はじめに
11月に控えている統計検定1級に向けて勉強中、「コーシー分布」がわからなかったのでまとめました。
本記事は、以下のテキストを参考にしました。
増訂版 日本統計学会公式認定統計検定1級対応 統計学
第1章 練習問題 問2より
コーシー分布の確率密度関数
コーシー分布の確率密度関数$f(x)$は、次のように定義されます。
f(x) = \frac{1}{\pi(1+x^2)}
これをしばしば標準コーシー分布と呼ぶこともあります。
コーシー分布は、正規分布に似た形をしていますが、正規分布よりも裾が重く、広がりが大きいです。
またコーシー分布には、期待値・分散が定義されないという特徴があります。
その証明などは、以下のサイトに丁寧にまとめてくださっています。
特徴➀
$X$を、確率密度関数$f_X(x)=\frac{1}{\pi(1+x^2)}$をもつコーシー分布に従う確率変数とします。$Y=\frac{1}{X}$の確率密度関数$f_Y(y)$を求めてみましょう。
<解法>
F_Y(y) =P(Y\leq y)=P(\frac{1}{X}\leq y)=P(X \geq\frac{1}{y})=\int_{\frac{1}{y}}^\infty \frac{1}{\pi(1+x^2)} dx
$x=\arctan \theta$と置換すると、
F_Y(y) =\int_{\arctan \frac{1}{y}}^{\frac{\pi}{4}} \frac{1}{\pi(1+\tan^2 \theta)} \cdot \frac{d \theta}{\cos^2 \theta}\\
=\frac{1}{\pi}\left( \frac{\pi}{4}-\arctan \frac{1}{y} \right) =\frac{1}{4}-\frac{1}{\pi}\arctan \frac{1}{y}
ここで、両辺を$y$で微分したいのですが、$\arctan \frac{1}{y}$を$y$で微分するには、$t=\arctan \frac{1}{y}$と置換し、
\frac{1}{y}=\tan t
-\frac{1}{y^2} dy = \frac{1}{\cos^2 t} dt
\frac{dt}{dy}=-\frac{\cos^2 t}{y^2} = -\frac{1}{y^2} \cdot \frac{y^2}{y^2+1} = -\frac{1}{y^2+1}
よって、$F_y(y)$を$y$で微分し、
f_Y(y) = \frac{1}{\pi(1+y^2)}
つまり、コーシー分布に従う確率変数の逆数もまた、コーシー分布に従うのです!!
特徴➁
ここで、$X$と$Y$を互いに独立に標準正規分布に従う確率変数とします。
このとき、$V=Y/X$の確率密度関数$f_V(v)$はどうなるでしょうか。
まず、$X$、$Y$の確率密度関数はそれぞれ、
f_X(x) = \frac{1}{\sqrt{2\pi}} \exp( -\frac{x^2}{2} )
f_Y(y) = \frac{1}{\sqrt{2\pi}} \exp(-\frac{y^2}{2})
よって、同時確率密度関数は、
f_{X,Y}(x,y) = f_X(x) \cdot f_Y(y) = \frac{1}{2\pi} \exp(-\frac{x^2+y^2}{2})
ここで、$u=x,v=y/x$と変数変換すれば、$x=u,y=uv$のヤコビアンは、
J = \begin{vmatrix}
1 & 0 \\
v & u
\end{vmatrix}
=u
したがって、$(U,V)$の同時確率密度関数$f_{U,V}(u,v)$
f_{U,V}(u,v) = \frac{|u|}{2\pi} \exp (-\frac{u^2}{2}(1+v^2))
を$u$について積分すれば、
f_V(v) = \frac{1}{\pi} \left[-\frac{1}{v^2+1} \exp (-\frac{v^2+1}{2}u^2) \right]_0^\infty = \frac{1}{\pi(1+v^2)}
つまり、$X,Y$が標準正規分布に従うとき、$V=Y/X$はコーシー分布に従うのです!!