はじめに
昨日は、 @helicalgear さんによる、「コントリビューションしてみたよ!」でした。ふとしたきっかけで見つけてしまった不具合。バグ報告をして、そして直してみるという姿勢はとても素晴らしいものです。これこそオープンソースの醍醐味。予期せぬ何かに遭遇したら、こちらの記事を参考に、ぜひ貢献してみましょう。
さて、今年は、カレンダーの記事が中々埋まらず、同じ人が連続投稿というのが目立ってきています。世の中のトレンドが別の方向に流れていたり、人手不足で忙しかったり、色々要因もありますが、Qtがイマイチ知られていないことも要因にあるかもしれません。
Qtは、アプリケーションフレームワーク、ミドルウェアという立ち位置のため、アプリケーションがQtで作られているという話はあまり表にでてきません。Qtに限らず日本でミドルウェアに関わっていると、企業さんは「採用実績は?」と聞いてくるのに、自分が使っていることはオープンにしないケースによく遭遇します。
結果として、使ったことがある人、何かで関わったことがある人以外は、なんとなく聞いたことがあるで終わってしまうのですよね。そんなわけで、今回は、技術ブログ・・・というには若干弱いですが、オープンソースか否かにかかわらず、Qtが利用されているのを見かけた、聞いたことがある、ディレクトリ下にひっそりとQtライブラリの入っている、そんなツール類を並べてみたいと思います。
オープンソースで貢献してくださる方を募集しているものも多々ありますので、興味があるものを見つけたら、ぜひお試しください。
3dsMax
Autodesk社の3DCG用ソフトウェアで、CADとの連携やアニメーション制作向けの機能が豊富とのことです。@sho7noka さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
Adobe Photoshop Elements
Photoshopの廉価版のほうですね。Elementsは所有していないので、確認はしていません。過去にはPhotoshop Albumというのもあって、そちらもQtを使っていたらしいです。
Bitcoin Core
今話題のBitcoinですが、ビットコインのクライアントであるBitcoin CoreにQtが利用されています。昔はBitcoin Qtという名前だったそうです。もう少し早く知ってれば安いうちにおやつ資金のために手を出してみたり投資してたかもしれないのですが・・・。そうしたら、もっと美味しいおやつを勉強会にがんがん提供できていたかもしれないのに残念です。
Calibre
電子書籍管理・変換ツールです。登録した電子書籍を検索したり、メタデータを追加したり、評価などを書き込んでおくことができます。また、TXTやPDF、HTMLファイルを電子書籍形式に変換する機能もあります。
CMake
メタビルドシステムのCMakeでもコンフィグレーションを行うGUI周りがQtで作られています。
Qt CreatorもCMakeのサポートがある程度使えるようなってきましたし、海外のプロジェクトだとQtを使ったプロジェクトもCMakeを採用しているものが多いそうですよ。
@yuki12 さんから情報をいただきました。ありがとうございます。
CuteMarkEd
Markdownエディタです。シンプルで良いので筆者は割と愛用しているのですが、ここ最近開発は止まっている模様。
EqualizerAPO
Windows向けのイコライザソフトのようです。現在外出先でWindows VMがないのでスクリーンショットはありませんが、エディタ周りとかにQtのコードが使われていました。
@yuki12 さんから情報をいただきました。ありがとうございます。
FireAlpaca
PGN社さんが提供されている和製のペイントツールで、Mac, Windowsどちらでも使えるフリーペイントツールです。10ヶ国語に対応されており、シンプルで扱いやすいです。難しすぎず、それでいて必要と思える機能が用意されている良いツールです。
DMMブックス
DMMの提要されている電子ブックリーダーです。諸事情によりスクリーンショットはありません。察して下さい。@yuki12 さんから情報をいただきました。ありがとうございます。
Dropbox
Dropboxについては、筆者の方ではQtライブラリのインストールを確認できていませんが、公式サイトのヘルプでQt 5.5を利用している旨記載されていました。
@yuki12 さんから情報をいただきました。ありがとうございます。
Google Earth (デスクトップ向けの旧バージョン)
いつの間にかChromeで見れるようになってしまって使われなくなりましたが、みんなをあっと言わせたあのGoogle EarthにはQtが利用されていました。
Google日本語入力/Mozc
Googleさんの開発された日本語入力も、ダイアログ部分がQtで開発されています。
@yuki12 さんから情報をいただきました。ありがとうございます。
Guitar
@soramimi_jp さんの作られたGit GUI Clientです。昨年のQt Advent Calendarや、今年のGit Advent Calendarで記事にされています。
hermit4は、古い人なのでコマンドライン派なのですが、新しく覚えさせる人相手だとGUIがあると敷居がぐっと低くなって良いので、この手のツールはありがたいです。
手元のバージョンは古いので、スクリーンショットは、ぜひ今年のそらみみさんの記事を御覧ください。
Houdini
Side Effects Software社が開発・販売している3DCGソフトウェアです。高度なパーティクル機能があり、映画やTVのVFX制作によく利用されているそうです。 @sho7noka さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
HTC Vive / SteamVR
HTC Vivi on Steamというやつでしょうか。そのソフトウェアにもQtが採用されているそうです。残念ながらもっていないので、確かめてはいませんが、@yuki12 さんから情報をいただきました。ありがとうございます。
Qtの方でもVRやARについてのサポートも検討されてはいるようなのですが、中々追いついていないのが実情のようです。面白そうな分野なので、今後に期待したいところです。
KDE
GNOMEと並ぶX Window上で動くデスクトップ環境です。Linuxを触ってらっしゃる方は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
KDE4の時は色々トラブルがあって少し敬遠してましたが、KDE Plasmaになって軽快になりましたよね。え、知らない?もしよければ、Kubuntu辺りを入れて触って見て下さい。
Kindle
ほとんどの方がご存知のAmazonの電子書籍ですが、macOSにインストールしたKindleアプリは、Qtのライブラリが同梱されていました。@tetsurom さん情報で、Windows版もQtが使われているとのことです。
Kobo
現在は楽天の電子書籍端末となっているkoboですが、こちらもQtが利用されています。
情報は、@bluepicky さんから頂きました。ありがとうございます。
Krita
Kritaは、前述のKDEプロジェクトが提供しているフリーのペイントツールです。こちらのツールはフリーながら、かなり高機能なペイントツールです。素人のhermit4からすると少し難しすぎる気もしますが、そこらの無償ツールだと機能が足りないとお嘆きの絵師の方は、ぜひ一度お試しください。
LeME
日本の誇るQt Championの一人、理ろぐの理音 伊織先生作の電子書籍ファイル「EPUB」作成ソフトウエアです。
伊織先生やhermit4は、同人誌を書く時にレビューのしやすさからWordを使っていましたが、電子書籍化が頭痛のタネでした。良くあるツールを使うと、画像化された残念な電子書籍になってしまうのです。
そんなわけで、先生がカッとなって作られたのが、このソフトです。
非常にシンプルな操作で、さくさくっと電子書籍化できてしまいます。
なお、今年の窓の杜大賞候補作品にノミネートされているので、こちらの記事もぜひご覧下さい。
LINE
最近では知らない人のいないSNSアプリですが、デスクトップ向けのアプリでQtの利用が確認されているそうです。諸般の事情でスクリーンショットはやめておきます。いえ、友達はいるんですよ、LINE使ってないだけで・・・。なお情報は、@bluepicky さんから頂きました。ありがとうございます。
Live2D Euclid
Live2Dは、いま世界中のゲームメーカーが注目するエンジンで2Dの絵をそのままに立体的に動かす魔法よのうなエンジンです。Cubismの方JDKが使われていましたが、EuclidにはQtのライブラリが同梱されています。
出たばかりの頃にWindows版を試用してみましたが、macOS版はまだのようなので、スクリーンショットはありません。
Maya
Autodesk社のMayaは、ハイエンドの3DCGソフトウェアです。MayaがQtを採用したこと、C++ということで、ゲーム業界のツール類はQtを使って作ることも多いのだとか。なにせ表になかなかでてこない業界の方々なので、詳しいことは不明ですが、Qtのあれこれを知ってる人がごっそりと生息している分野なのかもしれません。
お値段が高すぎて手がさせないので、スクリーンショットはありません。
MediBang Paint Pro
Fire Alpacaの作者さんが、クラウドを使ったイラストやマンガのチーム制作向けにFire Alpacaをベースに作成されたソフトウェアです。情報は、@bluepicky さんから頂きました。ありがとうございます。名前が変わってリリースされていることすら知らなかった・・・orz
Netflix
最近は日本でも名前を聞くようになってきた、アメリカの映像ストリーミング会社ですね。そこが提供するプレイヤーにQtが採用されており、ある時期のあるAndroidにQtが載せられて一部の組み込み系の人たちに驚愕を与えたということがあったとかなかったとか。
数年前のQtのイベントでも登壇されていましたが、現在もクライアントアプリがQtで作られているのかどうかは不明です。
Nuke
The Foundry社が開発・販売するデジタル合成ソフト。映画やテレビのポストプロダクションに使われているそうです。 @sho7noka さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
OneDrive (macOS版)
Microsoft Officeは、macOSやiOS版も公開されていますが、その中のクラウドドライブ用ツールOneDriveはQtで作られています。色々悪評も多いツールなのですが、マイクロソフトさんには頑張っていただきたいです。ほんと、macOSメインで使っているので、落ちると困るのです。
Origin
Origin Gameで提供されるOrigin クライアントソフトウェアがQt製だとのことです。こちらもSSDの空き容量の関係でインストール調査まではできていませんが、
@yuki12 さんから情報をいただきました。ありがとうございます。
OpenToonz
イタリアのDigital Video社が作ったツールをスタジオジブリがカスタマイズして使っていたToonzをドワンゴが2社の協力してOpen化したアニメーション制作ソフトです。
アニメーション製作に興味がある方は是非触って見て下さい。
Oracle VirtualBox
hermit4はVMWare派なのでインストールはしませんでしたが、仮想化ソフトのVirtualBoxもQtが使われていました。ソースコードの方を確認しました。
@yuki12 さんから情報をいただきました。ありがとうございます。
PLZ-5W
菊水電子工業さんの直流電子負荷装置もQtを採用していると聞いています。
計測器系はリッチなUIを必要とするものも多いのでQtが向いている環境ですよね。
技術系の展示会に行くと、計測器や医療機器系のUIが飾ってあったりもするので、その手の機器の表示等にも色々使われていそうなのですが、流石にIntelさんと違ってQt入ってる的なCMはないので、どこに使われているやら・・・。
QGIS
オープンスースの地理情報システムです。地理情報システムの閲覧、編集、分析機能を有していて、Qtが利用されています。
手元にはインストールしていないので、気になる方は、本家のサイトをご覧下さい。
QGROUNDCONTROL
MAVLink対応ドローンの飛行制御とミッションプランニングツールです。
QtWebService
@task_jp さんの作られているQMLを使ってWebアプリケーションを作れるWebサーバーです。
代表例としては、日本Qtユーザー会のWebページ等がこちらで運用されています。
詳しくは、5日目の記事で解説されていますので、興味があればそちらをご覧下さい。
Qucs
Quite universal circuit simulatorのQucsです。回路シミュレータSPICEのオープンソース実装の一つで、グラフィカルなインターフェースを持っており、Qtを使って実装されています。
機能も豊富で、メニューも日本語化されており使いやすいので、電子回路に興味がある方は、是非お試し下さい。
RapidCopy
RapidCopyは、Windows向けの高速コピーツールFastCopyをmacOS向けに移植したシェアウェアです。映像関係の会社の方が、macOSで大きなファイルのコピーを行っているとトラブル事が多く、ベリファイと差分コピー機能つきのものが欲しいとFastCopyをベースにmacOS向けに移植したそうです。
お仕事で作ったツールですので、macOS版は有償でAppStoreに公開されていますが、Linux版はGithubにソースコードごと公開されています。
SPIDER
いつも、Qt勉強会の会場を貸して下さるPTP社さんの製品で全チャンネル録画サーバーのSPIDERは、Qtを採用されている製品です。
家庭向けはまだ販売されておらず、法人向けだったかと思いますが、何がすごいって、CMの内容も含めて出演者や時間、関連情報のデータベースも提供されていて、誰それの出演しているCMみたいな方法で録画されている中から検索が可能な優れものです。
Scribus
オープンソースのDTPソフトウェアです。高度なページレイアウト機能、組版などの機能をもち、新聞、パンフレット、会報、冊子などの制作などに利用できます。情報は、@bluepicky さんから頂きました。ありがとうございます。
Telegram
クロスプラットフォームのインスタントメッセージシステムです。メッセージ送信の高速で、指定した時間でサーバーからデータを消すメッセージを作れたり、LINEのようなスタンプが用意されています。クライアントコードはオープンソースでQtが利用されており、サーバーコードは非開示というスタンスです。
TeXworks
TeX向けの統合開発環境です。多くのTeXディストリビューションに標準で含まれているそうですので、TeXを利用されている皆様には愛用されているかと思います。情報は、 @wktkshn さんに頂きました。ありがとうございます。
Tesla Model S 車載UI
Wikipediaに書いてあったので既出ということで、書いておきましょう。テスラのModel SのUI系に採用されているとのことです。近年、The Qt Companyは車載系に力を入れてきているので、今後Qtを採用した車が欧州系を中心に出てくるかもしれませんね。
日本のメーカーさんも採用しだしたら、日本のQtももっと盛んになるのでしょうけどねぇ。
VLC media player
VLCはフリーなマルチプラットフォーム対応のマルチメディアプレイヤーです。非常に多くのコーデックを内蔵しているのが特徴で、非常に多くのプラットフォームをサポートしています。
Wireshark
Wiresharkは、ネットワークプロトコルアナライザです。筆者のような古い人はEtherealの名前の方が覚えがあるとは思うのですが、作者が退職時に勤めていた会社に商標が残ってしまって、名前を変えたそうです。
かつては、GTKで作られていましたが、その後Qt版のGUIが追加、現在はQtのGUIに置き換わっています。
情報は@tenmyo さんに頂いていたのですが、年明け早々体調を崩してすっかり更新が遅くなりました。ごめんなさい。
まとめ
ざっと著名なものと、hermit4が利用しているものと、開発者の顔をしっているものを混ぜ合わせてアルファベット順に並べてみました。どうでしょう、気になるもの、使って見たいもの、開発に参加してみたいものはあったでしょうか。
今年は年明けの休みが長いようですし、寝正月にならないよう、気になるどれかを使ってみるなり、開発に参加してみるなりしてみませんか。
いや、おまえ、このソフトを忘れているぞ!とか、俺のソフトウェアも載せろ!というご意見などは、ぜひコメントしておいてください。手が空いたら反映します。
明日は、引き続きhermit4が、Qt Remote Objectを少し触ってみてチュートリアルの解説とかしてみたいなと思っていますが、まだ何も手をつけていないのでどうなることやら・・・。あまり期待せずお待ちください。