この本書は2017年4月1日にTeradata Japanのブログに掲載された内容を、再掲載したものです。
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著者 山本 泰史 (やまもと やすし)
評価測定ケースの考察 - 1
端的な評価測定ケースの考察
前回までで論じてきたキャンペーン評価の方法をベースに、キャンペーンの事前測定や比較、キャンペーンの取捨選択、実施後の評価ケースについてご紹介していきます。
1.長期にわたるキャンペーンの測定
2.実施タイミングの異なるキャンペーンの比較
3.マルチステップ型キャンペーンにおける評価判定(相乗効果のケース)
4.マルチステップ型キャンペーンにおける評価判定(食い合いのケース)
5.必要実行基準から逆算する先行指標値の把握
- 及び 2. は前述したNPVを用いて長期にわたるキャンペーンの事前測定、そしてタイミングの異なるキャンペーンの比較を行います。 3. と 4. のキャンペーンは、複数のキャンペーンを実行していく際の影響を考慮するケースを想定しています。 2つのキャンペーンを関連付けた形で “マルチステップ型” キャンペーンとして実施した場合、良い影響を与えるケースと悪い影響を与えるケースが考えられます。 ここではそれぞれを Synergy(相乗効果をもたらす)ケースと Cannibalization(互いに食い合う)ケースとしてご紹介します。 5. のキャンペーンは期待される利益率、利益金額から必要なレスポンス率を逆算し、更に事後分析を突合せ、そこから改善分析を行ったケースです。 これら5つのケースは実際のキャンペーン評価を行う際に微妙な判断を要することが想定される端的なケースであり、ここに光を当てることによってキャンペーンを評価する際の基準がかなり明確になることでしょう。今回は 1. 及び 2. のケースをご紹介します。
最初の例では当年を含めて4年間にわたり、イベント主導型のキャンペーンを実施することを予定しています。経費として初年度 1億5,000万円(150M)、次年度以降は毎年 1億円(100M)発生することになっています。1年目以降の売上、粗利、経費、割引率は同じであることにご注目ください。 結果的に単純な利益金額は 4億円(400M)と毎年同じ金額です。これに対して割引率を考慮に入れているため、現在から遠い将来の利益金額ほど割引が高く適用され、単純な利益金額 4億円(400M)が1年目には 3億6,400万円(364M)に、そして3年目には 3億100万円(301M)に変化していることが見て取れます。 ここから、将来の利益金額は資本コストの影響を強く受けるために高く見積もられており、これを反映して適正に利益を見積もりなおした結果がNPV であるということが分かります。
割引率を適用することによって明確にできるキャンペーン評価の例を、もう1つご紹介します。長期的な利益をもたらすキャンペーンと、短期的な成果に結びつくキャンペーンは、比較するのが困難であることがしばしばあります。ここでは、実施される期間の異なる2つのキャンペーンを比較します。 同様のキャンペーンを今すぐ実施する場合と、1年後に実施する場合の比較です。今年実施した場合、 1億9,000万円(190M)の売上が生成され、来年実施した場合には 2億円(200M)の売上が生成されることを予測できたとします。粗利率、キャンペーン経費等の利益金額に影響を与えるその他の指標は同じであるため、一見すると来年実施した方が有利なように思えます。しかしながら、割引率を考慮することによって、来年と今年では結果が逆転し、今年実施したほうが有利な、収益性の高いキャンペーンであることが理解できます。もちろんこれは一例であり、ケースによっては異なる判定となることもありえます。例えば今年実施した場合の売上金額が 1億円(100M)であればこの結果は逆転することでしょう。 ここでは、期間や実施タイミングの異なる2つのキャンペーンを、割引率を用いることによって正確に比較するための方法例として挙げています。