概要
SQLのIN
句は、複数の値を指定して条件を絞り込む際に便利ですが、データベースごとに使用できる要素数や制約が異なります。本記事では、SQL Server、Oracle Database、PostgreSQLのIN
句の制限を比較し、各データベースの仕様と回避策について解説します。
IN句の制限・仕様比較
データベース | IN句の最大要素数 | 主な制約 | 仕様に関する公式情報 | 制約に関する公式情報 |
---|---|---|---|---|
SQL Server | 明確な制限なし | クエリが複雑化すると エラー 8623, 8632 の発生リスクあり | IN 句 (公式) | エラー 8623, エラー 8632 |
OracleDB | 最大1,000個 | ORA-01795 が発生し、それ以上の要素は使用不可 | IN 条件 (公式) | ORA-01795 |
PostgreSQL | 明確な制限なし | メモリ使用量や実行計画の影響でパフォーマンス低下の可能性あり | テーブル式 (公式) | パフォーマンスガイド |
各データベースの詳細
SQL Server
仕様
SQL Serverでは、IN
句の要素数に明確な上限はありません。しかし、リストが長くなるとメモリ使用量が増加し、クエリの実行計画が複雑化するため、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。(IN 句 (公式))
制約
-
IN
句に大量の要素を指定すると、エラー 8623(クエリプロセッサのリソース制約)やエラー 8632(メモリ不足によるソート演算子の失敗) の発生リスクがあります。
(エラー 8623, エラー 8632)
回避策
-
JOIN
を使用し、別のテーブルからデータを取得する。 - 一時テーブルやテーブル変数を活用する。
-
EXISTS
を活用してフィルタリングする。
OracleDB
仕様
Oracle Databaseでは、IN
句の要素数が最大1,000個までと明確に制限されています。(IN 条件 (公式))
制約
-
IN
句の要素数が最大1,000個を超えると、ORA-01795: maximum number of expressions in a list is 1000 というエラーが発生します。
(ORA-01795)
回避策
-
GLOBAL TEMPORARY TABLE
を使用してデータを一時的に保存する。 -
WITH
句を活用して処理する。 -
TABLE
関数を利用し、配列として扱う。 -
OR
を使って最大1,000個ごとにクエリを分割する。
PostgreSQL
仕様
PostgreSQLでは、IN
句の要素数に明確な制限はありません。ただし、クエリの最適化や実行計画の影響により、大量の要素を含むIN
句はパフォーマンスの低下を引き起こす可能性があります。(テーブル式 (公式))
制約
- 明確な要素数の上限はありませんが、メモリ使用量の増加や実行計画の最適化不足により、パフォーマンスが低下する可能性があります。
(パフォーマンスガイド)
回避策
-
JOIN
やサブクエリを活用する。 -
ARRAY
を使用してリストを効率的に処理する。
余談:SQL Server の INSERT ... VALUES
にも 1000 件の制限がある
OracleDB は IN
句が 最大1,000個 の制限がありますが、SQL Server では INSERT ... VALUES
で 1回の挿入は 1000 行まで という制約があります。
-
SQL Server:
INSERT ... VALUES
の形式では 1000 行を超えると エラー 10738 が発生。 -
OracleDB, PostgreSQL にはこのような
INSERT ... VALUES
の行数制限はなし。 - 回避策として
INSERT ... SELECT
などを活用するのが推奨される。
このように、「1000」という制約が SQL Server では INSERT
、OracleDB では IN
句に適用されるため、混同しがちなので注意しましょう。