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Crotosの紹介

Last updated at Posted at 2018-11-30

カレントアウェアネス・ポータルで紹介されているように、GLAM系のオープンアクセスの流れから美術館が所蔵作品の画像をCC0などのオープンなライセンスで公開する動きが国内外で活発化している。これを受けて例えばメトロポリタン美術館のオープンアクセス(public domain)画像から、2018/11月現在で約36万件がWikimedia Commonsにアップロードされている。しかしながら、これほど大量にあるとここから目的の画像を探すのはとても難しい。むしろ提供元のサイトに戻ってアルファベットで探す方が早いという残念な状況だ。

ここでひとつの可能性を示すのがCrotosである。CrotosWikimedia Commons上にある美術作品の画像をWikidata上にあるその作品のメタデータを活用して検索するツール。2018/11/30現在138,274点の作品が集められており、自由に使える画像の検索ツールとして使えるほか、その検索を改善したりするためのメタデータの充実(Wikidataの編集)にも気軽に参加できる。いうならばみんなで作るオープンアクセス画像の共有サイトだ。

画像はすべてオープンデータであり、個々のライセンスに従った上で二次利用や改変が自由にできるので、好みの作品を探してPCの壁紙にしたり、プレゼン資料に埋め込んだり、文字を入れてTシャツにプリントして販売したりすることもできる。

閲覧モード

Crotos.png
(1)でフリーテキスト検索、(2)で絵画、彫刻といった分類での絞り込み、(3)で作品の年代での絞り込みがそれぞれ可能だ。(4)では閲覧モード/貢献モードを切り替える。

その特徴は単純な文字列検索だけではなく、作品のラベル(タイトル)、作者、ジャンル、題材、作成年代といった様々なメタデータ(プロパティ)で検索できる点。

検索例1)フリーテキスト「蛙」で検索

検索窓で「蛙」と検索すると以下の画像が表示される。
Crotos_kaeru.png
このページで見えるところには「蛙」の文字は見当たらないし、画像からカエルだと自動認識している訳でもない。2つ目の画像のWikidataアイコン(赤い〇部分)をクリックしてみる。
Seal shaped as a frog AF 8550   Wikidata.png
するとメタデータに相当するWikidataの該当項目が開き、この作品の「題材」というプロパティに「カエル」が設定されているので「カエル」という対象物を含んでいることが分かる。しかし「蛙」という文字はどこにも無い。
そこでさらに「カエル」をクリックしてみる。そうすると別名のところにようやく「蛙」という文字が表れた。カエル   Wikidata.png
つまり言語や表現が違っても「蛙/カエル」という題材がプロパティとして登録されていればそれをキーワードとして該当作品を探し出すことができる。まぁ、高度なあいまい検索が当たり前に行われている現在、さほど珍しい感じはしないけれど、足りない作品やキーワードを利用者自身が自由に追加できるという点が特徴だ。

検索例2)作者「葛飾北斎」で検索

検索窓で「葛飾北斎」と入力してしばらく待つと名称が一致するラベルやプロパティが表示される。
crotos_hokusai.jpg
「作者」というプロパティの値が「葛飾北斎」という候補が表示され、これに間違いないので選択すると下記のように作者が葛飾北斎の画像が表示される。
葛飾北斎   Crotos.png
こうやって作者名で作品を選ぶこともできる。北斎の作品は現状61件とまださほど登録されていない。

貢献モード

画面右上で「貢献モード」の文字が表示されている状態でそこをクリックすると貢献モードに遷移する。これはWikidataで整備が足りていないプロパティなどを探してその項目の登録内容を充実させるためのもので、Wikipedia/mediaのアカウントを持っていれば誰でも編集できるので漏れている日本語ラベルや作者名などが分かりそうな場合など、ぜひ気軽に登録して頂きたい。
貢献モードでは検索条件指定エリアの下部にラベルや各種プロパティの有無(チェック:有、X:無)を指定する枠があるので、フリーテキスト検索などと併せて未設定の内容を探して充実させる。
Crotos_ukiyoe.png
たとえば日本語ラベル(作品のタイトル)が未登録(X)の「浮世絵」を探してみたのが上記で、使用言語を日本語としているにも関わらずタイトルにフォールバック言語の英語が表示されている(つまり日本語が未登録)。左端一つ目の画像下部にあるウィキペディアアイコンをクリックすると英語版ウィキペディアが開き、Print detailsに「七十一翁永寿堂日比野」とあるので、これがおそらくこの浮世絵の名前(より正確な名称の探し方をご存知の方はぜひ違うやり方でどうぞ)。
Eijudō Hibino at Seventy one  Toyokuni I    Wikipedia.png
該当画像のWikidataアイコンをクリックしてこの項目を開き、「編集」ボタンを押してラベル欄に「七十一翁永寿堂日比野」と入力して「公開」。
七十一翁永寿堂日比野   Wikidata.png
これで出来上がり。WikidataからCrotosへの反映は定期的に行われているが更新に少し時間がかかるようだ。(Crotosの画面右下には最終更新日が表示されている)

Wikidataへの新規登録

前述の通り、Wikimedia Commonsには既にメトロポリタン美術館のオープンアクセス画像が36万件余り登録済みだが、Crotosには全体でもまだ16万件しか登録されていない。以下にWikimedia Commonsにあるメトロポリタン美術館のオープンアクセス作品画像からそのメタデータがWikidataに未登録のものをひとつ選んで登録する作業を実際にやってみたい。

1)メトロポリタン美術館のサイトで適当なオープンアクセス画像を探す

葛飾北斎の作品を探してみたいが日本語ではヒットしないのでアルファベットで「hokusai」と検索してみる。
Search the Collection   The Metropolitan Museum of Art.png
すると465件ヒットした。(すごいー)上述のようにCrotos内では61件しかなかったのでこれを入れて行けば一挙に充実する。

作品の中からひとつ、ここでは「Bird-and-Flower Paintings/古今書画鑑 熊谷蓮生坊真跡」を選んでみる。

2)Wikidataに登録するプロパティ(メタデータ)を探す

上記メトロポリタン美術館の作品説明にもメタデータ(英語)があるのでそれを利用しても良いが、Wikimedia Commonsで「古今書画鑑 熊谷蓮生坊真跡」を検索すると画像が見つかり、そこに日本語のメタデータが記述されているのでこれを利用する。
wmc1.png

3)Wikidataへの登録前に「古今書画鑑 熊谷蓮生坊真跡」を検索して既に登録されていないことを確認

4)ラベルやプロパティを登録

上記2)のメタデータを元に登録していく。
古今書画鑑 熊谷蓮生坊真跡   Wikidata.png
調べたところ、作者は葛飾北斎の初代ではなく二代目との記述がこちらで見つかったためため、作者欄に出典とともにそちらも併記した。
これでWikidata項目のできあがり!しばらく経つとCrotosで検索できるようになる(たぶん)。ぜひお気に入りの作者の作品など、楽しんで登録して頂きたい。

なお、Wikidataへの登録は画面からひとつずつ登録する以外にも登録内容をCSVで用意しておいて一括登録する方法もある。そちらについてはまた別の機会に。

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