英国陸地測量部のベクトルタイル Open Zoomstack
英国陸地測量部は OS Open Zoomstack trial の中で OS Open Zoomstack Vector Tiles のマニュアル を公開しており、その13ページでデータスキーマを公開しています。その内容を解釈してみようと思います。
彼らが公開しているのは 2.1GB の mbtiles ファイルで、ズームレベルとしては 5 から 14 をカバーしています。必要最小限のところを、おそらく属性は最小限にして作ったものだろうと思います。あまり細かいデータを入れて行くと、z=14ではもたないかもしれませんからね。
空間的には、グレートブリテン島の分を公開しています。グレートブリテン島は、本州よりも少し小さいくらいの大きさです。
海(sea)
ズームレベル5から14まで入っているそうです。属性はないそうです。
道路(roads)
type, name, number, level を属性として持っており、次の8つの feature type に分かれているとのこと。
高速道路(Motorway)
ズームレベル5から14まで入っています。
主要道(Primary)
これも、ズームレベル5から14まで入っています。
A道路(A Road)
ズームレベル8から14まで入っています。
B道路(B Road)
ズームレベル10から14まで入っています。
小道路(Minor)
ズームレベル11から14まで入っています。
地区道路(Local)
ズームレベル12から14まで入っています。
制限付き道路(Restricted)
地区道路と同じく、ズームレベル12から14まで入っています。
トンネル(Tunnels)
ズームレベル9から14まで入っています。
鉄道(rail)
type を属性として持っており、次の4つの feature type に分かれているとのこと。やや大きめのズームレベルにしか入っていません。英国において鉄道は、小縮尺で骨格を示す地物ではないのかもしれません。そういえば、あまり新幹線然とした新幹線はないのかもしれませんね。あくまでローカルな公共交通であるという性格が強いのかもしれません(要確認)。狭軌を例外として、基本的にはズームレベル10から14で扱う、という設計ですね。
複線(Multi Track)
ズームレベル10から14まで入っています。
単線(Single Track)
ズームレベル10から14まで入っています。つまり、複線と単線は特に表示ズームレベルは差別はないということですね。
狭軌(Narrow Gauge)
ズームレベル14にのみ入っています。非常に低い扱いで、こんなに低い扱いを受けているのは、他には高速道路のジャンクション(Motorway Junctions)しかありません。
鉄道トンネル(Tunnel)
ズームレベル10から14に入っています。通常の鉄道と同じ扱いであり、道路のトンネルよりは一段低い扱いです。
水面(surfacewater)
属性は持っていません。ズームレベル6から14に入っています。ズームレベル5でのみ消える、ということですね。
水路(waterlines)
属性は type を持っています。
表層水系線(Surface Water Lines)
ズームレベル8から14に入っています。
平均高潮(MHW)
ズームレベル9から14に入っています。
平均低潮(MLW)
ズームレベル9から14に入っています。
前汀(foreshore)
ズームレベル9から14に入っています。属性は持っていません。
森林地(woodland)
属性は持っていません。ズームレベル6から14に入っています。
用地(sites)
属性 type を持っています。
航空用地(Air Transport)
ズームレベル11から14に入っています。
教育用地(Education)
ズームレベル11から14に入っています。
医療用地(Medical Care)
ズームレベル11から14に入っています。
道路交通用地(Road Transport)
ズームレベル11から14に入っています。
水上交通用地(Water Transport)
ズームレベル11から14に入っています。水上交通用地と訳しましたが、水中交通が入っていないことは確認していません。
緑地(greenspaces)
属性 type を持っています。その値域については定義を把握していません。
ズームレベル10から14に入っています。
送電線(etl)
Electricity Transmission Line の頭字語で etl なんだと思います。属性は持っていません。
ズームレベル12から14に入っています。
等高線(contours)
属性は type と value を持っています。普通ですね。主曲線と計曲線とで、配置するズームレベル範囲を違えるという設計をしています。
主曲線(Normal)
ズームレベル12から14に入っています。送電線と同じ配置ですね。
計曲線(Index)
ズームレベル9から14に入っています。index というのは、数える、指標、指示するもの、という意味であり、その index が和訳されて計となったのですね。
建物(buildings)
ズームレベル5から14に入っています。属性はついていません。
テストサイトを見るに、非常にうまく地図編集されていて、同じ building レイヤでありながら、個別の建物から総描建物、そして建物密集域データに連続的に切り替わるという優秀な設計だと思います。属性をあえてつけないことにより、アイデンティティの問題を回避しつつ、軽量化も実現している、ということだと思います。
鉄道駅(railwaystations)
属性に type と name を持ちます。こちらも鉄道と同じく、すべてズームレベルが12から14と、扱いが低いように思います。
鉄道駅(Railway Station)
鉄道およびロンドン地下鉄駅(Railway Station and LUS)
LUS が何を意味するか、少し調べても分からなかったのですが、LU といえば London Underground かと思われるので、こういう風に訳してみました。
ロンドン地下鉄駅(LUS)
LRT駅(LRTS)
これも、実際裏を取ってはいないのですが、LRT は Light Rail Transit のことかと思われるので、こういう風に訳してみました。
ロンドン地下鉄およびLRT駅(LRTS and LUS)
LRT及び鉄道駅(LRTS and Railway Station)
国立公園(nationalparks)
属性はついていません。ズームレベル5から14に入っています。国立公園の境界がしっかりと定まっているということなのでしょうね。でも、名前は割り当てられておらず、名前は地名注記に任されているようです。
空港(airports)
属性 name を持っています。ズームレベル10から14に入っています。
境界(boundaries)
国境しか入れていないという豪快な設計です。グレートブリテン島の国境というのは、何を意味しているのか、機会を見て見て見たいと思います。
国境(National)
属性 type を持っていますが、たぶん National という値が入っているのだと思います。ズームレベル5から14に入っています。
→実際のデータを見てみると、イングランドとスコットランドの境界に濃い線が出ています。これが National の boundary なのかもしれません。あとで裏を取ってみたいと思っています。
地名(names)
属性としては、type と name が入っています。明快ですね。
国(Country)
ズームレベル5から14に入っています。大きなズームレベルに入れる必要があるのだろうか。
実データを見てみると、ENGLAND, SCOTLAND, WALES という3つの注記に使われているようでした。
首都(Capital)
ズームレベル5から14に入っています。本当にズームレベル14にも入っているのだろうか。
国立公園(National Park)
ズームレベル6から14に入っています。ズームレベル5では注記が混むのかもしれませんね。
市(City)
ズームレベル6から14に入っています。
町(Town)
ズームレベル7から14に入っています。
村(Villege)
ズームレベル9から14に入っています。町と比べると、ズームレベル8を飛ばしました。
集落(Hamlet)
ズームレベル9から14に入っています。村と同じです。
小集落(Small Settlements)
ズームレベル12から14に入っています。なぜかここは複数形です。
郊外(Suburban)
ズームレベル10から14に入っています。
森林地(Woodland)
ズームレベル11から14に入っています。
地形(Landform)
ズームレベル11から14に入っています。
土地被覆(Landcover)
ズームレベル11から14に入っています。
水系(Water)
ズームレベル11から14に入っています。
緑地(Greenspace)
ズームレベル13から14に入っています。
用地(Sites)
ズームレベル13から14に入っています。
高速道路のジャンクション(Motorway Junctions)
ズームレベル14にのみ入っています。狭軌の鉄道と同じ、低い扱いです。
感想
かなり、個性的な設計であるように見えました。基盤地図情報項目の地球規模の標準化など、実際には無理なのだ、と英国が言っているように感じられます。地物は人々の土地に対する見方、つまり社会制度を反映するのです。
情報項目の国際標準化は、社会制度の国際標準化を前提としますが、社会制度の国際標準化を望むような流れはそれほど強くないのではないでしょうか。
情報項目は多様であって良い、むしろ多様であるべきなのだ、と英国は言っているように見えます。
あと、水路関係が強いですね。歴史的経緯でしょうか。