この本書は2017年4月1日にTeradata Japanのブログに掲載された内容を、再掲載したものです。
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著者 山本 泰史 (やまもと やすし)
評価測定ケースの考察 - 2
今回ご紹介するのは互いに影響を与え合うキャンペーンのケースです。お互いに相乗効果を与えるケース、そしてお互いに悪影響を与え、食い合ってしまうケースの 2つを例示します。
この例では、2つのキャンペーンを連続して、マルチステップ型のキャンペーンとして実施した場合と、それぞれ個別で実施した場合の比較を実施します。 キャンペーン#4 はTVCMで “大衆” に対して影響を与えるキャンペーンです。これに対して、Web上で会員向けに閉じた世界で実行するのがキャンペーン#5 です。キャンペーン#4 とキャンペーン#5 を、それぞれ独立して(影響を与えない程度に間隔を空けて)実施した場合、それぞれ利益率が122%と200%となります。採用/棄却の判断基準が150%であるとすると、キャンペーン#4 は通常であれば棄却されなければなりません。
しかしながら、キャンペーン#4 と#5 を連続して実施した場合、この例ではTVCMであるキャンペーン#4 が実施されると、キャンペーン#5 にも良い影響を与えることが想定されます。 実際に連続して実施した場合をキャンペーン#5' として測定すると、300%と100%分の上乗せを実現したことが分かります。 キャンペーン#4 そのものは収益性がないのですが、#4+#5' で合わせた利益率では245%となり、キャンペーン#5' における増分効果をキャンペーン#4 に起因するものであるとして、この結果を足しこんで計算しなおすと( キャンペーン#4' ) 344%の利益率に改善されることが分かります。
この結果、キャンペーン#4 は単体では利益率の基準を満たしませんが、キャンペーン#5 と一緒に実施することによって(依存することによって)、必要な利益率を達成できるキャンペーンとなることが分かります。この例はそれぞれのキャンペーンの依存関係を明らかにするための例であり、常にTVCMの効果がない、もしくはTVCMは他のキャンペーンへの依存がなければ効果がないということを意味しているわけではありません。 また逆に他のキャンペーンに依存してもやはり効果はない(増分効果が少ない)ということも考えられます。幾つかのキャンペーンをここでは一つの大きな親キャンペーンと捉え、その中で子キャンペーンをどのような順番で並べるか、またはどのキャンペーンを取捨選択するかを判断していく中でキャンペーンの効果が最大になる組合せを見つけることに主眼が置かれています。これはマルチステップ型のキャンペーンを実行していく中では重要な検討方法のひとつとなります。
もう一つ複数のキャンペーン間の影響を理解するためのケースをご紹介します。 キャンペーン#6 はある商品A の割引キャンペーンであるとします。これに対して商品A の後継として新たに販売開始された商品A' のキャンペーンをキャンペーン#7 として考えます。 採用基準である利益率は150%です。これに対して、2つのキャンペーンを連続して実行した場合、キャンペーン#7 は88%と棄却されるべき利益率しかもたらさないことになります。キャンペーン#6 と#7 を合わせても142%の利益率しか有りません。例えばこの商品がリピート性の高い商品(例えば化粧品のような商品)で、消費し尽くすまでにある程度の期間がかかる場合、新商品に乗り換えたくとも今あるものを使い切らなければならないとすれば、新商品への手は伸びないことになります。それどころか旧商品の在庫一掃と思われて悪い印象を与えることも考えられます。逆に新商品の先行情報が流れており、そのメッセージが魅力的であれば(例えば美肌効果が今までの1万倍!!!等)、買い控えが発生してキャンペーン#6 は想定した結果をもたらさないかもしれません。いずれにしてもこの例では2つのキャンペーンのどちらかが片方の足を引っ張ることになります。
反対に、この2つのキャンペーンの間隔を十分に空け、それぞれを独立したキャンペーンとして実施した場合を考えて見ましょう。 例えば標準的な商品の耐用期間から逆算したタイミングにキャンペーン#6 を実施して、耐用期間を過ぎるちょっと前のタイミングでキャンペーン#7 を実施すれば、それぞれの影響を排除することが可能になります。もしかしたら使い切るタイミングが揃うためにキャンペーン効果はもっと良くなるかもしれません(ちょっと姑息かもしれませんが、これもマルチステップ型キャンペーンの一例といえるでしょう)。
このケースではタイミングを修正したキャンペーン#7' において181%の利益率を導き出し、キャンペーン#6+#7' では190%の利益率となり、単体、連結共に基準を上回ることになります。前述したケースとは逆に、マルチステップ型のキャンペーンとして捉えるのではなく、それぞれを個別のキャンペーンとして独立させることによって利益率が高くなる可能性、もしくは十分な間隔を空けたマルチステップ型キャンペーンとして認識することも考慮に入れなければなりません。