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Happy ElementsAdvent Calendar 2020

Day 11

ホプまんを腐らせた話

Last updated at Posted at 2020-12-10

はじめに

Happy Elements Advent Calendar 2020 11日目の記事です。

「ラストピリオド」エンジニアの後藤と申します。

ラスピリでは、2020年10月に約2年ぶりに新しいAP回復アイテムを追加しました。

ホプまん(生)

スクリーンショット 2020-12-06 12.34.31.png

ラスピリでは初めての、利用期限があるAP回復アイテムです。

私のところに開発タスクとして依頼がきた際は、「利用期限付きのホプまんを開発する」以外のことは決まっていませんでした。詳細な情報は何も決まってなかったので、すごいワクワクしていたのを覚えてます。

「利用期限があるってことは消費期限があるってこと?」
「生もののホプまん?」
「生まんってこと?www」
「ホプまん(小)とかホプまん(特上)に合わせると、ホプまん(生)かな?」
「ホプまん(生)www めっちゃおもろいw」

みたいなやりとりをデザイナーさんとしていました。

この時点でふざける方向に振り切った方がユーザーにも受けるだろうなーと感じていて、思いっきり遊んでやると決めてました。

消費期限が切れたらどうなるの?

仕様がふんわりしていたので、消費期限を越えた後の仕様が決まっていませんでした。

消費期限が過ぎると、破棄されるのが一番簡単な実装でした。腐らせる案もありましたが、余計な処理が必要になる割に得られる効果が不明なので、実装する方向に力が働いていませんでした。最短ルートで実装を行うと、

ただし、私のなかではふざけてやると心に決めていたので、腐らせることにしました。

ホプまん(腐)

そうして出来たのがこちら。

スクリーンショット 2020-12-06 12.43.48.png

リーダーに無理を言って承認をもらい、イラストレーターさんに腐ったホプまんを描いてもらって、ホプまん(腐)が完成しました!

ユーザーの反応

リリース直後はホプまん(生)という直球なネーミングやこれまでのホプまんはなぜ腐らないの?といったリアクションが見られました。また、「消費期限過ぎたら腐るのかな?」という声もあり、腐るようにしておいてよかったな、1ヶ月後が楽しみだな、という気持ちになりました。

消費期限が過ぎた後は、ユーザーからホプまんが腐りました!という報告をちらほら見かけるようになりました。開発の遊び心を楽しんでもらえたようで嬉しくなりました。

ホプまんを腐らせた理由

ここからが本題です。

今回の開発過程で重要なのは、「ホプまん(腐)の実装で得られる効果は何なのか?」という点です。

データ偏重型組織の場合では必ずこうした施策を実施する際に「それ効果あるの?」と問われるかと思います。多くの場合、効果が見込めないものや効果が言語化できないものはお蔵入りになることになります。

ホプまん(腐)の場合も、期限が切れたホプまん(生)を回収して、同数のホプまん(腐)を配るという、無駄な処理を実装する以上、それに見合う効果が必要になります。

結論からいうと、ホプまんを腐らせることでファンベースにおける情緒価値に寄与するという効果が見込めます。

ファンベースと情緒価値

ファンベースとは、企業やブランドが大切にしている価値を支持する「ファン」を増やしていくことで企業価値の向上につなげていくという考え方です。

その中で情緒価値とはユーザーに「ラスピリというアプリが好き」と思わせる価値を指します。

対極の言葉として機能価値があります。ゲームアプリで言えば、「ゲーム性がおもしろい」とか「操作性がいい」といった価値になります。機能価値が模倣可能な価値であるのに対し、情緒価値は模倣できない価値となっており、超成熟市場においては機能による差別化が見込めず、情緒価値を強めていくのが有効とされています。最近の話で言えば、twitter のフリート機能が機能価値の例として分かりやすいかと思います。(Instagram のストーリーズ機能の模倣)

さて、繰り返しになりますが、ホプまんを腐らせることは情緒価値に寄与する効果が見込めます。

ホプまんを腐らせることで売上やユーザー数が直接増加することはないですが、「ラスピリ運営は遊び心がある」というメッセージを伝えることができます。こうしたメッセージを継続的に伝えることで、ユーザーを喜ばせたり、新たにファンを作ることに寄与しています。そして、小さな施策の積み重ねが「ラスピリというアプリはいつもワクワクを提供してくれるから好き」というブランド価値を形成することに繋がり、中長期的な価値を生み出すことに繋がると信じています。

ゲーム開発においても、膨大なゲームログを用いたデータ分析を背景に意思決定がされることが増えてきました。そんな中、情緒価値に繋がる施策はどうしてもデータとして効果が見えにくいため、軽視される傾向にあると感じています。ソーシャルゲーム業界は依然として、数の力学による運営が主流ですが、今後はファンベースを軸とした運営方針が主流になり、情緒価値にどれだけインパクトを与えられるかが施策を決定する上で重要になると考えています。

アプリ運営をしていく上で大切なこと

アプリを運営していく上で、新機能開発や不具合解消といった開発タスクを数多く行うことになります。その際に、各タスクに定められた要件を満たすだけでは不十分だと感じています。

新機能の開発は、その機能が「ユーザーから要望があった機能」や「他アプリでは当たり前に実装されている機能」であった場合、ユーザーに驚きを提供することはできません。不具合の解消についても同様で、ユーザーから要望があった機能を実装するだけではユーザーの期待を越えることはできません。

そのような「無難な」開発を続けていると、ユーザーはアプリに変化があったとしても当たり前の事として捉え、日々のルーティンとしてアプリに滞在しているだけになってしまいます。熱狂的なファンにすることができていないので、より魅力的なアプリがリリースされてしまえば、すぐに離れていってしまいます。

ファンベースの考え方に照らし合わせると、機能を開発する際は「ユーザーに驚きを与えることができているか」「ユーザーをワクワクさせることでできているか」といった評価軸が必要になります。常にユーザーの期待を越えることができれば(とても難しいことではありますが)、多くのファンを獲得することができます。逆にユーザーの期待を下回ることが多くなってしまうと、ユーザーの心を掴むことは難しくなってしまいます。

ゲームアプリはイラストレーターやライターといったクリエイティブ職の力を借りることができ、他のアプリに比べるとユーザーに驚きを提供しやすい領域だと感じています。メインストーリーでは常に予想を越える展開をライターさんに書いて頂いていますし、毎月実装されるコールではイラストレーターさんに魅力的なユニットを描いて頂いています。エンジニアも負けていられません。チーム一丸となって、「どうやってユーザーの期待を越えられるか」を考えながら、開発に取り組むのはすごく楽しいことです。これからもユーザーを楽しませることを忘れずに開発に取り組みたいと思います。

ホプまんを腐らせた話を通じて、その楽しさが伝われば嬉しいです!

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