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C++とPthreadでJavaライクなスレッドライブラリを作る~その3 - ロックと通知

Last updated at Posted at 2017-12-24

前回導入したロックを使うことで,スレッド間の同期ができるようにはなった.
しかし,ロックの仕組みだけを使うと,スレッドは次のような動作する.ここでは,スレッド1とスレッド2が存在し,お互いにロックを取ってから処理することを考える.

  1. スレッド1がロックを取ろうとする
  2. スレッド2がロックと取ろうとする
  3. スレッド1がロックを取り,処理をする.
  4. スレッド2はロックが取れないため,待つ
  5. スレッド1の処理が終わり,ロックを開放する
  6. スレッド2がロックを取り,処理をする
  7. スレッド2が処理を終わり,ロックを開放する

ここで,4の待つというところに着目する.このときスレッド2はCPUを使って待っている(多分).つまり,ロックが獲得できず,処理が進められないにも関わらず,リソースを使っているということになる.これは明らかに無駄である.そこで,次のようにできると便利である.

  1. スレッド1がロックを取ろうとする
  2. スレッド2がロックと取ろうとする
  3. スレッド1がロックを取り,処理をする.
  4. スレッド2はロックが取れないため,待つ.そして,休止
  5. スレッド1の処理が終わり,ロックを開放し,スレッド2に終わったことを通知する
  6. スレッド2は通知を受けて,ロックを取り処理をする
  7. スレッド2が処理を終わり,ロックを開放する

これを実現するために,pthreadの以下の機能を利用する

int  pthread_cond_wait(pthread_cond_t *cond, pthread_mutex_t *mutex);
int  pthread_cond_broadcast(pthread_cond_t *cond);
int  pthread_cond_signal(pthread_cond_t *cond);

pthread_cond_waitは,次のように動作する.

  1. 取得しているロックを開放する
  2. mutexで管理されるロックに関し,condをモニターにして,condの状態に変化があるまでスリープ

この結果,pthread_cond_waitを実行したスレッドは休止する,すなわちCPUを使わない.
次に,pthread_cond_broadcastは,condをモニターにしてスリープしているスレッドを全員起こす,という機能を持ち,pthread_cond_signalは,condをモニターにしてスリープしているスレッドのうち1つだけ起こす,という機能を持つ.

これらを利用し,より効率の良いロックを実現する.

rw.hpp
class RWLock {
private:
    int readCount;
    pthread_mutex_t mutex;  // pthread_mutex用の構造体
    pthread_cond_t  mcond;  // モニタ用の構造体
    bool lock;              // ロック管理のための変数

public:
    RWLock();
    ~RWLock();
    void readLock(int id);
    void readUnlock(int id);
};
RWLock.cpp
RWLock::RWLock() {
    this->lock = true;                 
    pthread_mutex_init(&this->mutex, NULL);
    pthread_cond_init(&this->mcond, NULL);
}

RWLock::~RWLock() {
    pthread_mutex_destroy(&this->mutex);
    pthread_cond_destroy(&this->mcond);
}

void RWLock::readLock(int id) {
    pthread_mutex_lock(&this->mutex);             -> (1)
    printf("read lock by %d\n", id);
    while (!this->lock) {                         -> (2)
        printf("lock failed wait by %d\n", id);
        pthread_cond_wait(&this->mcond, &this->mutex); -> (3)
        printf("finish wait by %d\n", id);
    }
    this->lock = false;                           -> (4)
    printf("get lock by %d\n", id);
    pthread_mutex_unlock(&this->mutex);           -> (5)
}

void RWLock::readUnlock(int id) {
    pthread_mutex_lock(&this->mutex);
    printf("read unlock by %d\n", id);
    this->lock = true;
    pthread_cond_broadcast(&this->mcond);         -> (6)
    pthread_mutex_unlock(&this->mutex);
}

今までの実装が,pthread_mutex_lock/unlockでロック/アンロックを制御していたのに対し,今回はそれらの関数を使いつつ,ロック獲得の有無を自分で管理する(lock変数)ことになる.

readLockを詳しく見る.
(1)

pthread_mutex_lock(&this->mutex);

mutexを使ってpthreadのロックを獲得する

(2)

while(!this->lock)

lock変数は,trueのときロック獲得可能,falseのときロック獲得不可能を意味している.初期化処理でtrueに設定されるので,ロックが獲得できるときはこのwhileには入らず,(4)にスキップする.

(3)

pthread_cond_wait(&this->mcond, &this->mutex)

ここに入ったということは,ロックが獲得できなかったことを意味している.すなわち,lockfalseであったためである.そこで,このスレッドはただちにpthreadのロックを開放し,mcondをモニターに休眠する.その結果,仮に別のスレッドがこの関数(readLock)を呼び出したときにも,(1)でpthreadのロックを獲得することが可能になる.

(4)

his->lock = false

ここでロックを獲得する.つまり,この変数の値を読み書きするときにpthreadのロック/アンロックを使用していることになる.

(5)

pthread_mutex_unlock(&this->mutex)

これでpthreadのロックを開放する.つまり,ロックを獲得できるスレッドは,

  1. pthreadのロックを獲得
  2. lock変数の変更
  3. pthreadのロックを開放

をすることで,ロック(lock変数)を獲得していることになる.

一方,ロックを獲得できないスレッドは,

  1. pthreadのロックを獲得.その結果失敗.
  2. pthreadのロック解放後,mcondをモニタにした休眠

となる.

次に,readUnlockを詳しく見る.
readUnlockは,pthreadのロックを獲得した後,lock変数を変更し,pthreadのロックを開放している.ただし,lock変数変更後,
(6)

thread_cond_broadcast(&this->mcond)

を実行している.この結果,(3)で休眠していたスレッドのいずれか一つが起こされる.
起きる対象に選択されたスレッドは,実行を再開する前にpthread_mutex_lock(&this->mutex)を再実行したあと実行を再開する(これはpthreadライブラリが内部でやる).従って,他のスレッドはlockを変更することができず,起きる前にlocktrueに設定されるので,(2)のwhileには入らず,(4)に処理が遷移する.そして(5)が実行され,pthreadのロックが解放される.

動作を確認するために,次のプログラムを実行する

ReadThread.cpp
ReadThread::ReadThread(RWLock *lock) {
    this->id = tcount;
    this->lock = lock;
}
ReadThread::~ReadThread() {    
}

void ReadThread::lock_unlock_test() {
    lock->readLock(this->id);
    for (int i = 0; i < 5; ++i) {
        printf("heavy job by %d(%d)...\n", this->id, i);
        usleep(500000);
    }
    lock->readUnlock(this->id);
}

void* ReadThread::run(void* arg) {
    printf("run Thread %d\n", this->id);
    this->lock_unlock_test();
    return NULL;
}

このスレッドは,ロックを獲得して重い処理を行い,ロックを開放する関数,lock_unlock_testを実行する

main.cpp
int main(void) {
    RWLock lock;
    ReadThread rt1(&lock), rt2(&lock), rt3(&lock);

    rt1.start(NULL);
    usleep(300000); // 0.5sec wait
    rt2.start(NULL);
    usleep(300000); // 0.5sec wait
    rt3.start(NULL);

    while(true) {
        sleep(1);
    }    
    return 0;
}

mainでは,スレッドを3つ作成し,少しずつdelayさせて順番に実行する.そのため,先に実行したスレッドが最初にロック獲得できるはずである.

実行結果

>./main
run Thread 1            // スレッド1実行開始
read lock by 1          // スレッド1がロック獲得を試みる
get lock by 1           // スレッド1がロックを獲得
heavy job by 1(0)...
run Thread 2            // スレッド2実行開始
read lock by 2          // スレッド2がロック獲得を試みる
lock failed wait by 2   // スレッド2がロック獲得失敗し,休眠
heavy job by 1(1)...    // スレッド1の実行
run Thread 3            // スレッド3実行開始
read lock by 3          // スレッド3がロック獲得を試みる
lock failed wait by 3   // スレッド3がロック獲得失敗し,休眠
heavy job by 1(2)...    // スレッド1しか実行できるスレッドがないため,そのまま実行を継続
heavy job by 1(3)...
heavy job by 1(4)...
read unlock by 1        // スレッド1がロックを開放
finish wait by 2        // スレッド2が起こされる.
get lock by 2           // スレッド1がロックを獲得
heavy job by 2(0)...    
finish wait by 3        // スレッド3が起こされる.
lock failed wait by 3   // スレッド3がロック獲得失敗し,休眠
heavy job by 2(1)...    // スレッド2しか実行できるスレッドがないため,そのまま実行を継続
heavy job by 2(2)...
heavy job by 2(3)...
heavy job by 2(4)...
read unlock by 2
finish wait by 3
get lock by 3
heavy job by 3(0)...
heavy job by 3(1)...
heavy job by 3(2)...
heavy job by 3(3)...
heavy job by 3(4)...
read unlock by 3

全部のソースコードはこちら
次回に続く.

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