点 $P(x_p,y_p)$ と点 $Q(x_q,y_q)$ を通る直線の方程式を求めよ、という問題は、中学数学の典型です。
シンプルな例として、$P=(1,3),Q=(2,1)$ とします。
方法1
これに対して、一番実直な解き方は以下のようになると思います。
$2$ 点の傾きは $\frac{1-3}{2-1}=-2$、点 $P$ を通る直線は $y=m(x-1)+3$ となるので、$m=-2$ を代入し、$y=-2(x-1)+3=-2x+2+3=-2x+5$
これを一般化すると以下の式になります。
y=\frac{y_q-y_p}{x_q-x_p}(x-x_p)+y_p
または、以下の式でも表せます。
y=\frac{y_q-y_p}{x_q-x_p}(x-x_q)+y_q
これらは、ある点から傾き $m$ の点をつないでいったものと解釈できます。
方法2
これは以下のように式変形することもできます。
(x_q-x_p)(y-y_p)=(y_q-y_p)(x-x_p)
ほぼ式変形しただけですが、なんとなく収まりがいいですし、何より $x_p=x_q$ のときにも成り立つという利点があります。方法 $1$ では、$x_p=x_q$ のときに傾きが定義不可能になるので、場合分けが必要になります。
これは、方法 $1$ と同様に、
(x_q-x_p)(y-y_q)=(y_q-y_p)(x-x_q)
でも成り立ちます。
しかし、この「どちらでも成り立つけど、どちらか一方を選ばないといけない」というの、なんか気持ち悪くないですか?
数学なんだから、厳密に一意に定まって欲しい!(直線は一意に定まっているのですが)
方法3
そこでこの式をもう少し計算すると、点 $P$ と点 $Q$ のどちらの側にも立たない、対称的な式が得られます。
x(y_q-y_p)-y(x_q-x_p)-x_p y_q + x_q y_p = 0
一応、検算してみます。$P(1,3),Q(2,1)$ を代入してみます。
\displaylines{
x(1-3)-y(2-1)-1\cdot1+2\cdot3=0\\
-2x-y+5=0\\
y=-2x+5
}
方法2(ベクトル的解釈)
(x_q-x_p)(y-y_p)=(y_q-y_p)(x-x_p)
これを式変形します。
(y_q-y_p)(x-x_p)-(x_q-x_p)(y-y_p)=0
\begin{pmatrix}
x-x_p \\
y-y_p
\end{pmatrix}
\cdot
\begin{pmatrix}
y_q - y_p \\
- (x_q - x_p)
\end{pmatrix}
=0
ここで、突然でてくる、
\begin{pmatrix}
y_q - y_p \\
- (x_q - x_p)
\end{pmatrix}
について考えると、これは 法線ベクトル になります。図で見るとわかりやすいですが、これは必ず直線に直交します。
よって、これを法線ベクトル $\vec{N}$ と定とすると、セクション冒頭の式は以下のように極めて完結に記述できます。
\overrightarrow{PX} \cdot \overrightarrow{N} = 0
これは、幾何的には、$P$ と $(x,y)$ を繋いだベクトルが、法線ベクトルと必ず直交(つまり、元の傾きと平行になる)ことを意味します。
方法3(ベクトル的解釈)
x(y_q-y_p)-y(x_q-x_p)-x_p y_q + x_q y_p = 0
前セクションで出てきた法線ベクトル $\overrightarrow{N}$ を用いると、以下のように表現できます。
\overrightarrow{X} \cdot \overrightarrow{N} = x_p y_q - x_q y_p
右辺の $x_p y_q - x_q y_p$ はどう解釈できるでしょうか。
これは外積の $z$ 成分と一致します。ここで、「$\times$」を、その外積の $z$ 成分のスカラーを返す演算と定義すると、
\overrightarrow{X} \cdot \overrightarrow{N} = \overrightarrow{P} \times \overrightarrow{Q}
ここで、$\overrightarrow{X}$ と $\overrightarrow{N}$ のなす角度を $\theta$ とします。
内積の定義からは、この式は以下のように変換できます。
|\overrightarrow{X}|\cdot|\overrightarrow{N}|\cdot \cos{\theta}= \overrightarrow{P} \times \overrightarrow{Q}
|\overrightarrow{X}| = \frac{\overrightarrow{P} \times \overrightarrow{Q}}{|\overrightarrow{N}|} \cdot \frac{1}{\cos{\theta}}
|\overrightarrow{X}| = \frac{\overrightarrow{P} \times \overrightarrow{Q}}{|\overrightarrow{PQ}|} \cdot \frac{1}{\cos{\theta}}
ここで、外積の大きさは、ベクトルがなす並行四辺形の面積に一致します。それを辺 $PQ$ の長さで割ると、辺 $PQ$ に下ろした垂線の長さと一致し、これは原点からの辺 $PQ$ への距離と一致します。これを $d$ とすると、以下のようにまとめられます。
|\overrightarrow{X}| = \frac{d}{\cos{\theta}}
この形に見覚えはないでしょうか。$|\overrightarrow{X}|$ はすなわち原点からの距離のことなので、極座標における $r$ と一致します。よって、極座標の直線の定義、
r=\frac{d}{\cos{\theta}}
と一致することがわかります。