この記事は ウェブクルー Advent Calendar 2019 7日目の記事です。
昨日は @k5jpWC さんの「 傷つきやすいあなたに捧げるレジリエンスの技術 」でした。
#はじめに
私は現在社内の「UXデザイングループ」というところに所属していまして、その活動のひとつとして社内に「デザイン思考を浸透させる」というものがあります。
ここ何期かずっとそのようなミッションを掲げているのですが、これが難しい。
ということで、自分なりに「古い組織にデザイン思考を浸透させる手順」を考えてみました。
ひょっとしたら全然 tech の話じゃない感がムンムンしていますが、エンジニアであると同時にビジネスを推進する人である皆さんにも、少なからずお役に立てられるとは思いますので、気が向いたら最後まで読んでみてください。
※下記、順を追って今後弊社で私が実際に活動するつもりです
##① デザイン思考が浸透していない状態を共感し理解する
会社(組織)に考えを浸透させるといっても、結局は社員ひとりひとりの考え。その考えが一定数以上そろわないと浸透したと言うことはできません。
まずはいろんな社員と話をしてみて、それぞれどういう考えをもとに普段業務をしているかを理解していきます。先輩社員から新卒社員、経営層にまで細かくインタビューして、現在どのような場所に自分が立っているかをお互いに認識確認をし合うのです。
この時、ひょんなことから会社や組織の課題が浮き彫りになることもありますが、それは後々浸透した「デザイン思考」で解決するぞ、という意気込みで頭の片隅に保存しておきましょう。
##② なぜ浸透していないのかを想像し問題定義する
もちろん浸透させることがミッションというわけではありません。
「デザイン思考」というのはあくまで方法のひとつであるということは理解しておきましょう。
ただ、現在多くの企業(組織やグループ)がこの考えをベースに持ってサービスを生み出したり、生まれ変わらせたりしているところを見ると、これが「ビジネスを成功させるための近道のひとつ」というのも間違いではなさそうです。
なので、その「近道」を私たちも手に入れてみませんかという働きかけです。
ビジネスにおいても創作活動においても、手数は多い方がいい。引き出しの多さが今後の勝敗を左右します。
これから先、加速度的に変化していく市場やテクノロジー、ユーザー動向の中で「新しい考え方をもとにサービスを変革させていきたい」という熱い想いと、「それでも、まだいつもの武器で戦いますか?」というオドシ(笑)をいろんなところにバラまきます。
##③ 小さいグループに浸透させてデザイン思考をベースとして活動させる
先にインタビューして反応が良かったメンバー(やチーム)にまず浸透させてみるのが一番簡単で手っ取り早いです。もしくは有無を言わせず自分の組織に投下するのもありです(笑)
いずれにしても、反応が良かったり、上司に従順だったりする場合は理解がとても速いので、使わない手はありません。
ただ、少人数とは言えいろんな考えを持った集まりです。それぞれの特性を見極めつつ、理解してもらいやすい方法で浸透を進めてください。
週に1時間でもいいです。「デザイン思考」をベースにセミナーを開催し、浸透度合いを見ながらチームとして実際に活動をしてきましょう。
はじめは「ABテストのやり方を考える」「特定のユーザーに刺さるランディングページを考える」「どの時間のメールがいちばんウケがいいか」のような、小さい議題でもいいのです。
そしてその活動はできればチーム外からもある程度見える形が理想的でしょう。良いものは良い影響を与えるのです。
##④ その活動を評価してもらい内容をさらに充実させる
活動の成果を非参加者に評価してもらいましょう。
簡単なフォームによる社内アンケート、インタビュー、ポスターや張り紙にシールを貼って投票してもらう、いろんなやり方で周囲のメンバーに評価してもらいます。またその活動自体も定期的に評価してもらいましょう。
大切なのは「ちゃんと反応を見ること」。クローズドの世界での活動は評価されず、気が付いたら批判の対象になっていることが多々あります。自分たちの進め方が今この場に適切なのか、反応をちゃんと見て次の打ち手まで考えるようにしましょう。
また、外から評価してもらうことにより、この活動自体を評価者の「自分事(じぶんごと)」に感じてもらえるようになるのもひとつのメリットです。
##⑤ 活動の輪を徐々に広げて、より多くの人数を巻き込む
アンケートや投票で周囲に活動が認知されるようになってきたらひとまず成功です。恐らく賛同者と批判者が出てくることでしょう。
ここで意識しなくてはならないのは批判者へのリサーチも怠らないことです。
批判したとしても同じ会社で働いているメンバーのひとり。会社を良い方向に持って行きたい気持ちに変わりはないはずです。
重要なのは「熱狂的な賛同者」と「圧倒的な批判者」の両方の声をちゃんとキャッチアップすることです。
たくさんの声を拾いつつどんどん参加メンバーを増やして、最終的には会社の業務に携わるメンバー全員がデザイン思考を取り入れることができるようになれば、新たな武器がひとつ手に入ったと喜んで良いのだと思います。
#今更ですが「デザイン思考」とは
「UXデザイン」や「デザイン思考(デザイン・シンキング)」「デザイン経営」という言葉が、だいぶ独り歩きをしているのが現状で、わかったようなわかってないような、それでもその言葉をとりあえず口にしておいたらなんとなくカッコええやん?っていう感じになっているような気がします。
まず「デザイン」という言葉が日本では「美しく描画する」みたいなイメージが大変強いのですが、本来は「課題を解決するために様々な方法で設計・表現する」という方が正しいと思っています。
なので「デザイン思考(デザイン・シンキング)」は「課題を解決するために様々な方法で設計・表現する考え方」となります。(「UXデザイン」は「ユーザー体験の課題を解決するために様々な方法で設計・表現する」ってことですね)
「あーデザイン思考ね。うちの会社はデザイン部門が外部じゃん?そういうの全部外部デザイナーに任せててさ」とかいう人がいたとしたら「あ、なるほどですねー」と返しておきましょう。
スタンフォード大学のど真ん中にドーンと開設された「デザイン思考」の総本山 d.school で提唱されている5つのプロセスがここにあります。
- Empathize 共感(ユーザーの考えや課題を理解する)
- Define 問題定義(得られた現状の問題を定義する)
- Ideate 創造(課題を解決するミニマムなプロトタイプ(試作品)を作る)
- Prototype プロトタイプ(プロトタイプでユーザーの反応を見る)
-
Test テスト(テスト結果からさらにブラッシュアップしていく)
はい。
ということで「古い組織にデザイン思考を浸透させる手順」を「デザイン思考」の5つのプロセスに沿って書いてみたのが今回の投稿です。
まあ、これがオチといえばオチです。
#最後に
私の中で上記特に重要だと思っているのが「ユーザーの考えや課題を理解する」と「ミニマムなプロトタイプを作る」の部分です。
解決しないといけないのは「ユーザーの悩み」です。ちゃんと考えられたビジネス(サービス)であれば、それさえ解決すれば成り立つはずです。
それとその解決方法が正しいのかを細かくユーザーに聞くこと。そのためにプロトタイプを作ります。
悩みを聞いて、プロトタイプを作って、正しいのかを聞いて、改善していく。
日本では伝統的に「素晴らしいモノができない限り公開しない」という謎のセオリーが蔓延しています。
それで一発当たればとてもカッコいいのですが、成功確率は天文学的数字分のイチ。それなら「小さく生んで大きく育てる」の方が、よりスマートな気がしますね。言葉的にはそれも日本の伝統な気もするのですが。
※上記「MVP(検証するための最低限の機能を持ったプロダクト:Minimum Viable Product)」をわかりやすく説明したイラストです。(ここでユーザーが欲しいのは「移動手段」ですね)
いろんな作り手の考え方、いろんなユーザーの受け取り方、それぞれを取り入れた先に「最高のサービス(解決策)」があるのだと思います。
ここまでも何度か書きましたが、たくさんの人と話をして、悩みを聞いて、いろんな人が考えた解決策をブラッシュアップしていくことが大切です。
皆さんの考えやアイデアをなくして良いビジネス(サービス・プロダクト)はあり得ません。積極的に口をはさみましょう。
多様性に富んだメンバーがユーザーの声を中心に小さなプロトタイプを作り、反応を見ながらブラッシュアップさせ、やがて大きな成果につなげる。これこそが、ビジネスシーンで有効な武器になる「デザイン思考」であると考えています。
明日は @end-wc さんです。よろしくお願いいたします!