読んだ本
- 人工知能は人間を超えるか
- KADOKAWA
- 松尾 豊
概要
人類史ではこれまでに3回の人工知能ブームがおとずれた。それぞれのブームについて、人工知能技術の発展を追いかけながら、現在ある人工知能ブームを巻き起こした新技術ディープラーニングがどういった技術であるか、そして筆者がその技術にこれまでのブームでは存在しえなかった大きな可能性を感じている理由などがこの本では述べられている。
また、これまで人工知能ブームは失望とともに閉幕してきたが、それらを引き起こすような無知で過度な期待を寄せられてきた人工知能に対してどういった姿勢で関心を持つべきかをはっきりと主張している。
感想
私は情報系の学生で、機械学習については多少話には聞いていたがまとまった知識はなかったので、面白いと聞いて、この本を読んだ。
探索によって予想する技術によって引き起こされた第一次人工知能ブーム。
状態全体の空間をええ感じに分けることでパソコンに判断させる機械学習による第二次人工知能ブーム。
そして、有効な特徴量の発見をヒューリスティックにではなくパソコンに実施させることができるようになった第三次人工知能ブーム。
これまでの人間の職人的な勘に頼っていた機械学習に対して、高次のものを低次に圧縮して復元する際に最適なパフォーマンスを発揮するもの、そして多少のノイズの中でも間違いなく力を発揮できるrobust性を持った特徴量を求めるという考えで実現されたディープラーニング技術についてとてもワクワクして読み進めることができた。
最後の方では、過度の期待に対して警鐘を鳴らしながら、冷静にディープラーニング技術によって理論的には可能になった「概念」そのものの獲得にそくして、これからどのようなことが起こりえるかを解析していく。
徐々に獲得していく概念を生かしながらより高度に人間的な概念を獲得していく様は、われわれが高級言語をかけるようになった図をほうふつとさせる。
アセンブリをコンパイルするコンパイラを最初に書いた人はアセンブリで書いたはずで、それを用いてc、...,java,pythonと抽象化された使いやすいものが登場したが、すべては最初にアセンブリでコンパイラを書いてくれた人のおかげである。
ディープラーニングの技術は現状一つの(人間にとっては明白な!)概念を獲得するのにとてつもない計算量とデータを必要とするらしい。
これからが一番大変で重要な工程なのだと思うと、学んでみようと思えてくる。モチベーションはすごく上がった!
著者の性格がすごく出ている人のいい文章で研究者へのあこがれも増した。