Code for Nerima(東京都練馬区)の代表をしております青木秀仁です。Code for Nerimaは「さまざまなアクセシビリティーへの取り組み」を活動の主体においております。今年を振り返ってCode for Nerimaとして、僕個人として関わったイベントでのアクセシビリティーを取り上げてみたいと思います。
#Code for Japan Summit 2020
毎年開催しているCode for Japanの最も大きなイベントです。Code for Nerimaは会場のアクセシビリティ対応のところで数名コアメンバーとして関わりました。今年は完全オンラインでの開催となり物理的な会場がない代わりにオンラインの会場をどう回していくかが課題となりました。そして情報アクセシビリティもどう提供していくかも課題になりました。
結論から言うと、昨年までの物理的な開催よりもオンラインの方が情報アクセシビリティの質としては向上し、より多くの人が参加できたのではないかと感じました。
必要な情報アクセシビリティーとしては
- 視覚情報対応
- 聴覚情報対応
- 他言語対応
が挙げられます。
視覚情報対応としてはオンラインでの発表なので画面のスペースが限られます。文字の大きさやコントラスト比などそう言ったところにゆるいガイドラインを設け資料を作成していただきました。また視覚障害者の方が参加される可能性も考慮し、写真やイラストを出しっぱなしにするのは極力避けて捕捉説明を入れたり、箇条書きも全部読み上げたりなど、音声だけでもわかる発表に努めてもらいました。
聴覚情報対応としては今年もUDトークによるリアルタイム字幕を全てのセッションで提供しました。同時8トラックで各担当を割り振りUDトークを稼動させました。配信拠点では8トラック同時視聴をするアプリを開発して動かすなどなかなか面白い取り組みもしました。
誤認識の修正スタッフも配置し適宜行いながらリアルタイム字幕の提供が行えました。聴覚障害者の方だけではなく、音を出すことができない聴くことができない環境で視聴される方もいることを考慮した発表に努めてもらいました。
他言語対応としてはホームページで日本語、英語、中国語(繁体字)のコンテンツを用意。これらの翻訳はSlackでチャンネルを作りボランティアで対応しました。台湾からもヘルプに入っていただきとても助かりました。1日目のオードリー・タンさんの基調講演も動画でいただいたので翻訳した日本語字幕をつける予定でしたが来たのが一週間前。翻訳業者は引き受けることができないと言われたのでこちらで音声認識と自動翻訳をベースに何人かでチェックと校閲をしながら数日で日本語字幕を用意することができました。セッションはUDトークで行っていることで翻訳字幕はいつでも見れる状態でした。
ではこれらのアクセシビリティは活用されたのか?よくイベントなどでは「何人のためにやるのか」「コストに見合うのか」など言われます。そもそもそう言う考えをするのはイベントの成功自体が集まった人数で評価されると言うことが多いから来てるのだと思います。
ですがアクセシビリティへの対応というのはこれを利用する人がいなかったら別にそれでもいいし、たった一人でもこれらのアクセシビリティがあることによってイベントに「参加できた」のであればやる意義はあると思います。ただそう言ってもやはり人的な作業コストはかかるのでそれらは負担が少ないようにすることも大事です。
オンラインで開催したこともあり例年の数倍の参加者がカウントされました。オンラインイベントだと参加者が増えれば増えるほど視聴者や視聴環境がさまざまで多様化してきます。視聴覚対応は障害者対応と思われがちですがアクセシビリティとして提供することで健常者の方でも視聴しやすい環境を提供することができたと思います。来年は東北開催でおそらくオンラインとオフラインのハイブリット開催になると予想されます。また運営メンバーと一緒にアクセシビリティへの取り組みを進めていきたいと思います。
#CCC-u22
Code for Japanの若きインターンくんたちが中心になって開催したハッカソンイベント。僭越ながらここにアクセシビリティ担当のメンターとして関わらせていただきました。
僕が個人的に一人のものづくりをする立場として「どう言う人に使ってもらいたいか」と言うことは常に頭に置いておいてもらいたいと思っていました。こうしたハッカソンにアクセシビリティとしてメンターを配置してもらえたのはとてもいいことだと思います。
勉強会で僕が話したアクセシビリティは
- 視認性の良さ(フォント、コントラスト)
- 色弱対応
- スクリーンリーダー(視覚障害者向け読み上げ)対応
- 他言語化
受託案件だとこれらのことは後から別途見積もりで、そしてお金がかかるならやらないところが多いですが、作り始めから意識して行うことでとても楽に実装ができます。言語も日本語決め打ちではなく日本語と英語に対応して作っておけばその後に1つ言語を足すのは容易です。
例としてこんなことも紹介しました。
"ある会社で同じことができる商品AとBでコンペになったとき、Aはスクリーンリーダーに対応していいてBはそうではありませんでした。その会社の数千人の社員の中には数名視覚障害者の方がいて、その会社は「うちの数名がちゃんと使えるA」を選びました。"
おそらく今もうアイデアも製品も溢れいててまったく新しい何かと言うものは生まれにくいです。でも世の中の商品というのは既存のものに少し新規の機能をつけたり、組み合わせで新しいことができたりするものです。そんな中でその製品が価値あるものとして残っていくのは誰もが使いやすいアクセシビリティというエッセンスだと思っています。
今回の成果物にこれらのレクチャーがどれくらい盛り込まれたかはわかりませんが、ぜひ今後に生かしていただきたいことだと思いました。
最終審査会ではUDトークによるリアルタイム字幕を提供して開催されました(すでにCode for Japanのイベントの多くはリアルタイム字幕が付いています)。一つのチームが聴覚障害者についての社会課題に関わってくれたので嬉しく思います。そのチームメンバーの耳が聴こえない友人がこの最終審査会にUDトークがあるから参加してみることができたと言うこともきき嬉しく思いました。
#ルールが変わっただけ
Code for Japan主催の大きなイベントを2つ例として取り上げてみましたが今年は大きく「ルール」が変わった年でした。そう、ルールが変わったのです。よく現状をネガティブに捉えて「前に戻す」って言う人たちもいるけど、良い悪いで捉えてしまうと何も変わりません。あるところで「ルールが変わっただけ」と表現しているのに「なるほど」と思い時々この表現を使うことにしています。
では新しいルールのもとでイベントに情報アクセシビリティのサポートをしていくにはどうしたらいいか、もしかしたら新しい方法でアクセシビリティを提供することができるのではないか、などポジティブに捉えていくことも大事だと思います。
オンラインになり健常者の方達も「見ずらい、聴きづらい」と言う体験をともなったことで意識が大きく変わりました。来年からもまだこの社会のルールは続きますが、引き続きアクセシビリティに取り組み参加しやすいイベントを作って行けたらと思っています。