この記事で扱う内容
ここ数年「グロースハック」という言葉が流行っているとかいないとか
私は今のところまだ「グロースハッカー」と刷られた名刺を頂いたことが無いですが...
それはともかく、先日この本を読みました
いちばんやさしいグロースハックの教本
http://www.amazon.co.jp/dp/B01BY7HMYO/
「iQON」を運営するVasilyさんのグロースハックのノウハウがまとめられた本です。
ひとことで言うと、シンプルかつ重要なファクターがギュッとまとまっていて非常に素晴らしい本でした。
この本の中で自分が特に大事だと思ったことをまとめておきます。
興味がある方は是非原典を購入して読んでみることをおすすめします。
Kindle版で1680円なので内容を考えると全然安いと思います。
※ちなみに私はVasilyとは全く関係のない個人です。
また、こちらは書籍の正式な解説などではありません。
ところどころワーディングなどで自分の意訳が入っているため、書籍の内容と完全に一致しないところがありますが、個人の読後の備忘録と感想といった程度に捉えて下さい。
構成
本書の内容は大体下記のような構成で進んでいきます
(一部本の順序と変えて記載しています)
- グロースハック概論
- KGIとKPI、及びグロースハックのPDCAサイクル
- グロースのためのフレームワークの定義
- 上記フレームワークに沿った各論
- 1.Activation = まず使ってもらう
- 2.Retention = 使い続けてもらう
- 3.Refferal = 他者に紹介するくらい使ってもらう
- 4.Revenue = 課金するくらい使ってもらう
- 5.Acquisition = もっと多くの人に使ってもらう
そこかしこに実際のケーススタディやVasilyでの活用例、具体的なやり方などが散りばめられていたのが非常にわかりやすく、かつ実践で使える感を増していると感じました。
グロースハック概論
グロースハックとはなんぞや、的な概論です。
知ってる方はまあ知っている内容です。
重要だと思ったこと
製品自体に成長の仕組みを入れ込む
というのが一つ大事なキーワードだと感じました。
ケーススタディも上記の言葉が理解できるものが中心に紹介されていました。
出てきた例は
- Hotmail
- AirBnB
- Dropbox など
KGIとKPI、及びグロースハックのPDCAサイクル
明確なゴールと指標がなければグロースハックは行えない。
よって、グロースハックさんにとってはKGI、KPIの設計が死活問題になる。
重要だと思ったこと
KGIはゴールで、KPIはその分解ファクターとして存在する
KPIは下記の3つを満たしている必要がある
1.Actionable:
行動に繋がる指標でないと意味が無い。
☓ サービス総PV → 上げるの大変、かつやることの幅が広すぎ
◯ 登録初日ユーザの投稿率 → 上げるための具体的な施策が考えられそう
2.Understandable
自分はもちろん、周囲が理解しやすいものでないとダメ
3.Comparable
比較に意味があるものでないとダメ
☓ 登録初日ユーザの投稿数 → ユーザ数が増加していくため、先月と今月の比較に意味が薄い
◯ 登録初日ユーザの投稿率 → 割合にすれば過去との比較が意味を持つものになる
また、気をつける点としてKPIが上がったがKGIが上がっていない時がある。
例:KPIユーザのチュートリアルの完了率 が上昇 → KGI=リピート率 は変化しない
など。これはKPIが非常にブレイクダウンされたものであるが故の弊害。
ちゃんと両方が上がっているかを確認する。
分析の観点
キーワード:ファネル分析、パターン分析、ユーザインタビュー
ファネル分析:
どの行動ステップでユーザが離脱してるかを見極める
パターン分析:
群に分けた時の各群のKPIの違いを見つける
もしくは、KPIが違う群で分けた時に群同士の特徴差異を分析する
ユーザインタビュー:
上記2つが定量的な分析であるのに対し、これは定性的な分析
アンケートなどの実施はCrowdworksやMechanicalTurkを使えば良いとのお言葉
手法 - KPI/KGIの共有
Vasilyでは
- Google BigQueryで分析して
- Tableauで可視化して
- Slackに投稿
という形で共有してるらしい。これはいい。真似したい。
グロースのためのフレームワーク
グロースハックの世界で一般的に使われているフレームワークはこちら
AARRR(アー というらしい)
- Acquitision : 沢山の人を獲得
- Activation : 使ってもらう
- Retention : 使い続けてもらう
- Refferal : 他者に紹介するくらい使ってもらう
- Revenue : 課金するくらい使ってもらう
なるほど、と思うのだがVasilyさんいわく、これは少しイケてないとのこと。
理由としては(ちょっと個人的な意訳を入れています)
実際のグロース施策の流れに沿ってない
また、ユーザ体験という点に関する視点が弱い
これはどういうことか、というと
プロダクトに大事なのは
「ユーザの課題」と「その解決法」
であり、
そこを起点に全てを考えるべき
というVasily CEOの金山さんの思想と考えられます。
AARRRの中で 「ユーザの課題」と「その解決法」
が最も強く関係するのは Activation(使ってもらう)
であるため、そこをグロースハックのプロセスの最初に持ってくるのが正しい。
つまり、AARRRでなく、
ARRRA(アーラ というらしい)
- Activation : まず使ってもらう
- Retention : 使い続けてもらう
- Refferal : 他者に紹介するくらい使ってもらう
- Revenue : 課金するくらい使ってもらう
- Acquitision : より多くの人に使ってもらう
という流れでグロースハックを捉えるというのがこの本の重要な提案のひとつのようです。
Activation
ここは非常に奥深いところなので、是非上に挙げた本を読んでみてください。
Retention
重要だと思ったこと
リテンション(再訪問)を高めるの超重要。
リテンション低いままだといくら頑張っても穴の空いたバケツ状態。
再訪問の可否を判断する**「◯日再訪問率」**みたいなKPIはサービスの性質によって見るべきスパンが違う。注意。
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分析の観点
キーワード:コホート分析、リテンションカーブ
コホート分析:
郡別に◯日後のリテンション(再訪率など)を時系列で見ていく
リテンションカーブ:
コホート分析の結果を時系列で可視化したカーブでどのあたりに特に落ち込みがあるかなどを分析する
Refferal
重要だと思ったこと
リファラルはグロースハックの中でも一番むずかしいポイントのひとつ
またサービスによっては必須ではない
リファラルにも幾つか種類がある
1.自然拡散 : サービスを利用すると自然に拡散する仕組み(spotifyとか)
2.人工的拡散 : ポイントなどのインセンティブによる招待
3.パラサイト : 同種のサービスからの拡散を狙う(Youtubeの埋め込みとか)
4.口コミ : コメント付きでSNSなどに投稿させる仕組み
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分析の観点
NPSを測定する
NPS(ネットプロモータスコア)についてはこちら
NPSは世界中で使われているメジャメント手法でケーススタディも豊富にある
SurveyMonkeyを使ったり自社の広告バナーに埋め込む方法もあるが、
オススメはWootricという自社のサービスにアンケートを埋め込めるSDKを提供するツール
バイラル係数を分析する
バイラル係数とは、既存ユーザ1人あたりの呼び込んだユーザ数として定義される
この数が1を越えるとサービスは指数関数的に成長していくことになる
バイラル係数 = 1人あたり紹介アクション数 x 紹介リンクからの登録率
しかし実際はバイラル係数が1を超えることは稀である。
Vasilyさんの感覚では0.5もあれば十分とのこと
また、ユーザが実際に紹介行動に出る、さらに招待されたユーザが登録する、
というリードタイムを考える必要がある。
Revenue
重要だと思ったこと
ARPUを頑張ってあげる。LTV > CPA を目指す。
どっちもまあ当たり前ですね。
あとは、ビジネスモデルごとにハック施策が異なるので、自社のモデルを見極める。
分類としては、
1. 課金モデル(ゲームとか)
2. 広告モデル(メディアとか)
3. コマースモデル(ECとか)
4. 手数料モデル(シェアリングエコノミーとか)
特に個人的に興味ある3と4では次のようなハックの方向性が紹介されていました
3.コマースモデル
> 商品閲覧PVと増やす → オススメ商品の表示
> カート投入率を増やす → カート画面に送料無料、ポイントキャンペーンなどの情報を掲載
> 購入完了率を増やす → 決済方法の多様化など
4.手数料モデル
> キングユーザを作る
> アンカーユーザ(影響力の強いユーザ)を連れてくる
Acquisition
重要だと思ったこと
クリエイティブの鮮度を意識すること。
一定期間同一のクリエイティブの広告を打ち続けると徐々に効果が落ちてくる。
この場合クリエイティブを差し替えると効果が戻ることが多いので、切り替えるべき期間の目安を事前に持っておくこと。(過去の実績など)
効率的/持続的な改善の方策を持っておくこと。
例えばiQONのTVCMは2期に分けて行っていたが、1期目の効果を元に2期目のクリエイティブの決定をするためだったという。
また、オンライン広告などでは下記のような方策で改善をしていった
1.4つの異なるテーマ(訴求)のクリエイティブで広告を出す
2.効果を測定する(例:使うシーン訴求>ユーザの声訴求>ユーザ数多さ訴求...などになる)
3.「使うシーン訴求」で複数のクリエイティブを用意して時期のキャンペーンを張る
TVCMとオンラインのコラボの可能性を理解すること。
CM期間中はアプリの内容をTVCMを連動するものにするなどは有効。
また、TVCMによってオンラインの広告の効果が底上げされることがある。
分析の観点
指標の設計に気をつける。
例えば広告の費用多体効果はインストール数でなく7日後継続利用ユーザ数で測る。
広告効果を測定できる仕組みを持つことが重要。
オフライン広告などで100%正確に効果測定を出来ない場合でも、ある程度の当て推量で良いので、測定指標を作っておく。
→ それによってA/Bテストの実施などが可能になるため。
完全な測定にこだわることに意味は無い。何もわからないよりは良いと割り切る。
参考
いちばんやさしいグロースハックの教本
http://www.amazon.co.jp/dp/B01BY7HMYO/
Vasilyさんのグロースハックブログ
http://growthhack.vasily.jp/