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「意思決定の自動化」と「リアルタイム・オファリング」最終回 キャンペーン管理

Last updated at Posted at 2023-06-15

この本書は2017年4月1日にTeradata Japanのブログに掲載された内容を、再掲載したものです。
掲載内容の正確性・完全性・信頼性・最新性を保証するものではございません。
また、修正が必要な箇所や、ご要望についてはコメントをよろしくお願いします。

著者 山本 泰史 (やまもと やすし)

「意思決定の自動化」と「リアルタイム・オファリング」

最終回: キャンペーン管理

前回ご紹介した「意思決定の自動化」、「リアルタイム・オファリング」を支えるための技術基盤「データマイニング」に続いて、「キャンペーン管理」について整理していきます。Teradata では、顧客分析とキャンペーン管理の機能を統合した製品「Teradata Relationship Manager」を販売しています。製品の詳細説明は以下のリンクをご覧頂ければと存じますが、本稿では当製品の活用を前提に論を進めていきます。

・キャンペーン管理製品:Teradata Customer Interaction Manager

キャンペーン管理

データマイニングツールを利用してスコア、もしくはそれを実施するためのモデルが構築できた段階で、キャンペーン管理ツール側でキャンペーンのセットアップとリスト作成の作業に入ります。但し、必ずしもデータマイニングを利用しなければキャンペーンのセットアップが不可能なわけではありません。シンプルな条件で対象顧客のリストや、案内オファーを確定させ、キャンペーンのセットアップを行なうことも可能です。但し、データマイニングで得られたスコアを利用したい場合には、前処理としてデータマイニングを済ませる必要があります。

Teradata Customer Interaction Manager は、以下図34 の中で、ピンクに網掛けした D/E/F の部分を担当します。

image.png

D の「顧客分析」 部分は、顧客行動と属性を把握するための各種分析機能を提供しています。Teradata Relationship Manager の特徴的な機能の一つとして、単純なキャンペーン管理/マーケティングオートメーション機能を提供するだけでなく、このような顧客分析機能を併せ持ち、強力に統合している点が挙げられます。顧客分析機能を用いて顧客行動上の傾向やトレンドを理解することによって、キャンペーン立案上必要なアイデアや訴求ポイントを探し出すだけでなく、そこで得られた知識をそのままキャンペーンの設定に役立てることが可能です。分析手順は以下の通りです。ビジネスインテリジェンス・ツールが提供しているデータグリッド/グラフ表示だけでなく、グリッド/グラフ内の一部分に該当する顧客群をセグメントとして登録し(データベース的には選定条件を書き込み)、登録結果をキャンペーン対象顧客の条件として直接利用可能となっています。

1.分析の対象となる顧客セグメントを指定する
2.その他の分析実行条件を指定する(表示したい指標値や属性等)
3.分析実施の処理依頼をし、処理完了後分析結果を確認する(グリッド/グラフ)
4.分析結果の顧客群を指定し、顧客セグメントとして登録する

E の「キャンペーンの設定」 部分では主に、実施するキャンペーンを構成する 4つの要素、対象顧客(誰に案内するか)、オファー内容(何を案内するか)、チャネル(どのチャネルを通じて案内するか)、タイミング(いつ案内するか)を決定します。また、対象顧客を絞り込むための顧客属性や指標値、オファー内容、チャネル等を事前にオブジェクトとして登録しておき、このオブジェクトを呼び出してキャンペーン設定を行なえます。これにより設定操作を簡素化できるだけでなく、オブジェクトを再利用することによってキャンペーン設定作業の生産性向上が可能となります。

そして図34 に記述しているように、データマイニングによって得られたスコアも、上述した対象顧客を絞り込むための指標値として利用可能です。従って、以下 3つの方法で対象顧客の絞り込みが可能です。

1.データウェアハウス上に存在している顧客属性や指標値を条件に絞り込む
2.顧客分析の分析結果から顧客群を指定し、登録されたセグメントを利用する
3.データマイニング等のスコアを利用する

キャンペーン実施タイミングを設定にあたっては、単発のシングルステップキャンペーンや定期継続型のキャンペーンを実行する場合には実行日時、サイクルを確定してスケジューラーに登録します。マルチステップ型キャンペーンや、イベント主導型キャンペーンを実行する場合にはどのような顧客行動をトリガーにキャンペーンを起動させるかを設定します。

F の「リスト作成」 は、キャンペーン対象顧客に関する情報一式をチャネルに対してパッケージングして提供し、各チャネルに実行指示を行なう部分です。リスト作成は D部分で設定されたキャンペーン毎に行われ、キャンペーン管理ツールを通じて Teradata に蓄積します。そして蓄積されたキャンペーンは自動的に対象顧客をピックアップし、事前設定されたチャネルに対してリストを提供します。但し、複数キャンペーン間で案内顧客が重複する場合、特定顧客に対して過剰な頻度でコンタクトがなされるのを回避したい場合等、企業としてのコミュニケーション・ポリシーを一貫して保ちたい場合には、ルールに基づいてリストの調整を行ないます(最適化)。

F部分で作成されるリストは、テーブルとして用意されます。リストに含まれるカラム内容は実施するキャンペーンによって異なりますが、主に顧客番号、コンタクト先(住所や電子メールアドレス等)、オファー内容等が該当します。リアルタイムでスコアリングを行い、オファー内容を即時決定する場合にはチャネル上に顧客が現れた段階でモデルを実行し、スコアを取得し、それに基づいてオファーを決定するロジックを実装します。

キャンペーン管理ツールを利用することによって、何十、何百に及ぶキャンペーンを同じ基準で、同時並行的に管理することが可能となります。本稿では「リアルタイム・オファリング」という観点から案内オファーを決定し、実際に案内するまでの流れを紹介してきましたが、リアルタイムでないオファリングの実施を含め、「誰に対して」、「どのチャネルを通じて」、「いつ」オファーを案内するかを管理する環境を用意することによって、オファー案内をスムーズに実行することが可能となります。また過去に実行したキャンペーンの履歴は、企業としてのマーケティングノウハウの蓄積と考えられます。キャンペーン管理ツールを利用することにより、企業としてのマーケティング能力、そしてその生産性を改善することが可能となります。そして Teradata Relationship Manager を利用してキャンペーン管理を進めることにより、実施するキャンペーンにおいて Teradata のパフォーマンスと、Teradataデータベース内部に保持されたデータを最大限に活用できます。

In-Database処理とそのメリット

前回ご紹介した Teradata Warehouse Miner、そして今回の Teradata Relationship Manager 共に、Teradataデータベース内部で処理を実行するアーキテクチャ(In-Database処理)であることを前述しました。これは言い換えれば、全ての処理が SQL で実行されることを意味します。ここまでの処理を鑑みた場合、データベース内部で処理をすることによって、以下 3つのメリットが挙げられます。

1.データウェアハウス内部のデータを総動員可能である
2.データの移動が発生しない
3.データウェアハウスのコンピューター資源を最大限活用可能である

データウェアハウスに存在しているデータは一般に、広範かつ包括的なデータ種別を備え、充分な明細度と鮮度を有しており、何よりも統合的に、重複無く保持されています。そうでなければデータウェアハウスから意思決定に足るだけの知識を搾り出すことは出来ませんし、データウェアハウスが本来持つ意義を失ってしまいます。データマイニングに利用する変数、顧客の絞り込み条件、オファー内容やチャネル、コンタクトタイミングに関する考察と検討、そして実質的なオファリング用データの作成をするために、データウェアハウス内のデータを最大限に活用できることは、オファーの精度、威力を増すために不可欠です。仮にこれらのデータを様々なデータソースから持ってきたり、従属するデータマートにロードしなおしたりして処理を進めれば、データの移動やそのための手間、時間が発生することになります。これがデータ鮮度上の問題をもたらし、利用可能なデータ種別、明細度に制約を与えます。加えて、多様なデータソースを利用することによってデータの不整合も発生します。仮にこれらの制約を排除しようとすれば、さらに追加的な手間と時間をかける必要があり、その結果できあがるのは「インスタントな、もう一つのデータウェアハウス」ということにもなりかねません。それならば既にデータが存在し、充分なパフォーマンスとデータ領域を確保できるデータウェアハウス上で処理を実施するのが最も効率的と言えます。

「真実の瞬間」に向けた準備

ここまで、今回含め 14回の連載で、意思決定の自動化とリアルタイム・オファリング、そしてそれを実現するためのデータウェアハウスを中心とした技術要件について整理を進めてきました。顧客が自社のチャネルに接してくれるということは、何らかの関心、期待、要望を抱いていることの表れです。そしてその瞬間は、それ以前に行なってきたマーケティング活動や接客活動、企業活動全般がもたらしてくれた自社に対する認知、信頼によってもたらされたものです。従ってその瞬間は、この上なく貴重なビジネス機会であり、それまでに積み重ねてきた企業努力の結晶として得られたものでもあります。この瞬間に顧客の期待に応えたり、興味や関心を喚起したり、要望を満たしたりすることができれば、今回のビジネス機会だけでなく、次のビジネス機会への可能性も広がります。一方で画一的で凡庸な対応に終始したり、がっかりさせてしまったり、過剰な売り込みで辟易させてしまったりすれば、過去の努力と目の前のビジネス機会、将来のビジネス機会全てを無駄にしてしまうことになります。企業はこの瞬間にもっと力を注ぐべきですし、この瞬間のために充分な「準備」をすべきです。ヤン・カールソンが「真実の瞬間」を著したのは 1980年代も終わる頃で、もう随分昔のことですが、どんなに企業体が大きくなっても、どんなにテクノロジーが変化し、企業と顧客の接し方が変容しても、商品やサービスを買うのが顧客である限り、顧客と接する瞬間が商売の成否を決めるのは変わりありません。

そしてこの瞬間のためにできる準備のうち、決定的に重要なコトの一つとして、分析による顧客理解と、それに基づいたシナリオライティング、そしてルール/ロジック構築によるシナリオの実装が挙げられます。パパママショップのようにプリミティブな商売形態で、一人ひとりの顧客を熟知しているのであれば、顧客が来店してすぐにその顧客のことを思い出せるかもしれません。でも、現代の大規模企業組織は、膨大なオファー候補を有し、たくさんの顧客と接し、数多くのチャネルをハンドリングしなければなりません。そしてなによりも「真実の瞬間」は五月雨式に訪れ、瞬く間に去っていきます。企業組織は顧客との接触履歴をデータウェアハウスに記憶することができるようになりました。しかし残念ながら、記憶そのままで接客やオファリング時に租借し、活用することは叶いません。数多くの社員やパートナーが自社のビジネスに関与する中、顧客がチャネルに現れてから記憶を呼び起こしていたら、その間にも顧客は付き合いをあきらめ、自社のチャネルから立ち去ってしまうかもしれないのです。顧客が自社のチャネルに接してくれる千載一遇の機会。この瞬間を最大限に活かすために、用意周到に分析を進め、「意思決定の自動化」と「リアルタイム・オファリング」を配備してみてはいかがでしょうか。

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