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キャンペノミクス: キャンペーン管理の経済学 第5回 顧客数と顧客単価に基づくアプローチ

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この本書は2017年4月1日にTeradata Japanのブログに掲載された内容を、再掲載したものです。
掲載内容の正確性・完全性・信頼性・最新性を保証するものではございません。
また、修正が必要な箇所や、ご要望についてはコメントをよろしくお願いします。

著者 山本 泰史 (やまもと やすし)

キャンペノミクス: キャンペーン管理の経済学

第5回: 顧客数と顧客単価に基づくアプローチ

ここまでで、キャンペーンを単位とした経済効果について考察してきました。一方でこのアプローチでは、直接的にキャンペーンで得られる収入や顧客反応しか検討されていません。しかしながら、継続的な顧客への接触が顧客の好意的な心象変化を促し、キャンペーンの対象外となっている部分で収入に結びつく可能性も考えられます。また企業としてキャンペーンを行っていく際に、ビジネスモデルや市場環境等の観点から、キャンペーンの反応捕捉能力に限界がある場合も考えられます。

このような場合には、顧客数と顧客単価に基づくアプローチも採用可能です。顧客数はさらに、新規獲得顧客数と、離反顧客数、そしてその増減によって導かれた既存顧客数に分解できます。つまり、全体の顧客数である既存顧客数が増減すれば、新規顧客獲得のためのアプローチ、もしくは離反率に課題が存在しているということであり、キャンペーン管理を行った結果として改善できるポイント、つまり効果の主眼をこの 2点に置くことができます。 また、顧客単価に関しても、顧客への接触をマッサージ、刺激、リマインダーと捉え、これが適切な内容と適切な頻度であるという前提において、それが単価の向上を促すと考えることが可能です。以降で顧客数と顧客単価改善に基づく経済効果試算例を整理します。

顧客数と顧客単価改善に基づく経済効果

図3 では、横軸に改善前のまま自社が進んだ 3年間、そして改善後つまりキャンペーン管理や分析を導入した場合の 3年間を対比させ、この前後変化をおいています。これは、自社が例えば成長期にある場合、今のままでもある程度成長するのであれば、その成長度合いを基礎数値として考え、改善幅をそこからの差分として考える必要があるため、このような対比にさせています。

image.png

顧客数の変化

基礎顧客数: 各年初の基礎となる顧客数です。これに対して後述する[既存顧客数]が、次年度の[基礎顧客数]となります。

獲得顧客数: 新規に獲得した顧客数です。キャンペーン管理システムは多くの場合既存顧客を主眼としたキャンペーンが対象となるため、この値を改善することは直接的にはありません。新規獲得のキャンペーンとは一般にマスマーケティングであり、顧客データベースを必要としないためです。ただし、新規に獲得した顧客を分析し、今後の獲得顧客に関する知識を得て、例えば媒体選定、案内メッセージ立案、商品やサービスのパッケージング変更を行い、それによって獲得顧客数を増加させることができると想定される場合には、この値の改善後想定値を増加させます。また、新規に獲得した顧客を定着させることに効果の主眼がある場合にも、この考え方を流用可能です。定着後の顧客を正式な新規顧客として考え、その想定値をここに置きます。

離反顧客数: 脱会、もしくは休眠してしまった顧客がここに含まれます。離反阻止のキャンペーンを行い、それが功を奏した場合にはこの値が減少していきます。

既存顧客数: [基礎顧客数]+[獲得顧客数]-[離反顧客数]にて算出します。この値は次年度の基礎数値になると共に、後に顧客単価を掛け合わせるための因数となります。通常顧客の獲得と離反は期中に随時発生していくものですが、ここでは計算の便宜上、期初いちどきに発生したとみなします。

顧客数増減: [既存顧客数]-[基礎顧客数]にて算出します。顧客数ベースでの成長差分を意味します。

顧客獲得率: 補足指標です。[獲得顧客数] / [基礎顧客数]で算出します。

顧客離反率: 補足指標です。[離反顧客数] / [基礎顧客数]で算出します。

顧客増減率: 補足指標です。[既存顧客数] / [基礎顧客数]で算出します。増加傾向にある場合は顧客数ベースでの成長率を意味します。

顧客単価の変化

基礎収入 / 顧客: 顧客単価の現状数値です。この値に次の[収入増減 / 顧客]を足し合わせたものが、次年度の[基礎収入 / 顧客]となります。最も簡単な算出方法は、自社の年間収入を顧客数で割った値です。

収入増減 / 顧客: 改善前と改善後の単価増加、もしくは減少分を置きます。

増減後収入 / 顧客: [基礎収入 / 顧客]+[収入増減 / 顧客]で算出します。

収入 / 顧客の増減率: [増減後収入 / 顧客] / [基礎収入 / 顧客]で算出します。増加傾向にある場合は単価ベースでの成長率を意味します。

経費単価の変化

基礎経費 / 顧客: 顧客あたりに発生している経費、および商品やサービス原価の現状数値です。

経費増減 / 顧客: 改善前と改善後の経費単価増加、もしくは減少分を置きます。

増減後経費 / 顧客: [基礎経費 / 顧客]+[経費増減 / 顧客]で算出します。

経費 / 顧客の増減率: [増減後経費 / 顧客] / [基礎経費 / 顧客]で算出します。

総額の変化

顧客数の変化、顧客あたり収入の変化、顧客あたり経費の変化が査定され、想定試算数値が算出されました。これを掛け合わせ、得られる収入、経費、そして差し引き利益の総額が導き出されます。

収入総額: [既存顧客数]*[増減後収入 / 顧客]にて算出します。

経費総額: [既存顧客数]*[増減後経費 / 顧客]にて算出します。

利益総額: [収入総額]-[経費総額]にて算出します。

経済効果の算出

ここまでで得られた利益総額は、改善前の 3年間と改善後の 3年間です。改善後から改善前を差し引き、純粋な改善に基づく利益生成額を導き出します。

利益差額: 各年の改善後から改善前の[利益総額]を差し引いて算出します。これによって、費用対効果試算の分子、効果部分が導き出されました。

利益差額累計: [利益差額]を累計した値です。

なお、当然ながらこのアプローチの場合には、純粋なマーケティング部門のキャンペーン努力以外の効果もノイズとして含まれてしまう可能性があり、この点は留意すべきです。「純粋に製品やサービスの魅力が顧客数と顧客単価を増加させた」、「市場における相対的な力関係(競合他社の失敗等)が顧客数と顧客単価を増加させた」といった要素がこれに該当します。したがってこのアプローチの場合、これらの要素は変わらないという前提で、検証前と検証後の 2期間を比較します。

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