この本書は2017年4月1日にTeradata Japanのブログに掲載された内容を、再掲載したものです。
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著者 山本 泰史 (やまもと やすし)
顧客分析の手順
第21回: 特定セグメント支持商品の理解
関連性分析を利用した分析例として、今回は「優良顧客の育成」をテーマとした分析例をご紹介します。今回の分析例では、特定商品を購入した顧客群の、他の購入商品を理解します。
分析の前提
この分析では、商品分類毎の購入顧客数構成比を指標値として用います。計算方法としては顧客数を分母に、特定商品分類に属する商品を購入した顧客数を分子に算出しています。言わば商品分類毎の顧客支持度合いです。図31A は家電商品の中でも特定の商品分類をいくつかピックアップし、それぞれの購入顧客数構成比を把握しています。1つは顧客数全体を対象とした分析、そしてもう 1つは携帯音楽プレイヤーを購入した顧客を対象セグメントとした分析結果です。
2つのグリッドチャートを見ると、共に合計が 100% を超える数値となっているのがわかります。これは、1人の顧客が、いくつかの商品を購入しているために発生しています。また一方、1人の顧客が特定商品分類配下の商品を複数購入しても、分子の数字としては 1 とカウントされます。これにより、1人の顧客が当該商品をどの程度購入しているかは集約の過程で埋没して見えなくなりますが、その顧客が当該商品に対して「購入」という行動を起こしたか否かを理解することが可能となります。
購入支持傾向の比較
図31A をグラフにしたのが図31B と図31C です。図31B では顧客数全体を対象としており、ほぼ(会員カードを提示しない非会員の買上を除く)この家電チェーンの支持状況を捉えています。ヘッドフォンを購入した顧客は全体の 12.4% で、表示された商品の内では最も低く、最も支持率が高いのは携帯ゲーム機の 45.2% となっています。ついでノートパソコン、デスクトップパソコン、そしてオーディオ機器、ヘッドフォンの順です。したがって全体の陳列や品揃えという意味からすると、このような構成比に準じた割合で各商品をプッシュする必要があります。
これに対して図31C は、対象顧客セグメントとして、携帯音楽プレイヤーを購入した顧客群を設定しています。したがって図31B よりも顧客数は少なくなり、したがって分母となる値も少なくなります。仮に携帯音楽プレイヤーの購入顧客数構成比を算出すれば、この値は 100% となります。
そしてこの図31C に図31B と同じ商品を配置させて、同じ購入顧客数構成比を算出すると、異なる結果が表れます。順番は変化し、ヘッドフォンはトップで 49.8% の購入顧客数構成比を示しており、これに続いて、ノートパソコン、携帯ゲーム機、そして大きく差が開いて、デスクトップパソコンとオーディオ機器が続きます。
これは携帯音楽プレイヤーを購入した顧客群が、他にどのような商品を購入したのかを意味しています。このような商品間の関連性を理解することにより、その顧客の生活シーンを類推することが可能な場合があります。例えばこのケースでは、携帯音楽プレイヤーに加えて、ヘッドフォンを購入する顧客は音楽を聴く顧客と想定できます。また、ノートパソコンや携帯ゲーム機も含めて考えた場合、「携帯性」、「持ち運びに便利」といったキーワードを思い浮かべることと思います。ヘッドフォンに関してももしかしたらそのような特性(軽くて携帯性に優れているモデル、周りのヒトに迷惑とならないよう音漏れの少ないモデルが選ばれているなど)の商品が良く買われているかもしれません。
このような顧客は外出の用事が多く、その中でなんらか情報にアクセスをしたり、暇つぶしをしなければならなかったりするセグメントとして想定できます。
アプローチの方向性
したがって、特定されたこのような「移動の多い顧客セグメント」に対しては、新型、軽量、頑丈なミニノートパソコンをご案内することが望ましいかもしれませんし、ワイヤレスアクセスといったサービスを販売する機会があるかもしれません。そして携帯ゲーム機、ノートパソコン、携帯音楽プレイヤー共に、流行り廃りが存在し、買い換えのサイクルもあります。これらを理解できれば、顧客毎の最適なタイミングで買い替えを促すメッセージを案内することも考えられます。
逆に、携帯ゲーム機を何か買ったばかりの顧客に、別メーカーのゲーム機を案内しても無視される可能性は高く、それよりは付属するゲームソフトを案内したほうが好ましい反応を得られる可能性が高いといえます。そして何年か経過し、新しい携帯ゲーム機の販売開始タイミングであれば、顧客も買い換えに応じるかもしれません。このように、同一/類似の顧客をセグメントで切り取ることによって、支持の高い商品群を理解し、加えて購入タイミングを考慮して案内タイミングを非同期化できれば、「最適な顧客に」、「最適な商品を」、「最適なタイミングで」案内することが可能となります。