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[Swift] Swift 5.9 と C++ の互換性

Last updated at Posted at 2024-03-02

はじめに

Swift 5.9 から C++ interoperability という機能が入りました。
これにより、C++Swift に互換性ができ、直接呼び出せるようになりました!

詳細は WWDC2023 の動画を見てると面白いと思います。

では、何が変わったのかを見ていきましょう!

実装

まずは従来の方法を紹介します。

(Xcode でアプリ開発をしている前提で話します)

Swift 5.9 未満で C++ を扱う

今までは3通りの方法がありました。(他にあればコメントくださいmm)

  1. C でブリッジする(C++ の機能 extern "C" を使う)
  2. Objective-C++ でブリッジする
  3. SPM から module.modulemap で公開する

1つずつ見ていきましょう。

① C でブリッジする(C++ の機能 extern "C" を使う)

前提として SwiftC と互換性があります。
Objective-C と同じ要領で、C のコードをヘッダーに追加して呼び出すだけです。

- Swift から C を呼び出す簡単な例

以下簡単な例を用意しました。
まず、C のヘッダーと実行部分を用意します。

CMethod.h
#ifndef CMethod_h
#define CMethod_h

void run_from_c(const char *str);

#endif /* CMethod_h */

実装は何かを出力する簡単な処理を入れておきます。

CMethod.c
#include "CMethod.h"
#include "stdio.h"

void run_from_c(const char *str)
{
    printf("%s\n", str);
}

最後にアプリのヘッダーに追加します。

App-Bridging-Header.h
#import "CMethod.h"

あとは Swift で呼び出すだけです。

.swift
run_from_c("Hello, World! from C".cString(using: .utf8))
// 出力結果: "Hello, World! from C"

とても簡単です!

- Swift から C 経由で C++ を呼び出す簡単な例

C を経由する(C として振る舞う)ことで C++ は先の方法と同じ要領で呼び出すことができます。

使うのは extern "C" という C++ の言語機能で、簡単に言えば C++ 上でコードを C言語 として扱うようにさせるもので、これを使って実行します。

以下は簡単な例です。

まず、C++ のヘッダーと実行部分を用意します。
ヘッダーファイルで extern "C" を使用します。

CppMethod.hpp
#ifndef CppMethod_hpp
#define CppMethod_hpp

#include <stdio.h>

#ifdef __cplusplus
extern "C" {
#endif

    void run_from_cpp();

#ifdef __cplusplus
}
#endif

#endif /* CppMethod_hpp */

メソッド自体(今回はrun_from_cpp)を __cplusplus で囲ってしまうと、Swift 側で認識できなくなるので注意してください。

こちらでも、文字を出力する簡単な実装を入れておきます。

CppMethod.cpp
#include "CppMethod.hpp"
#include "iostream"

void run_from_cpp() {
    std::cout << "Hello, World! from C++";
}

最後にアプリのヘッダーに追加します。
#include なことに注意してください。

App-Bridging-Header.h
#include "CppMethod.hpp"

あとは Swift で呼び出すだけです。

.swift
run_from_cpp()
// 出力結果: "Hello, World! from C++"

とても簡単でしたが、これにはいくつかの制約があります。例えば C から C++ を呼び出す場合は、C++ 側で対応する型を使用する必要があったりします。

② Objective-C++ でブリッジする

① は少しテクニックのような感じでしたが、こちらはシンプルに Objective-C++ を経由するものになります。

- Swift から Objective-C++ 経由で C++ を呼び出す簡単な例

まずは、先ほどと同じように C++ のヘッダーと実行部分を用意します。
今回はクラスにしてみます。

CppClass.hpp
#ifndef CppClass_hpp
#define CppClass_hpp

#include <stdio.h>

class CppClass {
public:
    void run(void);
};

#endif /* CppClass_hpp */
CppClass.cpp
#include "CppClass.hpp"
#include "iostream"

void CppClass::run(void) {
    std::cout << "Hello, World! from Objective-C++";
}

文字列を出力するだけの簡単なメソッドを持ったクラスです。

次にブリッジする部分を作ります。

CppClassWrapper.h
#ifndef CppClassWrapper_hpp
#define CppClassWrapper_hpp

#include <stdio.h>
#import <Foundation/Foundation.h>

@interface CppClassWrapper : NSObject
- (void) run_from_objective_cpp;
@end

#endif /* CppClassWrapper_hpp */
CppClassWrapper.mm
#include "CppClassWrapper.h"
#include "CppClass.hpp"

@implementation CppClassWrapper {
    CppClass *wrapper;
}

-(id)init {
    wrapper = new CppClass();
    return self;
}

-(void)dealloc {
    delete wrapper;
}

-(void)run_from_objective_cpp {
    wrapper->run();
}

@end

#include "CppClass.hpp"C++ のクラスを参照しています。
また、C++ のクラスを保持できるように、クラスにしています。

あとは、ヘッダーに Objective-C++ のヘッダーを追加して参照できるようにしましょう。

App-Bridging-Header.h
#import "CppClassWrapper.h"

これで完了です!

.swift
let wrapper = CppClassWrapper()
wrapper.run_from_objective_cpp()
// 出力結果: "Hello, World! from Objective-C++"

少し記述する量は増えましたが、基本的には橋渡しをしているだけでシンプルな実装できます。

SPM から module.modulemap で公開する

方法 ①と② をそのまま SPM 上に組み込むことで C++ を呼び出すことは可能です。

それを使用せずとも、module.modulemap を使用することで、Objective-C++ のブリッジを使用する必要がなくなります。

module.modulemap とは?

Module Map は Bridging Header の上位互換で、Objective-C または C で書かれたライブラリの場合は、Modules ディレクトリの中に module.modulemap というファイルを設定することで、Swift 側からシンボルにアクセスできるようにします。
Swift が登場して以降の Xcode で Objective-C 製のライブラリなどをビルドした場合は自動的に module.modulemap ファイルが生成されます。

(引用:iOS開発におけるライブラリ、SDK、フレームワークなど

以下は簡単な例です。

.modulemap
module ExampleCppLibrary [system] {
    header "ExampleCppLibrary.hpp"
    export *
}

同じような感じなので実装は割愛します。
少し調べたら出てくる & 生成AI(ChatGPTなど)に聞いてください笑

Swift 5.9 以上で C++ を扱う

ここまでは、C++Swift 上で動かすための従来の方法を紹介してきました。
今までの方法(特に①, ② )は ブリッジするコードが必要となり、若干の手間がありました。

C++ interoperability では、これが必要なくなり、直接 C++ を呼ぶことができます!

- プロジェクト上にある C++ を参照する

C++ のヘッダーと実行部分を用意します。
ここでは、先ほど作成したコード例とほぼ同じものを使用して進めます。

コード例はこちら:CppClass.hpp, CppClass.cpp
CppClass.hpp
#ifndef CppClass_hpp
#define CppClass_hpp

#include <stdio.h>

class CppClass {
public:
    void run(void);
};

#endif /* CppClass_hpp */
CppClass.cpp
#include "CppClass.hpp"
#include "iostream"

void CppClass::run(void) {
    std::cout << "Hello, World! from C++";
}

これをそのままヘッダーに追加します。

App-Bridging-Header.h
#include "CppClass.hpp"

次に Xcode 側でコンパイルの設定を変更します。

Screenshot 2023-12-27 at 22.43.37.png

interoperability の設定を C/Objective-C -> C++/Objective-C++ にしましょう。

あとは、そのまま Swift から呼び出すだけです。

.swift
var cppClass = CppClass()
cppClass.run()
// 出力結果: "Hello, World! from C++"

ブリッジコードが不要になり、とても簡単です!

注意点として、C のコードはビルドできなくなります。

なので、もし CC++ のコードを混在させたプロジェクトがある場合は、安易にフラグを変えてしまうとビルドできなくなります。(ただし、Objective-C はビルドできる)

その他

取り上げませんでしたが

  • C++ から Swift を参照する
  • SPMC++ を参照する
  • コマンドラインで使う
    etc.

この辺はドキュメントに書いてあり、SwiftC++ をもっと快適に、面白くできそうなことがたくさん載っています!

サンプルコード

試したサンプルを置いておきます。
説明した大部分のコードはこちらに入っています。

フラグの設定や読み込み部分は、試したいものを各自で変更してくださいませmm

関連

- Vision Pro での動作

Stack Overflow のコメントでは Vision Pro でビルドできないとありました。

May be I am doing something wrong, but the below code snippet from the official swift doc is working fine when the run destination is set to Mac, but when I change the run destination to Apple Vision Pro, it doesn't compile and throws some errors.
let cxxString = std.string("This is a C++ string") let swiftString = String(cxxString)
No exact matches in call to initializer So, what I get from this is that the mixing Swift and C++ doesn't support visionOS for now.

手元の Xcode 15.2Vision Pro の Simulator では、紹介したサンプルコードは動作しました。C++ のユニークな型や機能を使った場合に動作するのかは分かりません。

- 興味深い記事

以下ピックアップで、紹介しませんでしたが、興味がある人は読んでみてください。

参考

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