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タカハトゲームを読み解く

Last updated at Posted at 2025-07-17

前置き

このゲームではタカ派とハト派、2種類の行動をするプレイヤーを仮定する。プレイヤー間での資源の争奪の結果、世代が進むごとに**タカ派の割合がどのように変化していくのか(どのような点で安定なのか)**を考察する。

議論を簡潔にするためプレイヤーの種類は遺伝的に決定されると仮定する(タカ派の子供はタカ派)。また、このゲームでの利得は繁殖成功度(適応度)に対応する

また、この議論は基本的に同じ生物種内のものとする。(同じ種の中での攻撃的な個体と平和的な個体の数について議論しているのであって、タカとハトなどの異なる生物種の個体数について議論しているのではない。

圧倒的説明不足なのでwikipediaのリンクを貼っておく。
進化ゲーム理論タカハトゲームゲーム理論

プレイヤー

タカハトゲームでは、以下の2種類の戦略のプレイヤーを設定する。

タカ派:攻撃的で会敵時たたかう。
ハト派:平和的で会敵時にげる。

利得表

2人のプレイヤーが資源の前で出会った際の利得を定量化し、利得表で表す。

・タカ派 vs タカ派 ⇒ 争って勝った方が資源を独占する。負けた方はダメージを受ける。
勝った方は利得 V、負けた方は損失 -C を得る。

・タカ派 vs ハト派 ⇒ ハト派は逃げるためタカ派が資源を独占する。
タカ派が利得 V、ハト派は利得 0 を得る。

・ハト派 vs ハト派 ⇒ 資源を等しく分配する。
双方が利益 V/2 を得る。

したがって、それぞれの戦略が出会ったときの利得の期待値は次のようになる。

タカ派 ハト派
タカ派 $\dfrac{V - C}{2}$ $V$
ハト派 $0$ $\dfrac{V}{2}$

微分方程式

プレイヤーの割合の時間変化を示す微分方程式を求める。下記のサイトを参考にした。

次の変数について考える。
$p_i$ : 行動 $i$ をとるプレイヤーの数
$x_i$ : 行動 $i$ をとるプレイヤーの割合

マルサス係数を $λ_i$ とすると $p_i$ の増加速度は次のようになる。(マルサスモデル

$$
\dfrac{dp_i}{dt} = λ_ip_i
$$

$λ_i$ を行動に無関係な成分 $λ$ と、行動に依存する成分 $u_i$ に分解すると $p_i$ の増加速度は次のようになる。($u_i$ は集団の行動の割合に依存するので $x$ の関数である。)
このときの $u_i(x)$ が、先ほど定義した利得となる。
$$
\dfrac{dp_i}{dt} = (λ + u_i(x))p_i
$$

上記の式が成り立つと仮定すると、最終的に以下の $x_i$ の増加速度の式(レプリケーターダイナミクスの方程式)を導くことができる。(詳細は参考にしたサイトか、添付するノート1を参照されたい。)

$u(x)$ は集団の平均利得である。つまり $x_i$ の増加速度は、行動 $i$ をとるプレイヤーの利得と集団の平均利得の差に比例する。
$$
\dfrac{dx_i}{dt} = (u_i(x) - u(x))x_i
$$

定常状態の安定性

$x_i$ の微分方程式の $u_i(x)$、$u(x)$ に具体的な値を入れて計算する。タカ派の割合を $x$、ハト派の割合を $1-x$ として考える。

利得表から、タカ派の利得の期待値 : $u_h(x)$、ハト派の利得の期待値 : $u_d(x)$、全体の利得の期待値 : $u(x)$ は次のように書ける。

$$
\begin{cases}
u_h(x) = x \cdot \dfrac{V - C}{2} + (1 - x) \cdot V \\
u_d(x) = (1 - x) \cdot \dfrac{V}{2} \\
u(x) = x \cdot u_h(x) + (1 - x) \cdot u_d(x)
\end{cases}
$$

$u_h(x)$、$u(x)$ をそれぞれレプリケーターダイナミクスの方程式の $u_i(x)$、$u(x)$ に代入すると、タカ派の割合 x の増加速度として以下の微分方程式が導かれる。(詳細な計算は添付するノート2を参照。)

$$
\frac{dx}{dt}=\frac{C}{2}x(x-1)(x-\frac{V}{C})
$$

この微分方程式を解ければ、x を縦軸、t を横軸にした x の時間変化のグラフが描けるが、解くのがめんどくさい。(解けるけどもっと簡単に定性的な動態を知ることができる)

そこでx 軸に x、y 軸に dx/dt をとると以下のようなグラフが描ける。(ただしV < C)

fig_1.jpeg

グラフから 0、V/C、1 の3点で dx/dt が 0 になり定常状態をとる(x が変化しなくなる) ことがわかる。
x = 0、1 のときは、x の値が少しでも変化すると x は V/C まで変化する。一方、x = V/C のときは、x の値が変化しても V/C に戻る。
このことから、x = 0、1 のとき、x は不安定な定常状態をとり、x = V/C のとき x は安定な定常状態をとることがわかった。

ノート1

note_1.jpeg
note_2.jpeg
note_3.jpeg

ノート2

note_4.jpeg
note_5.jpeg

参考文献

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