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ルワンダでのオフショア開発を足掛かりに成長市場のアフリカでソフト企業を立上げ成長させてく話6(最終)

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はじめに

本記事、6回目にして最終回(の予定)です。
2022年の後半に書き始めた本シリーズ、年内中に書ききるつもりでいましたが、12月の忙しさに忙殺されて結局年が明けてしまいました。

これまでの1回から5回までは、立上げのきっかけから、どのように事業を成長させてきたか、初期のチーム作りから、日本~ルワンダ間での開発体制の構築、人材育成のことなどを書いてきましたが、この最終回では、これまでの事業を通して得た、途上国での課題やチャンスへの気づき、今後の見通し、そのほか伝えたいことをまとめて共有したいと思います。

第1回はこちら

現地のIT企業の人と話する中で気付いた課題

ルワンダはアフリカ諸国の中ではIT化、ITを活用した国づくりに力をいれており、アフリカのIT先進国と呼ばれるようなこともあります。その1つの例として、2010年代の前半にはすでにルワンダの行政の多くのサービスがオンラインで利用可能となっており、たとえば企業の設立がオンラインで半日でできる、といったことが実現されていたりします。
2013~14年頃だったと記憶していますが、このルワンダのオンラインの行政サービスの開発・運営をおこなっている半官半民の会社のCEOが来日しました。
その際、とあるツテで、このCEOと会食する機会を得ることができました。その中で、前から疑問に思っていたことを質問してみました。

その疑問とは

「この規模のシステムの開発は、どのように行なっているのか?自社開発なのでしょうか?」

というものです。

というのも、その時点ですでに数回ルワンダに渡航し、現地のIT企業に訪問したりしていたのですが、そもそも数も多くないですし、大きくても10数名ぐらいの会社規模が数社というレベル感で、とてもそのような大規模な開発ができるようには思えなかったからです。

彼の答えは

「●●のコンサルが入って、開発はxxでやっている」

でした。(すみません、具体的な国名は伏せさせてください。ですが、いずれもルワンダでもなければアフリカでもないです。)

なんということでしょう。

国のこのようなシステムを作るには、相当の規模の開発費が必要でしょう。
国の税金や先進国から行われる支援などから捻出したお金を使って大規模にシステム開発する際に、そのお金が海外に流れてしまっていることに加え、このようなシステム開発に携わるなど経験として変え難いものであるはずなのに、その開発に携わるのが国内のエンジニアではないため、その経験・成長の機会が奪われてしまっていること。

鶏が先か卵が先かという話になりますが、確かにその規模の開発を国内でやりきるのは難しかったでしょう。
国としても完成させて運用させなければならないので、国内で無理にやっても完成できない恐れが高い。同じように課題感はもったはずでしょうが、背に腹は変えられない、といったところでしょうか。
なので、結果、経験やお金が国内に回らない、ゆえに成長しないの悪循環になります。この課題にこのとき気づきました。

もちろん、CEOの彼もその構造を十分にわかっています。なので、社内で開発・運営の人材の育成に取り組み、将来的には国内で開発・運用できるようするという目標を持っていることを教えてくれました。

当時は我々もまだ立ち上げたばかり、そのような規模のシステム開発を請負う体制もなければ、実績もない、そのような状態でしたが、このとき、今でも続く我々の大きな目標「ルワンダで行われる政府や銀行の大きなシステム開発を、我々が請負えるようになる」が将来のビジョンの1つとして明確になった瞬間でした。

なお、ありがたいことに、近年はこのビジョンにかなり近づいてきており、政府系のシステム開発や、銀行系のシステム開発を全面的ではないにせよ、部分部分で請負えるようになるところまで成長してきています。

ルワンダで継続して日本からの仕事をこなした結果起こったこと。

2014年に設立した後、当初数人で始めた会社であっても、地道ながら日本からの仕事をしっかりこなしながら、人材の育成もおこない、少しづつ規模を大きくしていきました。

一方で、グローバルでみたとき、ソフトウェア開発のリソースを求めているのは日本だけでなく世界の国々がアウトソース・オフショア開発の可能性を探しています。もともとルワンダに限らずアフリカ諸国は地理的にも歴史的にもヨーロッパとの結びつきが深いですが、やはり我々の会社も欧米のIT企業の目に留まることになります。もちろん目に留まるよう、さまざまなマーケティング活動や、デリゲーションへの同行などを通して欧米企業との接点をもったりもしていましたが、その際に、日本からのソフト開発の実績を多く持っているというのは、大きなアピールポイントとなりました。
2016年ごろから少しづつですが、日本だけではなくヨーロッパからも仕事をもらえるようになりました。

そうなってくると、今度は国内からも注目も集まるようになります。あの会社は、アメリカや日本、ヨーロッパの仕事もやっているらしい、と。そうするとITを学んだ学生や、経験者から、ぜひ就職したいとレジュメが届くことはほぼ日常となり、人材の獲得には困らなくなりますし(これはこれで課題があり、手放しで喜べる話ではないのですが・・)、そのような実績があると、入札案件(すなわち政府系案件)に関してのお声がかかるようになります。またさらにそこで実績をだすと、今度は銀行系から声がかかったりと、、好循環が生まれる形となりました。

そういった結果として、前期の最終的な地域別の売り上げ比率は
日本 33%
ルワンダ 31%
アメリカ 30%
ヨーロッパ 6%
という結果になりました。
まだ締まっていませんが今期は、おそらく、ルワンダ1位、アメリカ2位、日本3位となる見通しです。
(日本担当の私はもっと頑張らないといけません・・)

アメリカやヨーロッパから見た場合、インドや東欧よりも実はアフリカの方が時差が少なかったり、英語が通じたりとで、そこでしっかりソフトウェア開発ができるのであれば、魅力的なオフショア先になるはずです。
そちら方面への営業は現地の社長がやっていますが、今後欧米の仕事も多くなるだろうなという肌感があります。(すでに増員の相談は結構頂いているので・・)

自前の人材育成機関の立ち上げ

前回の人材育成のトピックの中で、時間かかりながらも将来のリーダー層は育ってきており、そのリーダーたちの下の若手をどんどん採用育成している段階に近づいてきているのが最近です。

一方、ルワンダで順調に会社が成長するなかで、会社の代表アドレスや問い合わせフォームには毎日のようにインターンへの応募や求職のメッセージが届くようになりました。ある意味ありがたいのですが、一方で全員と会うこともできません。

また、これはルワンダに限らず世界的中どこでもの課題だとは思いますが、ITを大学で学んで卒業した人、プログラミングスクールなどを卒業した人、これらの方々は即戦力にはなることは稀です。
これは大学やプログラミングスクールの教えた方が悪いとかそのような話ではなく、シンプルにエンジニアとして活躍できるようになるまでは実践経験を積んでいく必要があり時間がかかるということと、技術力とは別のところで、一社会人としての素養が必要であり、これらを数回の面接で判断するのは難しいということです。

これまでは採用の流れとしては、リファラル採用か、繋がりのある大学などからのインターンからの登用などが中心ではありましたが、中長期的に人材採用・育成を行い、より厚いエンジニアのプールを作るため、WiredIn社が直営し、自社でインターンから採用まで繋げることを目的としたプログラミングスクール、WiredIn Academyを設立し、運用する意思決定を行いました。

これは本当に最近で、2022年11月の開講です。今日現在で約10名の生徒が学んでいます。

イノベーションのための、エンジニア派遣の可能性

我々が現地に直営のスクールを作って、エンジニアの育成を加速させるのにはいくつか理由があります。一つは、我々のメインの事業であるソフトウェア開発チームの人材層を安定的に厚くするため。もう一つは、育成した人材を日本や欧米各国に送り込み、日本で言ういわゆるエンジニア派遣をできるようにするため、であります。

何度も書いているように、IT技術を学びエンジニアとして出てきた人たちが、より活躍できるようになるためには、多くの経験が必要と考えています。我々自体も規模を大きくしていき受け入れられる新しい人材の数を増やしていきたいところですが、それだけではペースが遅すぎると思っているため、そういった人材がどんどん海外で経験を積めるような道を作りたいと思っています。

話は少し変わりますが、アフリカなど途上国は、先進国には当たり前に存在するようなものがなかったり、いろいろなものがまだまだ未整備であります。
逆に、日本などは先進国と言われながらも、その社会の基本構造は戦後のころの技術や労働文化によって形作られたものであり、わかりやすい例としては、ITと言いながらいまだに根底にあるのは紙の文化であり、これは想像以上に固く崩せないものであることは、この業界に長くいる方などはより実感があるのではないでしょうか。
途上国でITをやる面白いところは、先進国のような古く出来上がってしまった仕組みが存在せず、今あるさまざまな社会課題に対して、今の最新テクノロジーをつかっての解決を目指せるという点です。
リープフロッグ現象という名前までついていますが、近い将来、アフリカで培われた最新技術を用いた課題解決が逆に先進国に持ち込まれる事例が増えることが予想されます。

すでにある1例として面白いのが、ZIPLINEというアメリカのベンチャー企業が、ドローンを使った医療品の配送のシステムの実証実験と商用利用をルワンダを舞台に実現し、その仕組みが今度は日本の長崎にも持ち込まれると言う話です。

これはアメリカのベンチャー企業の話ではありますが、ルワンダ国内でもさまざまなビジネスコンテストやインキュベーションが行われ、現地の人たちならではの社会課題の発見とその解決のアイディアは盛んに発表されています。なのですが、今ひとつ形となって出てくるものが少ないように思います。
これにはさまざまな要因があり、一概には言えませんが、いろんな経験をしたエンジニア人材がまだまだ少ないこともひとつの要因と考えています。そういったコンテストの発表を見ていて思うのが、課題の目の付け所は良いのですが、それに対するソリューションが凡庸であることです。でもしかたがありません。海外での生活経験、最新技術が日常的に身近にあるような世界を経験してしてる人が少ないのです。デザイナーがいろんな絵画や制作物をみてインスピレーションを得るように、エンジニアもいろいろなサービス、アイディアに触れて感心するような機会が必要です。が、これらは途上国ではあまり見ることができません。

我々のルワンダ内での事業に参画するだけでなく、派遣のような事業の形態にのって、どんどんルワンダの外で、エンジニアとして働く経験をもった人材が出てくる必要があり、そのような人たちが数多く帰国するようになったとき、我々では想像しないような課題発見とそのリューションが出てくるのではないかと期待しています。

単にビジネスとしてではなく、その先の可能性につなげたいという思いも込めて、自前のスクール立ち上げから先進国へのエンジニア人材派遣という事業を推し進めていきたいと考えています。まだまだ始まったばかりの取り組みですがあまり時間もないと思っているので、頑張りたいなと思います。

逆オフショアの可能性

日本は日本で、エンジニアが足りない、中長期的には何万人も不足すると言う予測もあり、日本のエンジニアがわざわざ海外の仕事をやる必要があるのか、というのが普通の見方だとは思います。
ただ、本当にそれで良いのでしょうか?
確かに日本では引き続きエンジニアが必要となる仕事はたくさんあると思います。ただその仕事の内容はチャレンジングなものばかりでしょうか?メンテナンスやリプレイス、改善、改良が多くなることが予想され、1から何か大きなものを生み出していくような経験ができるような、チャレンジングな機会がどれくらい残っているでしょうか?

また日本では、相変わらずITゼネコンと呼ばれる多重下請け構造が残っており、そのような市場環境の中、そこに個のエンジニアとしての成長の機会がどれくらいあるのか、と考えた時、エンジニア個人のキャリアパスとして、または中小のソフト開発会社が海外のプロジェクトに参加することで、更なる発展成長の足がかりを得る、というストーリーがあっても全然良いのではないかと考えています。

この時冒頭に書いたような現地のエンジニアの仕事を奪ってしまうようなやり方にならないよう、注意が必要かと思いますが、一緒にやっていく形であれば、Win-Winの関係性は作れるはずです。

ルワンダやアフリカのIT人材が日本に派遣されリソース不足を補いつつ、日本のエンジニアが海外で活躍し、さらなる技術経験を獲得し現地の人と成果を分け合う、そういったグローバルな仕事の仕方、経験の積み方ができるような時代が近くにきていると思えませんか? (私だけかも・・ですが・・・)

ブリッジ人材の価値がより高まる時代

第4回の記事で余談として書いた内容を再度引用します。

最近、Zoomなどのオンライン会議におけるリアルタイムの翻訳機能の実用化が現実味を帯びてきました。我々はテキスト中心と言いつつも、オンラインでのビデオミーティングに価値がないとは思っていません。これらが本当に実用に足るものになってきたとき、我々の業務フローもこれありきで見直すこともできると思いますし、日本から見た時オフショアの敷居が劇的に下がる可能性があり、これは日本のエンジニア業界に大きな変化をもたらす物として非常に注目しています。
意識せずとも日本語バリアに守られている国内エンジニアは、いつの間にかグローバルの競争に晒されている、なんてことが起こるかもしれません。逆に世界で目を向けられるチャンスでもあるため、海外のエンジニアと一緒に仕事をするという経験値がより価値をもつ時代が、遠くないうちにやってくると見ております。

日本人に英語アレルギーがあるのは事実ですし、私も長くやってますが相変わらず自信はそんなにないです。
一方で、テクノロジーの進化が言語の壁を壊しつつあるのが昨今だと思います。
Google翻訳やDeepLなど翻訳の精度、自然さはAI技術の発展と合わせ加速度的に進んでいます。高速なモバイルネットワークとスマホなどの小型デバイスの性能の進化と合わさり、英語があまりできなくとも海外の人と仕事ができる時代はもうすぐそこまで来ています。

ただ言葉の問題が少なくなったとしても、海外のエンジニアと働くと言うのは言葉だけの問題でないことは、そのような経験を持ってる方であれば、分かるところであると思います。国民性や勤労文化、時差などの物理条件、そういったものは知識だけでなく、これも経験を通して、うまい付き合い方も身についていきます。

今後、これまで言語バリアで守られていた日本のエンジニアが、いつの間にかグローバル競争にさられている時は遠くないうちにやってくると考えていますし、そういった時代になった時、いわゆるブリッジとして活躍できる人材の価値は今以上に高まると考えています。言葉のブリッジではなく、海外のエンジニアをしっかりコントロールして開発を推し進めていくことができるブリッジエンジニアが必要とされると考えています。

折角この記事のシリーズここまで読んでいただいたのですから、そういった可能性、キャリアの積み方も検討に入れてみてはどうでしょうか?すぐではなくとも、何らかの機会があったとき、そのようなチャンスを掴むようなことになるかもしれません。
私個人としてもそのようなエンジニアが増えると、もっと国をまたいだ面白い事例が出てくると思っており期待しているところです。

今後の展望

立ち上げ当初の目標からは、いくつかは目標としたところに近づいてきてはいますが、事業をやる中で見つけた課題や、ここまで書いたような新たな将来の可能性からみると、まだまだ1〜2合目だと思っています。
冷静に見ればアフリカのルワンダでまだまだ小さくやっているだけに過ぎないため、これらの取り組みを再現性を持たせる形でどんどん他の国に広げていきたいと思っています。

事業拡大を通して、多くのアフリカの国々で展開し、人材の育成をおこない、受託開発〜人材派遣〜自社開発の輪を大きくしいくことで、ソフトウェア開発や社会課題のITでの解決とサービスの運用が、ルワンダやまたはアフリカの他の国の一つの大きな産業に育つぐらいまでやりきり、ルワンダ発のIT企業が初めてどこかのマーケットに上場する、そこまで辿り着けたら最高だと想像しながら日々取り組んでいます。

最後に

最後第6回は取り止めのない話となってしまいましたが、もしこれまで読んでいただいた中でもう少し詳しく聞いてみたい、とかありましたら、ぜひコメントなり、弊社のサイトの問い合わせからコンタクトしてください。
また、ブリッジエンジニアというキャリアに興味があったり、ルワンダのような途上国のITエンジニアと絡みながらグローバルに仕事をしてみたいなど、そういった興味がありましたら、是非是非お声がけください。
オンラインミーティングでも飲みながら話すでも全然よいので、気軽にお話ししましょう。

また何かネタが出てきたら、新しく記事書いたり、追記したりしますので、頭の片隅にでも、ルワンダでシステム開発屋さんをやってる日本人がいるということを覚えていて頂いたり、誰かに紹介してもらえたりすると、大変嬉しいです。

ではでは。

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