この本書は2017年4月1日にTeradata Japanのブログに掲載された内容を、再掲載したものです。
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著者 山本 泰史 (やまもと やすし)
チャネル最適化のための分析
第2回:コールセンターにおける分析シナリオ
今回ご紹介するのはコールセンターデータに関連する分析シナリオです。商品やサービス、そして苦情や質問などに関する問い合わせのセンターを想定した分析です。
分析例1-2 放棄呼発生度合いの分析
コールセンター施設の稼動状況を分析し、必要な施設規模に関する理解を得ます。
分析例1-3 自動音声応答装置の誘導分析
コールナビゲーション毎のトラフィックを理解することにより、最適なナビゲーションパスをデザインします。
分析例1-4 エージェント配置分析
エージェントの配置とそれに伴う生産性の状況を理解し、最適なエージェント配置に役立てます。
分析例1-6 コール対応状況分析(個人別)
お客様からのコールがどのようなビジネス結果をもたらしたかを理解し、商品/サービスやマーケティングメッセージの改善、そしてエージェントトレーニング計画のベースとして活用します。
分析例1-7 アウトバウンドレスポンスの分析
アウトバウンドのマーケティングキャンペーンの実施状況を把握し、効果を測定します。
分析例1-1 回線キャパシティトレンドの分析
1つ目の分析は回線のキャパシティトレンドの分析です。2004年、特定コールセンターにおける月毎の回線利用状況を見ていきます。
[通話時間]は、当該月における通話時間の合計を意味します。また[回線空き時間]は回線のアイドルタイムを意味します。この2つの値の合計が[通話可能時間]となります。そして[通話時間]/[通話可能時間]を計算して導き出したのが[稼働率]です。この値が100%に近いということは、回線がパンク寸前ということになります。当然ながら月、週、日、時間帯によっては100%にへばりついている、つまりお客様から見ると話中でつながらない状態があることも考えられます。これを改善するためには、回線数を増やすなどの対応が必要です。この例では8月から回線数を増やすことによって、稼働率を適正なレベルまで下げて対応していることが分かります。ここでは70%近辺で落ち着いていますが、月、週、日、時間帯レベルでどのような稼働率となっているかを更に確認する必要が有るかもしれません。
分析例1-2 放棄呼発生度合いの分析
2つ目の分析は放棄呼発生度合いの分析です。
ある特定週のデータを時間帯毎にスライスし、[通話呼数]と[放棄呼数]、そしてこの2つを足しこんだ[総呼数]を表示し、さらに[放棄呼発生率]を[放棄呼数]/[総呼数]から計算して表示しています。当然ながらタイミングによってはエージェントが全てふさがってしまうこともあるため、放棄呼発生率を0%にすることは難しいかもしれませんが、多く発生しているタイミングを理解し、必要なボリュームのエージェントを配置することによって、放棄呼を低減し、顧客サービスレベルやリード生成機会を向上させることが可能となります。同様に曜日別、更に細かい時間別で把握することにより、シフトチェンジのタイミングや配員ボリュームに対するさらなる理解を得ることが可能となります。
分析例1-3 自動音声応答装置の誘導分析
幾つかのセンターでは、自動音声応答装置(IVR: Interactive Voice Response)を利用しているケースもあることと思います。
ここでは、そのルーティングナビゲーション毎の[呼数]を把握することによって、お客様にとって快適なナビゲーションを実現するための知識を得ることが可能となります。これにより、問合せの多いナビゲーションは階層の上にもっていく、逆に問合せの少ないナビゲーションは下の階層に持っていくことも考えられます。例えばここでは週毎のトレンドで見ていますが、商品サービスAの問合せが多くなっていることが分かります。おそらくテレビCM等の別チャネルにおけるマーケティング結果がここに現れてきているのかもしれません。
また、商品やサービスの信頼性にかかわる問合せに関しては、お客様に対する安心感を与えるという観点から、別なコミュニケーションチャネル、例えば郵送等の方法でお客様に対して案内することも必要かもしれません。この例では、カード紛失のお問い合わせが多いことが見てとれますが、紛失時のインストラクションを毎月の請求書もしくは明細送付書に同封するなどして、お客様に安心をもたらすような情報を提供することも想定できるでしょう。
分析例1-4 エージェント配置分析
4つ目の分析はエージェント配置の分析です。特定週、特定シフトにおけるスキルセット毎の指標値を見ていきます。
スキルセットは、エージェントが対応できる内容を示しています。例えば[商品サービスA]は、この商品サービスのご紹介や、問い合わせ対応ができるスキルセットを持つエージェントの集合を意味します。[配置時間]はこのスキルセットにアサインされた配置時間の集合を意味し、[通話時間]は、配置に対して実際に通話された時間を意味します。この2つの値が近ければ、基本的にはアサインが成功していることになります。通話呼数は、スキルセット毎のコール数を指します。そして[通話時間]/[通話呼数]/60で、[平均通話(分)]を算出しています。ここからスキルセット毎、通話あたりの負荷の度合いを推し量ることが可能となります。[延べ配置人数]は、ここでは1シフトが4時間制と想定しているため、[配置時間]/4の値と基本的に同じになり、エージェントをどれだけ配置したかを意味します。[通話時間/人]は[通話時間]/[延べ配置人数]にて導き出され、エージェント1人あたりの負荷状況を理解することが可能です。[通話呼数/人]も同様に[通話呼数]/[延べ配置人数]で導き出しており、コール数ベースで見たエージェントあたりの負荷を示しています。
これにより、スキルセット毎にエージェントを適切に配置することが可能になると共に必要であれば特定のスキルセットを持つエージェントを育成する際の目安を理解することが可能となります。また必要に応じて各エージェントレベルにドリルダウンすることにより、負荷の状況をエージェントレベルで把握することも可能となります。
分析例1-5 コール対応状況分析 全体
5つ目の分析は、コールに対してどのような結果がもたらされたかを理解するための分析です。特定の月におけるコールを商品サービスの問合せ毎にリストして分析を実施しています。
[通話呼数]は実際のコール数を意味します。そして[通話1:説明]、[通話2:資料請求]、[通話3:契約]は通話がどのような結果をもたらしたかを表しています。ここではそれぞれ説明に終わった、資料請求を依頼された、契約に至ったという形でエージェントの登録データをもとに分解しています。当然ながらこの分解はそれぞれの企業の商品やサービスの内容に基づいて異なることと思います。ここでは[通話呼数]に対する[通話2:資料請求]の割合、そして[通話3:契約]の割合を算出し、それぞれ[リード生成率]、[契約率]を導き出しています。これはコールセンターへのコールのうち、どの程度が見込み客もしくは顧客獲得に結びついたかを示す到達率、または転換率を意味する指標です。 ここからまず、そもそもの問合せが少ない商品に関しては他のチャネルからのマーケティング喚起が弱い場合が有ります。当然ながら新たに投入された商品やサービスの方が問合せの多い場合も有りますので、この場合は問合せに対応できるスキルセットをもったエージェントを増減させることにより対応しなければなりません。
また転換率が悪い商品サービスに関しては、そもそもの商品に関する問題もあるかもしれませんし、案内や説明スクリプトに問題があるかもしれません。前者に関してはエージェントが問合せからキャプチャしたメモ情報やアンケート情報を参考に商品サービスを改善する必要が有りますし、後者に関してはエージェントの意見等を参考にスクリプトを改善する必要が有ります。
分析例1-6 コール対応状況分析 個人別
6つ目の分析は、個人別のコール対応状況分析です。ここではエージェントそれぞれに対応状況を見ていきます。
縦軸にはエージェントのスキルレベルをベースにしたランク、時給単価をリストしています。そして横軸には実際の労働時間を示す[配置時間]、通話状態になっていた時間を示す[通話時間]、[通話時間]/[配置時間]にて導き出された[稼働率]を示しています。さらに、[時給]×[配置時間]にて、[支払い給与]を表示させています(実際には経費実績からのデータを表示させます)。[通話呼数]は当該エージェントが対応したコール数を指し示し、[支払い給与]/[通話呼数]にて[コスト/呼]を算出しています。これにより、エージェント毎のコール対応コストの違いを把握することが可能となります。ここでは、時間単価よりも稼動率の向上がコストパーコールを押し下げ、生産性を高めていることが伺えます。そして、そのためにはエージェントのスキルレンジを広げ、複数のコールに対応できるエージェントを育成することが生産性向上の鍵となることも想定できます。そのため、更にエージェントのプロファイルを照会し、現在のスキルレンジを把握した上で、広げるべきスキルレンジを検討することも必要となるでしょう。
分析例1-7 アウトバウンドレスポンスの分析
最後にご紹介するのは、アウトバウンドで実施したマーケティングキャンペーンに対してのレスポンスキャプチャです。前提として、マーケターがセグメンテーションにより導き出した1万名の顧客をそれぞれのコールセンターのチャネルリミテーションである1,000名/日に配分し、5日間に分けてコールしたと仮定します。
縦軸にはアウトバウンドコールに利用したコールセンターのロケーション、コールを実施した日付、曜日をリストしています。横軸には[コール数]が示され、通話中や留守電、利用されていない番号等の[不通呼数]と通話が実現した[通話呼数]に分解されます。さらに[通話呼数]は、通話結果を示す[通話1:説明]、[通話2:資料請求]、[通話3:契約]に分解されます。ここから、[通話呼数]に対する[通話2:資料請求]及び[通話3:契約]の割合として[リード生成率]、[契約率]が算出されています。
この分析レポートから、キャンペーンのアウトバウンドコールに対しての評価を行うことが可能となります。また、コールするロケーションや日付毎に対象となる顧客セグメントや、それに合わせてスクリプトを変更し、レスポンスの高いキャンペーンへ向けて修正を加えていくことが可能となります。