雑感あれこれ
amenityタグは2022/10/8現在日本では527種類が使われています。その内容は多様すぎてなかなかしっくりくる日本語訳がありません。「社会生活に欠かせないサービスの提供施設」というところでしょうか。shopとの対比ではshopが物販、amenityがサービス提供、というおおまかな区別はあるような気はするもののその線引は曖昧で、それゆえamenityとshopのタグ付け間違いもよく起こっています。以下のランキングにあるようなamenityの中には日本ではお店と呼ぶものも多くありますが、国により感覚が違うのでしょう。
個々のタグについてもrestaurantとfast_food(ラーメン屋はどっちだ)とかpubとbar(日本ではpubは居酒屋など食事メインの店に当て、パブ・スナック・バーなどお酒メインの店はbarに当てている)とかrestaurantとpub(和食創作料理の店はどっち)とか、欧米では自然なのであろう区別の仕方に無理くり日本の地物を当てはめている感が拭えず、自分でもその時々で判断が揺れているのを感じます。
amenityのデータ量については、その評価は人により分かれるかもしれませんが、2011年頃の国土数値情報(国交省)のインポートが大きなインパクトを与えたことは間違いありません。公共施設関連のデータ(2011年よりやや古い内容)が当時の全国分、コミュニティで手分けしてインポートされました。タグを付け間違って複数回インポートしたり、その削除をしたりと混乱もありましたが、結果的に主だった公共施設関連のPOIがそこそこ網羅的に揃いました。
なお、その後国土数値情報は利用規約の見直しが行われ、OSMへのインポートのハードルは上がっています。
1-15位
(元データ)
1位:parking(駐車場)
衛星画像で識別しやすいこともあり、ダントツの1位。衰える気配は全くありません。
2位:restaurant(レストラン)
POIといえばまずは飲食店。コロナ以降やや鈍っていますが改廃が多いためやむを得ないところ。
3位:place_of_worship(宗教施設)
一貫して人気のある地物。文科省宗教統計調査R4年度版記載の宗教法人数ば合計179,952件。これに対するコンプリート率は約35%。
4位:school(小中高、特別支援)
2011年頃の国土数値情報インポートでいったんほぼコンプリートし、重複の削除等を経て2012年よりほぼ横ばい。ウィキペディア日本語版によれば総数40,628件(2021年5月1日現在)。対するコンプリート率は約113%。多すぎるのは少子化の進展による統廃合を反映しきれていないとか、同一の学校に対してノード(ポイント)とクローズドウェイ(エリア)の両方に重複してamenity=schoolタグを付けている等ではないかな。国土数値情報はノードでインポートされましたが、学校のマッピングに際しては衛星画像で敷地がおおよそわかる場合には敷地全体にschoolタグをつけるやり方が推奨されています。その結果両方にタグがついているのを見かけます。この場合はノードにあるタグはエリアに移してノード自体は削除すべきでしょう。
また、敷地が広いので正面玄関や正門及び通路もマッピングしておくと訪問者にやさしい経路案内が可能になります。詳細はこちら。
5位:kindergarten(幼稚園、認定こども園)
2011年頃の国土数値情報インポート後、重複の削除等を経て2012年よりほぼ横ばい。ウィキペディア日本語版によれば総数15,688件(2021年5月1日現在)。対するコンプリート率は約47%。保育園タグとの混同がありそう。
6位:bench(ベンチ)
これは意外でした。ベンチをマッピングしている人は多いんですね。じわじわと増えていて、インポートによらずこつこつとマッピングされている様子が見て取れます。絶対数も多そうです。
7位:social_facility(社会福祉施設)
2011年頃の国土数値情報インポート後、重複の削除等を経て2012年より横ばいから微増。従来のバラバラに定義されていた類似タグ整理統合したもので、このタグへの切替が推奨されています。しかしながら対象範囲が広く、サブキーで施設の種類や対象者を示す形ですが、細分化しすぎてタグ付けが難しい面があり、切り替えはまだ十分進んでいない印象。
8位:vending_machine(自販機)
至るところにあってマッピングしやすいので数は増加。飲み物を買えるお店が近くに無い時には重宝。
9位:toilets(トイレ)
ユースケースがイメージしやすく、人気の高い地物。細部を示すためのサブキーの種類が多く、なかなかに奥深い。
10位:cafe(喫茶店)
厚労省「喫茶店営業のみなさまへ」1ページによれば2017年度に約20.1万件。これを総数とすればコンプリート率は約11%。
11位:post_office(郵便局)2011年頃の国土数値情報インポート後、重複の削除等を経て2012年よりほぼ横ばい。総務省白書によれば郵便局数は24,367(2018年度末)。コンプリート率は約93%。
12位:fast_food(ファストフード)流行り廃りの激しい業態。最近は唐揚げや餃子などの持ち帰り専門店をよく見かけます。
13位:pharmacy(薬局)院外処方が7割となり、数が増えましたね。
14位:pub(居酒屋)廃業、開業をよく見ます。
15位:community_centre(コミュニティセンター)こどもセンター、青少年センター、シルバーセンター、女性センター、公民館、町会会館など。対象者を示すサブキーもあります。
16-30位
16位:bicycle_parking(駐輪場)急増しています。背景は健康志向、駅前再開発のバッファといったところでしょうか。
17位:fuel(ガソリンスタンド)業界再編で総数は減少傾向。資源エネルギー庁発表によればR3年度末で給油所数は28,475件。これに対するコンプリート率は約52%。
18位:post_box(郵便ポスト)総務省白書によれば180,744(2018年度末)。対するコンプリート率は約8%。インポートせずに地道にやればこの位なのでしょう。
19位:police(警察署)2011年頃のインポートで本署はほぼコンプリートのはずですが、交番にも同じタグを付けて増えているのかな。
20位:bank(銀行)増えているが、ここも社会背景や業界再編で総数は減少傾向のはず。支店を閉じてATMだけになったりしていますね。
21位:dentist(歯医者)歯医者さんと散髪屋/美容院は人のいるところ、どこに行っても見かけます。
22位:doctors(診療所、小規模病院)病院の区別(doctors/clinic/hospital)は外から見るだけだと難しいものがあります。
23位:hospital(大規模病院)入院施設あり。日本では病床数が20以上のもの。
24位:bar(バー、スナック)
25位:telephone(公衆電話)
26位:grave_yard(墓地)
27位:clinic(クリニック、中規模病院)中規模の医療センター。
28位:shelter(避難所)
29位:parking_space(駐車区画)区画ごとのマッピングもアクティブに行われ始めているんですね。
30位:public_building(公共施設)古いタグであり、他のより詳細なタグへの切り替えが推奨されています。
31-45位
31位:fire_station(消防署)2011年頃に国土数値情報よりインポートして重複削除等。H30消防白書によれば消防本部(5,564)+消防団(24,631)数は30,195。これに対するコンプリート率は約20%。消防本部・署レベルはほぼコンプリートでは。地域の消防団は別タグにしたいかも。
32位:drinking_water(水飲み場)
33位:public_bath(公衆浴場)
34位:townhall(役所、役場)基礎自治体数約1,700の2倍以上となっている。同一の市役所に対して建物ごとなど複数のタグ付けしている場合がある(ひとつにすべき)。支所などの出先機関に同じタグをつけている場合もありそう(支所は別タグにしたいかも)。いずれにしても市役所/役場はほぼコンプリートのはず。
35位:parking_entrance(駐車場入口)入口を丁寧にマッピングする人も増えているんですね。見習いたい。
36位:atm(ATM)
37位:nursing_home(介護施設全般)2011年頃に国土数値情報よりインポートして重複削除等。その後より詳細なsocial_facilityタグが承認されそちらへの切り替えを推奨。まだかなりの残あり。
38位:library(図書館)2011年頃に国土数値情報よりインポート。その後漸増。日本図書館協会の統計によれば公共+大学図書館数は5,006(2021年度)。これに対するコンプリート率は約72%。
39位:childcare(保育所)
40位:university(大学)
41位:waste_disposal(ゴミ集積所)
42位:taxi(タクシー乗り場)
43位:veterinary(動物病院)ペット関連は増えています。
44位:clock(時計)
45位:car_rental(レンタカー)
46-60位
このあたりまでが常連、よく使われるamenityタグという感じです。
46位:fountain(噴水)
47位:college(短大、高専、専門学校)
48位:waste_basket(ゴミ箱)
49位:prep_school(塾、予備校)たいていの駅前にあって今後も増えそうです。
50位:bus_station(バスターミナル)
51位:theatre(劇場)
52位:love_hotel(ラブホテル)立ち止まってマッピングしづらいのよね。
53位:bicycle_rental(レンタサイクル)増えてきました。これはマッパーにも嬉しい。
54位:courthouse(裁判所)2011年ころの国土数値情報インポート。そうそう変化が無さそうなものなのでほぼコンプリートなのでは。
55位:shower(シャワー)割と急増しているけど海水浴場とか?
56位:motorcycle_parking(バイク駐車場)
57位:driving_school(自動車学校)
58位:ferry_terminal(フェリー乗り場)
59位:recycling(リサイクル用品保管所)
60位:karaoke_box(カラオケボックス)日本文化のタグは何か嬉しい。駅前ではたいて見かけるのでまだまだ増えそう。
61-100位
このあたりから社会情勢の変化を反映した新しい業態のサービスなど、勢いのあるamenityが登場してきます。
101-147位
このあたりはOSMWikiに文書化されていない提案前段階のタグや、間違い、非推奨タグ、レアものなどが入り混じり、なかなか楽しい感じです。
148-194位
このあたりは眉唾ものシリーズと言ったらよいのか、適当なタグが思いつかずにそれらしいものを入れた(気持ちはわかる)とか、うろ思えのタグを手入力した(そして間違った)とか、何らか修正が必要なものが多そうです。きれい好きな方は追いかけて修正するのも楽しいかも。
以下はロングテールなので興味あれば元データを見てみてください。
さいごに
すべてのamenityの件数を集計してみると96.7万件ありました。2011年頃のインポートは大きなインパクトがありましたが、すでにその2倍以上の件数が地道にマッピングされています。直近の伸び率から予測すると来年には100万件を超えそうです。年率9%なのでこのまま行けば10年かそこらで2倍になる勘定ですね。さてどうなることやら。
Happy Mapping!