はじめに
職場の社内セミナーでShopifyの使用感等についてレクチャーがありました。
管理画面を見て私はふと思いました、「WordPressっぽいなぁ」と。
CMSなんだから見た目は似たり寄ったりになるだろと言われればそれまでなのですが、そういえば、WordPressにもECサイト構築するプラグインあったよなぁと。
「あれ、じゃあ、WordPressでもよくね?」
そう思いました。
でも、これだけ話題になるならば何か差異があり、特長があるはず。
グローバル用途のCMSとECサイト構築向けのSaaSを比べるのは野暮な話かもしれませんが、WordPressと、Shopifyの特長は何なのか、調べてみました。
それぞれのサービス
Shopifyとは
Shopifyは、ECサイトを構築するためのSaaS型プラットフォームです。
世界中でサービス展開をしており、日本にも2017年に上陸、多くの有名企業にも採用され、全世界で流通総額2000億米ドル超えのサービスとなっています。
SaaSですのでサーバ等は準備する必要がなく手軽にすぐ始められ、料金はサブスク方式でイニシャルコスト・ランニングコスト共に抑えられており、これだけ手軽でいて、デザインは高品質、決済方法も100種類以上対応しているなど、高機能です。
また、Shopifyアプリを導入することで機能拡張を行うことができ、顧客体験を向上させることができます。
サイト構築代行、アプリ開発などは、Shopifyパートナーたちによって行われており、マーチャントを支援するという立場で誰でも参画することができます。このコミュニティが活発なんだとか。
WordPress(w/ WooCommerce)について
一方WordPressは言わずとしれたCMSなので説明は省きますが、有名なプラグインの一つにWooCommerceがあります。
これは、WordPressでECサイトを構築するためのプラグインで、これまた世界中で利用されています。
WordPress環境の構築を自分でできるならプラグインも無料なので、実質0円でECサイトが出来上がりますし、テーマも豊富です。
ただし、安全なWordPressの環境を構築するには、サーバ用意して、Linux入れて、PHP入れて、MySQLかMariaDB入れて、Apacheかnginx入れて、ドメイン取得してきてDNSで紐付けて、HTTPS対応して、セキュリティ対策して、WordPress入れたらSEO対策のプラグイン入れて、などなどエトセトラ、やらなければいけないことがいっぱいです。
しかしながら、WordPressにもShopifyと同様にSaaSであるWordPress.comのeコマースプランなるものがあります。こちらもWooCommerceベースで、これに加入すればサーバレスで始めることが可能です。
比較
シェア
2021/1/19現在、CMSのシェアは以下の通りになっています。5位までをグラフにしてみました。現在の推移を確認したい方はこちら。
CMS | シェア |
---|---|
WordPress | 39.7% |
未使用 | 38.0% |
Shopify | 3.2% |
前見たときは、未使用が一位だった気がする…と思い過去データを覗くと、去年の12月にWordPressが逆転勝利していました。純粋にすげえ。さすが天下のWordPress様です。
しかし、Shopifyも既に4位以下を引きはなして、3位まで来ています。こちらもすげえ。
というか、CMS使っていないサイトは全体の38%しかないことに驚きです。
では、ECサイト用途に絞るとどうでしょうか。
2020/11/26時点のデータによると、ECサイト向けのCMSは、他4つのECサイト向けCMSのシェアを合わせても、元はECサイト向けではないCMSにプラグインを導入したもののシェアに及ばないという結果が出ています。
CMS | シェア |
---|---|
WooCommerce | 11.7% |
Shopify | 5.1% |
Magento | 1.2% |
OpenCart | 1.0% |
PrestaShop | 0.8% |
導入の手軽さ
サイト構築に関わる時間・手間に関しては、両者ともCMSとしての利点欠点があるでしょう。
始めるまでは早くても、使いこなすには学習コストがかかったり、テーマを使えば手軽におしゃれなサイトができるけどそのままだと他とかぶったり、などなど。
特筆すべきは、金銭的なコストと、導入・運用コストです。
Shopifyは、29米ドル(約3,000円)/月から始められます。
導入・運用時は、公式のドキュメントが用意されているので、これを読み進めながら、必要であればメールサポートとSNSサポートを日本語で受けられるようです。
また、デザインカスタマイズを行うには、管理画面のGUIで行うこともできますが、突き詰めるためには、Rubyベースのテンプレート言語Liquidを学ぶ必要があります。
WordPressは、SaaS版を利用するなら5,220円/月、自分でサーバを用意するならそのサーバ導入運用費がかかります。org版での導入の敷居の高さは言うまでもありませんが、SaaS版を利用したとしても金銭コスト面でShopifyに軍配が上がります。
カスタマイズ性に関してはWordPressのソレですので、Shopifyのように独自の言語を学ぶ必要がない点も踏まえて優れているといえます。
機能面
Shopifyは、ECサイト運用のために必要とする機能が揃っています。
- 無制限の帯域幅
- 無制限のストレージ
- マルチ販売チャネル(SNS等)
- カゴ落ち対策
- ギフトカード
- クーポンコード
- POS
- 越境ECのための機能・サポート
ここらへんは調べた限りではWooCommerceで実現できなさそうでした。(帯域やストレージはSaaS版だと難しそう、POSとかはプラグインで実現できそう)
まとめ
Shopifyの利点
- 導入が経済的・肉体的・時間的コストいずれも手軽
- ECサイトに欲しい機能が揃っている
- 豊富なアプリマーケットプレイスが用意されている
WordPress.org (WooCommerce)の利点
- プラグイン自体は無料
- 知識があれば、カスタマイズ性は高い(インフラ的な意味でも)
- シェアが高いので比較的技術的なヒントを得やすい
WordPress.com (WooCommerce)の利点
- .orgに比べれば導入は容易
- カスタマイズ性が高い
考察・感想
シェアの観点から見ると、WordPressを利用しているユーザは、そのままプラグインで対応できるWooCommerceを導入してECサイトを実現していると考えられます。また、WordPressの環境さえ持っていればすぐ始められるため、導入の敷居が低くなることもシェアの高さを実現していると考えられます。
しかしながら、やはりECサイトのためのプラットフォームとして存在するShopifyに比べれば機能面では劣ります。WordPressのプラグインで再現できる機能はあるかもしれませんが、それを実現するために「プラグインを導入する」というコストがかかってしまいます。
必要なパーツが初めから準備されているShopifyでは、マーチャントはパーツ集めに時間をかけることなく、パーツをどう組み合わせるか、どう活用するかというECサイトの運営に集中できるため、サイトカスタマイズの先のマーケティング等に時間を割くことができるという大きな強みがあると感じました。
CMSを使うことで得られる利点の1つは、「サイト構築に時間を取られない」ことであり、ECサイト構築においては、「サイト構築に時間を取られない」ことで、その先のブランディングやマーケティングを行い、うまくビジネスに活かしていく必要があります。
そもそも、独自にECサイトを持つというのは、サイトへの一定の流入が見込める・それなりの売上が見込めるなど、ある程度マーケティングが成功している、もしくは成功するための戦略がある場合だと思います。
現実世界で考えると、単純にモノを売りたければ、自分で店を建てて売るよりも、ショッピングモール内などの一定の人が集まることが分かっている場所にテナント料を払って店を構える方が、リターンが多いかは別として、商売のリスクが少ないことは自明です。
ECサイトも同様に、独自でコストをかけてECサイトを建てるよりも、Amazonなどの大型ECサイトで販売手数料を払って出品したほうが人の目に留まりやすく、ECサイト構築にかける金銭的コスト等のリスクを低減できると考えられます。
ただ売りたいだけなら大手ECサイトに出品すればいいのであって、自分でECサイトを持つからにはマーケティングやブランディングでビジネスを成長させるところに目標を持っていく必要があると感じました。逆にいえば、そこに目標があるならうまく利活用できるプラットフォームだと感じます。
また、「Amazonキラー」の異名を持つShopifyですが、そのようなユーザニーズの違いにおいて、Amazon等の大手ECサイトとは棲み分けができていて、必ずしも“キラー”でもない気がしました。
ショップを利用するユーザ目線でいっても、何か欲しいと思った時、Googleの検索窓にキーワードを入力する前に、まずはAmazonや楽天市場を覗きに行く人は多いと思います。
(そう考えると出店型である楽天のキラーな気がしますが、販売チャネル連携があるので殺しには行っていないっぽい?)
Shopifyで検索すると、「大手ECサイトだと埋もれがちになるが、自分のサイトでやれば埋もれない」ということを導入の利点として上げている記事がありました。
なぜ自分のサイトがインターネットという大海原で埋もれないと思った?
SEO対策が施されているという意味で謳っているのかもしれませんが、自社・個人のサイト特有の課題といえば、集客力でしょう。この謳い方はその課題を無視しているようにも思えます。
Shopifyは、D2Cというビジネスモデルの実現可能性を高める1つの手立てとして、有効な選択肢として提供されているのであって、自社ECサイトをどう利活用するかはマーチャントに託されていることを改めて理解しなければならないと感じました。