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OSMタグのライフサイクル接頭辞

Last updated at Posted at 2020-05-03

こもりがちな日々の気晴らしに散歩をしていますが、OSMerの性として無駄に歩くわけには行かないので手作りのテーマcovid19マッピングをしています。久々に近所をじっくり見て回って改めて気づくのは地物には栄枯盛衰のライフサイクルがあるということ。covid19の影響で拍車がかかることは避けようも無いことがひしひしと感じられます。

abandoned:amenity=pub
name=安の八

OSM(OpenStreetMap)でのライフサイクルの表現方法については長年議論が繰り返されており、満場一致には至らないもののなんとなくこんな感じというものがあるので私見ですがまとめてみました。

1 なぜライフサイクルの表現が必要か

OSMが扱う対象は基本的には今そこにある地物で、過去や未来のものは対象外ということになっています。言葉にすると明快のようですが、この「今そこにある地物」がどこまでを指すのかが、街を歩いていると分からなくなってきます。お客が入っていたり、照明が点いている店舗は営業中で確かな地物だということは分かりますが、シャッターが下りていたり、空き店舗の張り紙があったり、居抜きで店名が変わっていたり、埃をかぶっていたり、板が打ち付けられていたり、工事をしていたり、建物が取り壊されていたり、更地になっていたり、、、と店舗の状態は様々です。地図は基本的にそこに行くために見るものですからどこまでをレンダラー上で見せるかは細かく考えるととても悩ましいものです。登録するか削除するかの二択だけでマッピングをしていると個人差が出てデータが大きくバラついてしまいます。そこで削除する前の中間段階としての地物の状態をマッピングし、それらをどう見せるか使うかといった判断はソフトウェアに任せるための、ライフサイクルの表現が必要となってきます。

もうひとつ別の観点で言えば、このところOSMerが増えてきてマップの更新頻度が上がってきていることはとても嬉しい反面、マッピングエリアが重なるOSMerどうしでの行き違いが発生する局面も増えてきました。「ゾンビーマッピング」という言い方がありますが、街を歩いていて建物が取り壊されたのに気づき、そのオブジェクトを削除すると、衛星画像を見たアームチェアOSMerが建物を描き忘れていると思って再度トレースしてしまうことがあります。これは現地サーベイをしているOSMerにとってはかなり脱力感を伴うものです。こういう場合には物理削除するのではなく、形状は残して、これは取り壊されているという印を付けておくと、こうした行き違いを避けることができます。

2 具体的なライフサイクルの表現方法

過去に様々な表現方法が提案されてきましたが、現在は接頭辞(prefix)で表現する方式に落ち着きつつあるようです。
キーや値で直接ライフサイクルを表現する方式だと、レンダラーやルーティングなどのソフトウェアが都度その新しいタグを認識してロジックを更新しないと対応できませんが、接頭辞を付けるやり方だと、例えばコンビニが閉店した場合は「disused:shop=convenience」のようにキー部に接頭辞を付加することでソフトウェアのロジックを都度変えずとも自動的に処理対象外のタグとなり(レンダリングされなくなり)ます。さらに看板が外されたりして店名が見えなくなっている場合は「disused:name=*」のようにしておくと名前での検索からも除外されます。
建物が取り壊された場合はエリアを削除するのではなく「demolished:building=yes」のようにキー部を書き換えておくと、レンダリングはされなくなりますがエディタでは視認できるので、衛星画像に写っていたとしてもアームチェアOSMerによって再度マッピングされてしまうことを防ぐことができます。
他方、これらの接頭辞がソフトウェアにとって有用だと思えば細かな対応が可能です。

接頭辞の中にも違いがよく分からないものなどあるので、その利用頻度などから主なものを抜き出したのが下記の表です。(私見です)

|ステージ|接頭辞|Wikiの説明|補足説明|主な適用要素|オススメ度
|-----|----|----|----|-----|-----|------|
|誕生|proposed:(提案中)|計画中で、建設される可能性が高い状態|土地。一般にはあまり分からない状況|ライン/エリア|△|
||planned:(計画中)||建築申請が許可された土地。現地で看板に掲示されている。|ライン/エリア|◯|
||construction:(建設中)|現時点で建設中|建造物|ライン/エリア|◎|
|衰退|disused:(使用終了)|現在は使えない状況だが、簡単に回復できるもの|閉鎖して間もない状態で設備がほぼ残っている施設や店舗|ノード/ライン/エリア|◎|
||abandoned:(放棄)|まだ見ることはできるものの深刻に壊れた状態で、かなりの努力を払わなければ運用が再開できないもの|埃をかぶっていたり、窓に板が打ち付けられている施設や店舗|ノード/ライン/エリア|◯|
||ruins:(廃墟)|対象物の廃墟のみが残っている状態です。|建造物。歴史的な価値のあるものはhistoric|ノード/ライン/エリア|△|
|積極的な取り壊し|demolished:(取り壊し済み)|取り壊し済みの地物|再開発のために取り壊した建造物など|ライン/エリア|◎|
|意図しない取り壊し|destroyed:(破壊済み)|demolished: と似ていますが、意図的な取り壊し以外の目的で破壊されたものです。|災害、風化、破壊行為などで壊された建造物|ライン/エリア|△|
|他の目的への転用|was:|以前とは変わっている(おそらく既に存在しない)|マッピングの混乱を避けるためにひとつ前の状態を残しておきたい施設や店舗など|ノード/ライン/エリア|◎|
|その他|not:|混乱を避けるためのもの。誤ったタグや存在しない地物。|誤りであることを明示的に残しておきたい場合に使う|ノード/ライン/エリア|◯|

注1)空き店舗用にはshop=vacantタグもあります。
注2)道路と鉄道については接頭辞が考案される以前からライフサイクルを値として表現すること(例:railway=abandonedなど)が行われてきており、その方式は現在も踏襲されています。

3 その他補足的なタグ付け

以下のようなタグも意識して付けておくと間違いが起きにくくなるので、ライフサイクル接頭辞と併せて使うと良いと思います。

4 最後に

繰り返しになりますが、OSMの対象は基本的に今そこにある地物です。あらゆるものにライフサイクル接頭辞を付けるのではなく、誤解が生じる恐れのあるものについて付けていくと良いでしょう。Happy Mapping!

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