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ググるだけでは伸びない?エンジニアが“暗記”も大切にすべき理由

Last updated at Posted at 2025-05-15

はじめに

「プログラミングはググればいい、暗記は不要」──。

この言葉を、エンジニアとして働いていれば聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
確かに、検索エンジンやAIを使えば、コードの書き方やエラーの対処法はすぐに見つかります。
現代において、「調べる力」はエンジニアにとって欠かせないスキルです。

しかし、それらに頼りすぎることが、かえって自分の成長を妨げてしまうこともあるのです。

本記事では、

  • ✅ なぜ「暗記」も大切なのか
  • ✅ どこまで覚えればいいのか
  • ✅ ググりと暗記のバランスをどう取るか

について、科学的な視点や現場での実体験も交えて解説していきます。

なぜ「暗記」も必要なのか 🧐

  • 結論から述べると 都度ググりながら作業すると作業効率が著しく落ちるからということになります。
  • これは単なる感覚ではなく、明確な理由があります。

<理由1>ググるという「割り込みタスク」が集中力を削ぐ 😔

たとえば、こんなことに心当たりはありませんか?

コードを書いている → わからない → ググる
→ ブラウザに切り替える → Qiitaや他の関連記事に目が行く → 気づいたら20分経ってる
→ 「あれ?何してたっけ?」とエディタに戻る

これは“よくあること”ですが、実はとても危険です。

~『プログラマー脳』(Felienne Hermans 著)より一部参照・要約 ~
ノースカロライナ州立大学のクリス・バーニン教授が、85人のプログラマーによる1万回のセッションを観察した研究によると、
作業中に割り込みが発生した場合、再び集中して元のタスクに戻るまで平均で15分以上かかることが分かっています。

加えて、「ググり」と「コーディング」は別タスクであり、脳にとっては完全なマルチタスク状態になります。
マルチタスクは一見効率的に見えて、実際には

  • ✅ 処理速度の低下

  • ✅ ミスの増加

  • ✅ 精神的疲労の蓄積

など、多くのデメリットを引き起こします。

<理由2>長期記憶を使う方が、コード理解も実装スピードも速い 🏃

人がコーディングをしているとき、脳内では主に以下の3つの記憶領域が働いています。

領域 特徴
短期記憶 数秒〜数分の一時的な記憶。容量が非常に小さく、すぐに忘れる。
長期記憶 習得・反復で定着した知識。瞬時に取り出せる。疲れにくい
ワーキングメモリ 長期記憶と短期記憶を連携させて「今この瞬間の作業」に使う領域。

図に表すと以下のような感じです。
スクリーンショット 2025-05-14 18.47.07.png

ここで注目すべきは、「ググった情報」は基本的に短期記憶にしか入らないということです。

🔁 ググる → わかる → 実装 → 数時間後には忘れる

このループを繰り返しても、知識は定着しません。
短期記憶と頻繁に連携し、情報の出し入れをすることで、ワーキングメモリが圧迫され、思考力・集中力・処理スピードすべてが低下していきます。

一方で、長期記憶に定着した知識は以下のようなメリットがあります:

✅ 必要なときに即座に取り出せる(調べる時間ゼロ)

✅ 頭が疲れにくく、長時間の作業が安定する

✅ 応用や組み合わせが効くため「設計力」や「エラー対応力」も自然と上がる

つまり、よく使うコードの「型」や「構文」を 覚えておくことは、作業効率・実装速度・思考力を最大化する“投資” になります💰

ググる、AI活用は悪ではないが使い方が重要 💡

「じゃあ調べるのはダメなのか?」と思った方へ。
答えはNO。むしろ、検索力・調査力はエンジニアの大事な武器です。

ただし、

  • ✅ 同じことを何度もググっている

  • ✅ コピー&ペーストだけで理解が浅い

  • ✅ 「調べること」が目的化している

こういった状態に陥ると、知識が積み上がらないだけでなく、思考停止状態 に近づいてしまいます。

検索やAIを活用しつつも、「何を覚え、何を調べるか」の線引きを明確にしていくことが、長期的な成長を支えるカギになります。

どの程度「暗記」すればいいのか 🔍

ここで重要なのは、「ドキュメントを丸暗記しよう」なんて話ではないということ。
覚えるべきは、あくまで実務で頻出する「型」や「基本的な文法」レベルのものです。

暗記した方がいいもの

たとえば、PHPの場合だと

  • array_map, array_filter, array_merge などの配列操作

  • foreach, for, while などのループ処理

  • if, switch, 三項演算子などの条件分岐

  • $_POST, filter_var(), isset() などのフォーム処理

  • str_replace, substr, strlen などの文字列処理

これらを「反射的に書ける」レベルにしておくことで、調べる時間・エラーの修正時間・集中力のロスをぐっと減らせます。

逆にググった方がいいものは?

もちろん、すべてを覚える必要はありません。
むしろ「暗記せず、都度ググったほうが正確な情報を得られる」ものもあります。

以下は、検索やAIを使ってもまったく問題ない代表例です:

✅ ライブラリやフレームワークの仕様変更・バージョン違い

  • LaravelやReact、Vueの新機能・破壊的変更など

✅ 初めて見るエラーや構文

  • スタックトレースやエラーメッセージから原因を特定する

✅ 挙動が不明瞭な処理

  • 言語仕様の微妙な違い、暗黙の型変換、端の扱いなど

大切なのは、「すべてを暗記する」のではなく、
“何を覚えるべきか/何は調べればいいか”の判断基準を持つこと。

これが、「ググる力」と「基礎力」のバランスを保つ上で最も重要なポイントです

正しい「暗記」と間違った「暗記」📚

  • 「暗記」における重要性について述べてきましたが、ただ闇雲に暗記すればいいという訳ではありません。
  • 以下に正しい暗記方法と間違った暗記方法について述べていきます。

正しい暗記方法 🙆‍♀️

「チャンク(かたまり)化」して「体系的」に覚える

プログラミングの基礎を覚える上で非常に有効なのが、情報を“チャンク”としてまとめて記憶することです。

人の脳は、1つ1つの断片的な情報を覚えるのは苦手ですが、関連する情報をグループ化して覚えると格段に記憶しやすくなります。

例を見てみましょう:
以下の文字列を3秒で覚えてください。

acp  qwdsw sqrwaqwer.

……どうでしょう? おそらくほとんどの人は無理ですよね。
それぞれが意味のないバラバラの文字列なので、脳が“整理”できないのです。

では以下の例はどうでしょうか?

He likes baseball.

これはすっと頭に入ってきたのではないでしょうか?

この違いは明確です。

  • 1つ目は【17文字を17個の情報】として処理する必要があり
  • 2つ目は【意味のある3つのチャンク(He / likes / baseball)】として処理できるからです。

おすすめ:基礎事項を整理したプログラミングノートを作る

チャンク化した知識を“整理して覚える”ためにおすすめなのが、自分専用のプログラミングノートを作ることです。

ノート作成のポイント📕

  • 🧹 項目ごとに体系化させて書く
  • ✍️ 自分で説明できる言葉で書く(コピペ禁止)
  • 🔁 間隔をあけて何度も復習する(実務で出てきたタイミングがベスト。)
  • 👨‍💻 実務でアウトプットした際に、理解が深まった場合は追記する

コツコツ蓄積した「自分の言葉によるチャンク」は、ググるよりも速く、確実に、成長スピードを高めてくれるでしょう💪

以下参考までに載せておきます。

間違った暗記方法 🙅‍♀️

1. 理解を伴わない丸暗記

例えば以下のような覚え方をしてる場合

array_filter // → 配列をフィルタリングして新しい配列を作る

このように、あいまいなニュアンスで記憶しているだけの状態は要注意です。
“なんとなく覚えている”ように感じても、

  • ✅ コールバック関数が必要なことを忘れる
  • ✅ true を返すものだけ残ることを誤解している
  • ✅ 実際の引数の順番を取り違える

など、応用が効かず手が止まる原因になります。

正しい暗記とは、「意味と構造を理解し、必要なときに応用できる形で覚えること」です。
たとえば、次のようなコードに対する理解を考えてみましょう。

これを 単に「配列をフィルターする関数」 と覚えるのではなく、
以下のような形で

array_filter($array, $callback);

// 例
$numbers = [1, 2, 3, 4, 5, 6];

$evenNumbers = array_filter($numbers, function($n) {
    return $n % 2 === 0;
});

print_r($evenNumbers);

// 返却値
Array
(
    [1] => 2
    [3] => 4
    [5] => 6
)

  • ✅ 第一引数の $array に対して
  • ✅ 第二引数の $callback を使い
  • ✅ 各要素を判定し、trueを返した要素だけを抽出する関数

と、どの引数が何を担っていて、結果としてどうなるのかを説明できる状態であれば、それは「理解して覚えている」と言えます。

2. 実務でほぼ使わない知識を優先して覚える

たとえば、アルゴリズムのマニアックな細部や、年に1回使うかどうかの低レイヤAPI仕様など。
「知っていること」自体は悪くないのですが、優先度の低い知識にリソースを割きすぎると、本当に必要な知識が身につかなくなります。

また、知識は使わなければ忘れます。

🧠 正しい姿勢:「実務で頻出する基礎」→「実務でたまに使う応用」→「趣味・興味で深掘り」の順で覚えていくことが大切です。

「実務で使ってるうちに自然に覚えるだろ」論に対して🧑‍⚖️

これは一理あります。実際、実務で何度も手を動かし、繰り返し使う中で「自然と覚える」ことは確かにあります。

しかし、基礎的な知識が頭に入っていない状態でこなす実務は、以下の理由により成長効率が非常に悪くなります。

  1. 基礎がわかっていないため、コードの意味が曖昧なまま進めてしまう

  2. 曖昧な理解のままコピペやフレームワークに依存して 「よく分からんが何か動く」 実装

  3. エラーの原因も理解できず、場当たり的にググって 「よく分からんが何か動いた」 で解決

  4. 本質的な知識が身につかないので、また同じことを繰り返す

実務は 「学びの場」 というより、「価値を提供する場」 です。
その中で初学者が成長するには、あらかじめ 最低限の基礎 を頭に入れておき、実務を通じてそれを強化していくという流れが理想です。

土台がなければ、経験を積んでも「応用が効かない」「なぜこうなるのか説明できない」状態が続きます。
つまり、“経験しているだけ”ではスキルにはならないのです。

おわりに

「ググればいい」は間違っていません。
でも、「それだけでは成長できない」のもまた事実です。

プログラミングの世界は広く、正解も日々変わっていきます。
だからこそ、 調べる力(ググり力) は必要不可欠。
でも、それと同じくらい大切なのが、 手を止めずに書けるだけの基礎力(暗記力) です。

特に、配列操作・条件分岐・ループ処理といった頻出パターンを「反射的に書ける状態」にしておくことで、

コードの読み書きがスムーズになり

エラー対応や設計判断も速くなり

結果として実務での“信用”も高まっていきます。

逆に言えば、基礎が曖昧なまま現場に出ると、
“動くけど、なぜ動いているかは分からない”
“とりあえず動かしたが、毎回同じところでつまずく”
という状況から抜け出せなくなります。

だからこそ、今こそ「基礎に戻る」ことが、遠回りに見えて一番の近道です。

✅ ググってばかりのコードを書いていた自分に気づいた人

✅ 何度も同じことを調べていることに焦りを感じた人

✅ 「できているつもりだった」自分を変えたい人

まずは、よく使う構文をひとつ、「何も見ずに書けるか?」と問い直してみてください。
そこから、自分だけの“地力”が育っていきます。

地味な基礎を、積み重ねる力。
それが、これからのエンジニア人生を支えてくれる、確かな武器になるはずです。

参考

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