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束と多様体

Last updated at Posted at 2023-02-23

の知識を合わせて多様体を低空間もつ束を考えていきます。

\newcommand{\Ad}{\mathrm{Ad}}
\newcommand{\hom}{\mathrm{Hom}}
\newcommand{\pr}[1]{\mathrm{pr}_{#1}}
\newcommand{\diff}[2]{\frac{d #1}{d #2}}
\newcommand{\pdiff}[2]{\frac{\partial #1}{\partial #2}}
\newcommand{\R}{\mathbb{R}}
\newcommand{\C}{\mathbb{C}}

接束:束としての多様体

$n$次元多様体$M$に対して各点で接平面が定義できたと思いますが、それらをまとめて

TM = \{ (p,v) \mid p \in M, v \in T_p M\} 

と表します。

ここに射影写像

\pi:TM \rightarrow M \\
\pi(p,V) = \pr{1}(p,V) = p

を定義すれば、$TM \xrightarrow{\pi} M$は束になっていて、

\pi^{-1}(p) = T_p M

のように接平面がファイバーになっています。ちなみにこれは接束と呼ばれています。

束としてのアトラスの役割

チャート$(U,\phi)$($p \in U$)を使って接束の元$V = (p,v) \in TM$を表現するときは、

x = \phi(p) \\
v = a^\mu \pdiff{}{x^\mu} \\
\phi(V) = \phi(x,v) = (x,a)

とすればよいです。実は$\pi$の連続性から$M$の開被覆$\{O_i\} \subset \mathcal{O}_M$を用いて$TM$のチャート$\{ (\pi^{-1}(O_i),\phi_\pi)\}$を作れば

\tilde{\phi}_\pi(p,v) = (p,\phi_\pi(p,v))

という写像

\tilde{\phi}_\pi \in \hom(\pi^{-1}(O_i),O_i \times \R^{2n})

が定義できてこれは局所自明化になっています。よって$(TM,\pi,M,\R^{2n})$はベクトル束であることが分かります。

接束の複素化

ベクトル束である接束は複素化出来て関数$J:\R^{2n} \rightarrow \C^n$を

J(x,a) = x+ ia \in \C^n

と定義すれば、局所自明化を

\tilde{\psi}_\pi(p,v) = (p,J \circ \phi_\pi(p,v))

ととって複素ベクトル束$(TM,\pi,M,\C^n)$を構成できます。これが接束の複素化に相当していて$TM^\C$や$TM \otimes_\R \C$などと表します。

切断とベクトル場

また、多様体上のベクトル場$X \in \mathfrak{X}(M)$の像も$p$との組で書くことにします:

X: M \rightarrow TM \\
X:p \rightarrow (p,V) \ (V \in T_pM)

ベクトル場に関する諸計算は第2成分に対して適用することにします。

すると$\pi \circ X = \mathbf{1}$なので、接束の切断になっています。

このことから束の知識を使うと多様体とその接平面をまとめてうまく扱うことができます。

余接束

同様に余接束

T^*M = \{ (p,\omega) \mid p \in M, \omega \in T^*_p M \}

も定義することができます。

法束

多様体$M$の部分多様体$N \subset M$において

$p \in N$における法空間を

\nu_p N = \{ V \in T_p M \mid V \perp T_p N \} \\
\Leftrightarrow T_p M = T_p N \oplus \nu_p N

で定義し、

\nu N = \{ (p,V) \mid p \in N, V \in \nu_p N \}

に対して$\nu N = (\nu N,\pi,N)$を法束と言います。

束を導入する意味

多様体は通常微分幾何を使って議論すると思いますが、それは基本的に各点における接平面とその近傍の議論しかできず、遠く離れた点との関係や多様体全体の性質を議論することができません。
そこで各点が元の多様体の巨視的な情報を持ったようなより大きな多様体を考え、それと束の関係を結ぶことで多様体の大域的な性質を見たいというのがここでのモチベーションです。逆に束の観点から微分幾何の微視的な諸概念も再定義することができます。

歴史的には微視的な近傍論を重要視するリーマン幾何と図形の合同変換($\simeq$群の作用、回転や鏡映、反転などのこと)などで変化しない量に注目するエルランゲンプログラムと呼ばれる方針があって、水と油のような関係だったのですが、束を用いてこれらを結びつけることができたようです。

これは完全に僕個人の主観なのですが、微分幾何が多様体の微分の議論だとすれば、多様体上の積分を考えるのが束の観点からの議論なのだと思います。

注意点

束の導入の際には連続写像であることしか課していませんでしたが以降は接束を扱うことを念頭に置いて束の各要素はただの位相空間ではなく多様体であるとします。

で導入した束に関する各写像が$C^\infty$級であることを要請します。また同相関係も単なる同相ではなく微分同相であることを課すことにします。

リー代数と接束

以下、切断(=ベクトル場)が存在することを仮定します。

垂直部分空間

射影の押し出し写像

\forall p \in P: \pi_*: T_pP \rightarrow T_{\pi(p)} M

を用いて$p \in P$における垂直部分空間を

V_p P = \ker(\pi_*) \\
VP = \{ (p,v) \mid p \in P, v \in V_p P\}

と定義します。
このとき、主G束$\mathscr{P} = (P,\pi,M,F,G)$ ($P,M,F$は多様体)において

A \in T_e G \\
p \in P \\
X_p^A: C^\infty(P,\R) \rightarrow \R \\
X_p^A[f] = \diff{f(\exp(tA)p)}{t}|_{t=0}

とすると、

\forall g \in C^\infty(M,\R): \\
\pi_* X_p^A g = \diff{g(\pi(\exp(tA)p))}{t}|_{t=0} \\
= \diff{g(\pi(p))}{t}|_{t=0} \\
= 0

なので、$X_p^A \in V_p P$です。(主束の性質より$\forall g \in G: \pi(ge)=\pi(e)$です。)

また、$X_p^A \in V_p P \subset T_p P$なので、

X^A: p \rightarrow (p,X_p^A)

とおけば、

i:T_e G \rightarrow \Gamma(TP) \\
i(A) = X^A

とリー代数に関する同型写像を定義できます:

i([A,B]) = [i(A),i(B)] \ (A,B \in T_eG)

また、$T_p P$($p \in P$)上の値へ制限した

i_p = i|_{T_pP}: A \rightarrow i(A)_p=X^A_p

も考えます。

水平部分空間

水平部分空間$H_p P$と

HP = \{ (p.h) \mid p \in P, h \in H_pP \}

を以下の条件を満たすものと定めます。

  • $H_p P \oplus V_p P = T_p P$
  • $\mu_g(p) = gp$として$(\mu_g)_*(H_p P) = H_{gp} P$
\forall X \in \mathrm{Diff}(P,TP) \subset \Gamma(TP): \\
\exists ver(X) \in \mathrm{Diff}(P,VP), \\
\exists hor(X) \in \mathrm{Diff}(P,HP): \\
\forall p \in P: X_p = hor(X)_p + ver(X)_p \in T_p P

このような部分空間を直接構成するのはなかなか大変ですが、次のように構成できます。

接続1形式と水平部分空間

各点$p \in P$で

\omega_p \in \hom(T_p P, T_eG) \\
\omega_p(X_p) = i^{-1}_p(ver(X)_p)

と定義し、この$\omega_p$を点$p$における接続1形式と言います。

また、接続1形式

\omega \in \hom(\Gamma(TP),T_eG)

は以下の条件を満たすものとして定められます。

  • $\forall A \in T_e(G): \omega(X^A) = A$
  • $\forall X \in \Gamma(TP)$: $(\mu_g)_* \omega(X) = (\mathrm{Ad}_{g^{-1}})_* \omega(X)$

ここで$g \in G$に対して$\mathrm{Ad}_g: G \rightarrow G$は

\mathrm{Ad}_g(h) = ghg^{-1}

で定義されていて、$(\mathrm{Ad}_g)_*$はその押し出しです。

接続1形式を1つ定めると$\ker(\omega_p)$は水平部分空間$H_p P$の条件を満たしていて

HP = \{ (p,X_p) \in TP \mid X \in \Gamma(TP) \ s.t. \ \omega(X)= 0, p \in P \}

です。

コメント

$H_p P$の取り方によって写像$ver,hor$は変化します。つまりこの分解の仕方は接続1形式$\omega$の設定の仕方に依存します。

切断が存在しない場合

ここまでは$P$の接束の切断$\Gamma(TP)$が存在するとこを仮定しました。しかし一般に切断は存在しないのでここからは局所切断をベースに議論したいと思います。

多様体の主G束$(P,\pi,M,F,G)$をとり、低空間$M$で開集合$U \in \mathcal{O}_M$とそこでの局所切断$\sigma_U \in C(U,P)$を考えます。

ヤンーミルズ場

自明な主G束として$(U\times G, \pi_U, U, G, G)$を考えればこちらは切断$\Gamma(TU)$が存在します。よって接続1形式

\omega^U \in \hom(\Gamma(TU),T_e G)

を定義することができます。これによって、$TM$上の接続1形式$\omega$を

\omega^U = \sigma^*_U \omega

で定めることができます。これはヤンーミルズ場と呼ばれていてアトラスのとり方に依存します。

局所自明化

また写像

h: U \times G \rightarrow P \\
h(m,g) = g\sigma(m)

によって局所表現

h^*\omega_{m,g}: T_{(m,g)}(U\times G)
 \rightarrow T_{h(m,g)}G

を得ます。

局所表現の表示

モーレー・カルタン形式

\Xi_g: T_gG \rightarrow T_eG \\
\Xi_g(L_g^A) = A

を用いれば、

(h^*\omega)_{(m,g)}(V,\gamma) = (\Ad_{g^{-1}})_*(\omega^U(V)) + \Xi_g(\gamma)

と分解することができます。

ゲージ写像

2つの開集合とそこでの局所切断$(U_1,\sigma^{U_1}),(U_2,\sigma^{U_2})$に対して、$U_1\cap U_2 \neq \varnothing$上では$U_1,U_2$どちらの自明束を使うかで異なるヤンーミルズ場$\omega^{U_1},\omega^{U_2}$が与えられ、任意性が生じてしまいます。
そこで、これらの間の対応関係を与える写像を

\Omega:U_1 \cap U_2 \rightarrow G \\
s.t. \ \forall m \in M: \sigma^{U_2}(m) = \Omega(g) \sigma^{U_1}(m)

で定義し、ゲージ写像と呼びます。このとき、2つの接続形式の間には

\omega^{U_2}_m = (\Ad_{(\Omega(m))^{-1}})_*\omega^{U_1} + (\Omega^* \Xi_g)_m

という関係が成り立ちます。

参考資料

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