに使い方を学習してもらわなければなりません。
その手段として取り入れたのは、動画や実際のアプリ使用を通して使い方を習得してもらう。そしてよくあるアプリの初回に流れる紙芝居を取り入れたりもしているようです。
こういった変遷を経て7日後継続率20%を達成することができたのです。
LTからの学び
この後あったパネルディスカッションも含めての話ですが「自分たちの伝えたいもの」と「ユーザーが求めているもの」は違うという話が印象的でした。
自分たちが作っているとどうしても伝えたいものが先行してしまいがちです。しかし、そこはぐっとこらえて実際に出てきた数字をもとにユーザーがどのような思考を持っているかイメージを膨らませる。
そのための分析ツールとして便利なものが揃っているからと下記のようなツールや分析を紹介されていました。
- Analytics
- Firebase
- Repeoのビデオ
- ユーザーテスト(https://usertesting.jp/express/)
- カスタマーサポート
- Twitter
山口 絵里さん「monomy」
最後は簡単にものを作って販売・購入できるmonomyというサービスです。
イメージとしてはメルカリのようなCtoCアプリで、自分でデザインしたアクセサリーなどを販売することができます。
ただ、メルカリと違って販売手続きをする必要もありませんし、作るもののデザインもわずか3分でできるなどユーザーは「楽しく商品のデザインだけ作ればいい」という体験を提供することができます。
この自分のオリジナルブランドを作れるという体験が爆発的な人気を読んで現在までに135万作品以上、10万ブランド以上という数字を達成しています。
このmonomyはどのようなオンボーディング戦略を取っているのでしょうか。
事業段階でUXは決めるもの
このアプリ戦略を聞いている際に最も他のアプリとの違いを感じたのはUXは事業設計の段階から決めるということでした。
ストーリーロジックを作り、とにかくやることを一つ決めてそこの改善を徹底的にこだわりぬくという話が印象的でした。
monomyでは、「作る楽しみ」をこだわりぬいたという話でした。
自分のオリジナルのものを簡単に作れるというのは、確かにいい体験を提供できそうだという印象はありますよね。
その簡単さ、そしてわかりやすさ、共有して売れる・褒められるという体験を通してmonomyではその世界観を実現しようとされていました。
ストーリーがとにかく大事ということで、「こうすれば嬉しい」「こうされればアプリを使いたくなる」という定性的ではあるものの、ストーリーがしっかりしているという印象でした。
とはいうものの、実際にアプリをリリースしてからはReproさんの分析ツールとずっとにらめっこをして「なぜユーザーがここで離脱するのかあらゆるパターンを考える」ともお話していたので、とにかく目的を達成するまでは数字を見てあらゆる改善を行うということをしているのだと感じました。
その結果、ユーザーさんはものすごい濃い方も多くおられるそうで、1週間継続率は驚異の60%超え。ものすごい数字ですね笑
まとめ
みなさまの発表が素晴らしく、まとめきれていないなと感じるところもありますが、精一杯まとめてみました。
今回の話を通して感じたのはサービス改善に近道はないということ、そしてとにかく細かく分析してボトルネックとなる部分を徹底的に解消していきユーザー体験を良くしていくことが結果的にユーザーの獲得になっていくのかなと感じました。
最後に今回、登壇したみなさまと開催してくださったReproさんありがとうございました。