サービスの顧客体験を高める上で、「決済や請求処理に関するオペレーション」はとても重要です。特にSaaSなどのサブスクリプションビジネスでは、「顧客の意図しない解約」への対策を行うことで、解約率や収益性を高めることが期待できます。
「意図しない解約」とは
顧客が意図せずにサービスまたはサブスクリプションの利用を中止することを「意図しない解約」と呼びます。主な原因としては、登録しているクレジットカードの有効期限切れ、紛失・盗難、利用可能額が支払い金額より少ないなどの与信関連の問題や、請求書の送付先住所またはメールアドレスの更新を忘れたために請求書が届かず、未払いになってしまうケースなどが挙げられます。
こうした場合、顧客はサービスを利用し続けたい意思があるにもかかわらず、サブスクリプションの支払いが失敗したためにシステムが自動的に解約処理を行ってしまいます。サービスの契約自体を忘れていた受動的な利用者による解約とは異なり、顧客自身はサービスを利用し続けることを望んでいる点が大きな違いです
請求管理の視点から、意図しない解約に備える方法
意図しない解約を防止するためには、「予防」と「迅速なサポート」が重要です。クレジットカードの有効期限が近づいている顧客や支払いが完了していない請求書の期日が近づいている時に通知メールを送信したり、未払いが発生した時の社内通知や自動キャンセルまでのリトライフローのカスタマイズなどを行うことで、顧客が支払いを成功できるように支援できます。
通知機能を利用する
Stripeを利用している場合、「サブスクリプションの次回請求」や「有効期限が迫っているカードの通知」などのメールを自動で送信できます。ダッシュボードの設定画面から送信設定が有効になっているか確認しましょう。
通知メールには、支払い情報を更新するためのページを「Stripeが用意するもの」だけでなく、任意のURLに設定できます。
オートメーションを利用したカスタムのワークフローを追加する
もし社内への通知やシステムの連携などを柔軟にカスタマイズしたい場合は、オートメーション機能を活用しましょう。これはBilling Scaleプランユーザー向けの機能で、カスタムなワークフローをノーコードで設定できます。
トリガーは請求書またはサブスクリプションに関するイベントから選択可能
オートメーションで自動化できるワークフローは、以下の5種類から選べます。
- 請求書の期日が近づいている時
- 請求書の金額が確定した時
- 請求書の支払い期日を超過した時
- サブスクリプションがキャンセルされた時
- サブスクリプションの支払いが失敗した時
また、「特定の商品を契約しているユーザーのみ実行する」ことや「特定のメタデータでフィルタリングする」ことなどにもたいおうしています。
ワークフローの中では、5つのユースケースに応じたアクションを複数設定することが可能です。
オートメーションを利用して、フォローアップや運用チームへの作業依頼を自動化する
「あるSaaSサービスのサブスクリプションの支払いが失敗した」ケースを考えてみましょう。支払いが失敗していることが確認でき次第、さまざまなチームが対応に向けて動き始めます。
サポートチームは、顧客に未払いの通知と支払い情報の更新のためのコミュニケーションを開始します。システムの運用チームは、支払いが再開されるまで顧客がサービスを利用できないように制限を設けるでしょう。そして会計チームは、発生するはずだった売上を未収金として仕分けする必要があるかもしれません。
Stripeのオートメーションを利用することで、対応が必要なチームへのメール連絡を自動化できます。
また、これらのワークフローを自動的に処理するシステムがある場合には、Webhookイベントを発火させることで、スムーズな連携を実現できます。
それぞれのアクションは複数実行することも可能で、待機期間が設定できます。そのため通知メールやWebhookなどの仕組みを何段階かに分けて実行することもできます。
請求前のリマインドもオートメーションで自動化
請求が失敗してからのワークフローだけでなく、事前にリマインドする仕組みもカスタマイズできます。ダッシュボードで設定できるリマインドメールに追加して、上位プランを契約しているユーザーへのフォローアップを社内のチームに依頼するワークフローを設定してみましょう。invoice.will_be_due
のWebhookイベントを任意のタイミングで発火することもできますので、CRMとの連携やカスタマイズしたメールを顧客に送信したい場合にも、このワークフローを利用できます。
サービスを積極的に利用していないユーザー(受動的なユーザー)の解約に備える
意図しない解約を予防するための取り組みは、サービスの契約を忘れているような受動的なユーザーの積極的な解約を促す可能性があります。リマインドメールなどによって、利用していないサービスへの支払いを行なっていることに気づいたユーザーは、クレジットカードの有効期限切れなどを待たずに解約を行うでしょう。このような受動的な解約者による解約については、サービスそのもののエンゲージメントを高める必要があります。
解約者アンケートで「使われなかった理由」をまず調べよう
まずは解約につながったユーザーについて知ることが重要です。例えば解約者に対してアンケートを送付することで、解約を決断した理由を教えてもらえる可能性があります。
Stripeのオートメーション機能では、「サブスクリプションのキャンセル」をトリガーに解約者アンケートへの回答を依頼するメールを送信することができます。条件を利用して対象の商品や顧客・メタデータを絞り込むことで、例えば「有料プランのユーザーのみ回答を依頼する」ことや「上位プランユーザーの解約理由」や「営業主導で契約に至った顧客のみ依頼する」などのカスタマイズも可能です。
Stripeダッシュボードにチームメンバーとして登録されているメールアドレスに対して通知メールも送信できます。解約後のフォローアップを行うスタッフが社内にいる場合は、この機能を利用してフォローアップを迅速に行うことができます。
ダッシュボードを活用して、顧客の問題解決をよりスピーディーに
顧客は問題が発生した際、企業による「迅速な解決」と「すばやい対応」を期待しています。
Zendeskの最新調査では、顧客の73%が最も重視するポイントとして「迅速な解決」を、59%が「すばやい応答」を挙げています。
2020年、企業は顧客対応をいかにスピードアップしたか - Zendeskブログ
https://www.zendesk.co.jp/blog/how-companies-got-faster-solving-customer-issues/
Stripeでは、ダッシュボードやモバイルアプリから請求に関する問題を一元的に確認・対応できるため、顧客の問題をスピーディーに解決することができます。
ダッシュボードでは、未払い請求の一覧や、過去の支払い履歴、顧客の登録クレジットカード情報などを確認できます。不正利用の疑いのあるクレジットカードも見つけやすくなっています。
"クレジットカードの不正利用などもダッシュボード上から確認できるので、素早い対応が可能です。上場審査においては、売上や出荷、注文データの厳密な管理が求められましたが、その点においても、Stripe のように信頼性の高い決済サービスを使うことは重要です"
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さらに今回紹介したオートメーション機能を活用すれば、社内の関係チームへの通知やシステム連携、業務フローの自動化も可能です。ドキュメントの自動化レシピを参考に、無料のテスト環境で機能をお試しいただけます。
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