はじめに
音響・映像の送出だけにとどまらない、ショーコントロールソフトウェアとして進化を続けている、QLab。
映像の送出現場でもよく使っています。
映像の送出で、同時にプロジェクターを制御したいということもよくあります。
特に、シャッター内蔵プロジェクターであれば、シャッターの開閉動作を同時に行えたらとても楽に本番を行えるのではないでしょうか。
2020年ごろ、QLab4を使用していた頃は、直接PJLinkを扱うことはできず、AppleScriptを介して、ターミナルや別appを制御するという方法で行っていました。
2022年、QLabがバージョン5へと進化し、この状況が大きく変わりました。
QLab5でTCP messageが扱える
QLabのネットワークキューで扱える内容が増え、QLab4ではUDPのみだったメッセージが、TCPメッセージが扱えるようになりました。
PJLinkはTCPでやり取りするため、これで直接QLabからPJLinkコマンドが送出できます。
実際のセッティング
ネットワークパッチを作成
ワークスペースセッティング > Networkから新しいNetwork Patchを作成します。
- Name
- キューを作成するときにわかりやすい名前をつけられます。
- Type
- Plain Textを選択します。
- Network
- TCPを選択します
- Interface
- 接続するネットワークが複雑で、明示的に接続先を指定する必要がない限り、基本的にはAutomaticでよいと思います。
- Destination
- 接続先のプロジェクターのIPアドレスを指定します
- PJLinkはポート4352を使用するため、4352を指定します。
- Passcode
- 接続パスワードが必要な場合は設定すると良いのだと思いますが、私の環境ではプロジェクターパスワードを設定していないため、使用していません。
ネットワークキューを作成
ネットワークキューを作成し、[Patch]で先ほどパッチ画面で設定した送信先を選択します。
下の欄に送信するコマンドを入力します。
PJLinkのコマンドは、JBMIAのPJLinkのサイトの仕様書を参照してください。
たとえば、AVミュート(シャッター閉じ)コマンドは、次のようなものです。(機種によって受け付けるコマンドが異なる場合があります)
コマンドの最後には\r(キャリッジリターン)をつけるのを忘れないようにしてください。
%1AVMT 31\r
これでキューを実行すれば、シャッターが閉じます。
実際のキューの流れの例
私が実際に本番で使用したキューを参考までに掲載します。
本番の最後、エンディングが終了し客出しBGMを再生すると同時に、プロジェクターの電源を落とすPJLinkコマンドを送り、プロジェクターを触らずに電源を落としました。
IDKスイッチャーの制御
プロジェクターの前段で、IDK MSD-5404を使用しており、こちらもTCPメッセージを使用しており、同様のセッティングでスイッチャーが制御できます。
IDKスイッチャーは初期状態ではポート1100で通信を行います。
たとえば、スイッチャーのout 2,3,4をオフにするには、次のコマンドを送信します。
なお、IDKのコマンドのデリミタはCR+LF (\r\n)です。
@SSW, 0, 2, 0, 3, 0, 4\r\n
さいごに
QLab5でTCPメッセージが扱えるようになり、制御の幅が格段に広がりました。
プロジェクターやスイッチャーを触らずに直接制御できるようになることで、本番中の手間を格段に減らし、本番のオペレーションに集中することができ、本番のクオリティをアップさせることにつながるのではないかと思います。