ウィキペディア記事はウィキデータをハブとして、各国語版記事やウィキメディア・コモンズ(以下コモンズ)、OpenStreetMap(以下OSM)などとリンクしています。このリンクがあることで、これらのプロジェクト間で内容を相互に参照できるようになっています。例えばウィキペディア記事上でウィキデータを参照しているテンプレートを使うと、詳細を指定すること無しにコモンズやOpenStreetMapの内容を利用することができるものがあります。
ウィキメディア財団全プロジェクトのうち約56%のコンテンツでこうしたウィキデータ連携が行われており
ウィキペディア日本語版でも36%程度使われています。
(2019/12/28現在 Percentage of articles making use of data from Wikidataより)
使われ方の具体例をいくつか挙げてみます。特に断りのないテンプレートはすぐにでも使えますのでよろしければお試しください。
#1 ウィキペディア⇔ウィキデータ⇔OpenStreetMap
##1.1 {{maplink2}}
リンクが適切に張られていれば、ウィキペディア記事内に
{{maplink2|type=shape|frame=yes|zoom=15}}
と記述すると
以下のようにその記事のエリアが赤枠で囲まれたマップが表示されます。
具体的なOSMのオブジェクトID(222092514)が記述されていないのに記事対象物の形状を示すマップが表示されるのは不思議な気がしますが、これは以下のようにデータが2段階でリンクしていることで実現されています。
###リンク1) ウィキペディア⇔ウィキデータ
ウィキデータ項目「大座法師池」(ID:Q40423986)から、ウィキペディア記事「大座法師池」へのリンクが登録されています。
ウィキペディア側から見ると左サイド下部よりウィキデータにリンクしています。
###リンク2) ウィキデータ⇔OSM
OSMの該当オブジェクトに「wikidata」タグが付与されて、ウィキデータのQ番号:Q40423986とリンクしています。
なお、このOSMオブジェクトとウィキデータQ番号のペア値は専用のDBに保持されているようなのですが、それが更新されるまでに当方の経験では約1ヶ月掛かりました。それまではマップが正しく表示されませんので、このテンプレートを利用する際には、マップが正しく表示されることをプレビューで確認してから使うようにしてください。(2019/12/28現在、2019/11月以前にOSMオブジェクトにwikidataタグを付加しているものは問題なく表示されるはずです。)
また、OSMベースの小さなマップを表示する際の初期表示位置はウィキデータ項目の「位置座標」プロパティに設定されている座標値を参照しています。ウィキデータ項目にはこの座標値も設定しておきましょう。
類似のテンプレートとして、OSMのオブジェクトIDを直接指定してリンクする{{Osm box}}があります。
{{Osm box|w|222092514}}
しかしながらノードやウェイのオブジェクトIDは永続性が保証されていません(突然削除されることは普通にある)ので、{{maplink2}}テンプレートへの切り替えをオススメします。OSMではオブジェクトを削除して新しく作り直す場合には(オブジェクトIDは変わりますが)設定されていたタグは手動で移行する運用が推奨されていますので、新しいオブジェクトIDとQ番号のペア値はいずれ自動更新されるはずです。
##1.2 {{Infobox mapframe}}
{{maplink2}}とよく似たテンプレートですが、最低限の入力で情報ボックス内で使うmapframe地図を生成するものです。
ウィキペディア記事の情報ボックス内に記述します。
{{Infobox mapframe|zoom=16}}
zoomを指定しない場合のデフォルト値は10です。
#2 ウィキペディア⇔ウィキデータ⇔コモンズ
##2.1 {{commonscat}}
リンクが適切に張られていれば、ウィキペディア記事内に{{commonscat}}と書くだけで(カテゴリ名を書かなくても)コモンズのカテゴリへリンクするボタンが表示されます。
###リンク1)ウィキペディア⇔ウィキデータ
ウィキデータ項目「小汐井神社」(ID:Q11462224)から、ウィキペディア記事「小汐井神社」へのリンクが登録されています。
ウィキペディア側から見ると左サイド下部よりウィキデータにリンクしています。
###リンク2)ウィキデータ⇔コモンズ
ウィキデータ項目「小汐井神社」(ID:Q11462224)から、コモンズのカテゴリ「Oshioi-jinja」へのリンクが2つ登録されています。
#3 ウィキペディア⇔ウィキデータ
##3.1 {{twitter}}
リンクが適切に張られていれば、ウィキペディア記事内で{{twitter}}と書くと、リンクしたウィキデータ項目側で「Twitterのユーザー名」プロパティが登録されていれば(アカウント名を書かなくても)アカウント名が表示されます。
##3.2 {{Databox}}
リンクが適切に張られていれば、{{Databox}}と書くだけで、ウィキデータの文をごっそり自動表示する情報ボックスです。鉛筆アイコンからウィキデータの値を直接修正することもできます。(2019/12/28現在ウィキペディア日本語版ではまだ使えません。)
#4 コモンズ⇔ウィキデータ
##4.1 {{Wikidata Infobox}}
このテンプレートは既にかなり多くのコモンズのカテゴリページで記述されているので目にしたことのある方もおられると思います。ウィキデータ項目にコモンズのカテゴリが登録されていれば、コモンズのカテゴリページで{{Wikidata Infobox}}と書くだけで、ウィキデータに登録されている情報を元に情報ボックスが自動表示されます。
さらに、コモンズ側で言語を英語に切り替えると情報ボックスの内容も自動的に英語に切り替わります。ウィキデータではデフォルトで同一項目に対して各国語での表現ができるようになっているので言語切替がスムーズに行なえるのです。
#5 その他参考情報
ウィキデータを使ったテンプレートの一覧
WikidataCon 2019でのInfoboxes panelのビデオ