この本書は2017年4月1日にTeradata Japanのブログに掲載された内容を、再掲載したものです。
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著者 山本 泰史 (やまもと やすし)
顧客分析の手順
第23回: 特定イベント後の行動パターン把握
分析フォーマットの 5つ目として、今回からパターン検出分析の分析例をご紹介します。パターン検出分析は、前回まででご紹介してきた関連性分析同様、特定事象に関連して他の事象がどれほど発生したかを理解するための分析です。関連性分析との違いは、これを時系列で把握することによって、その事象間の因果関係をより明確にすることが可能な点にあります。
分析の前提
今回は、海外旅行用途でクレジットカードを申し込んだ顧客の、その後の定着状況を分析します。分析結果を示したのが図34A ですが、ここでは横軸にカードの利用先カテゴリーを、縦軸に時間軸を置いています。分析の対象セグメントとしては、昨年度、旅行用途で入会した顧客群を対象とし、指標値としては顧客数を用いています。
ここでは、基準となる対象セグメントとして、昨年度、旅行用途で入会した顧客群を対象としていますが、これ以外に基準となる顧客行動として、5月に海外旅行先でカードを利用した顧客群に分析の対象を絞り込んでいます。つまり、縦軸で [0(5月)] 、横軸で [トラベル] で示されている 10,034名が実質的な分析の対象です。これらの顧客が、他の月でどのようなカード利用を行なったかを示しています。
そして縦軸に期間として示している [0(5月)] は、基準期間である 0 が 5月に設定されていることを意味し、以降1ヶ月単位で、基準期間からの相対期間数を示しています。例えば一番下の行 [5(10月)] は、10月が 5月を基準としたときに 5ヵ月後の顧客行動がどの程度発生していたかを示しています。
入会後のカード利用傾向
このグリッドをグラフで表示したのが、図34B です。全体傾向としては一旦次の月に利用顧客数が減少し、その後徐々に増加していることが見受けられます。
また、個別の傾向を見ていくと、当然ながら毎月トラベル用途で利用している顧客は少なく、多くの顧客にとっては少なくとも数ヶ月先まで次の旅行は発生しないことが分かります。一方、直後に増加しているのはレストランでの利用です。実際になぜこのような因果関係が発生したのか分かりませんが、単純な想像としては旅行仲間で食事会を開催するような需要があったのかもしれません。いずれにしてもレストラン利用が、トラベル利用後にあるということが分かりました。
また、ショッピング需要としては、トラベル利用の直後が低調で、その後徐々に増加していることが分かります。これに関しても想像の域を出ませんが、旅行先での支出からお財布の紐がきつくなり、しばらくは余裕が無くてお買物をしないと決めているのかもしれません。少なくとも 3ヵ月後の 8月まで需要が低調であることが分かりました。
アプローチの方向性
ここまでの知識で、5月に海外旅行用途で入会した顧客群に対するアプローチは、ある程度方向付けできます。まず、帰ってきてからの利用促進策としては、レストランの利用をご案内すること、ショッピング利用の促進策としては 3ヶ月待つこと、トラベル利用としては 5ヶ月以降の休みタイミングを利用することです。
もちろんこれは基本的なアプローチで、個別に考えなければならないこともあります。5月に旅行といっても、ゴールデンウィークに旅行をしたのか、それともオフシーズンに旅行をしたのかによってもパターンは異なるはずです。会社員でゴールデンウィーク旅行であれば、5ヶ月先の 10月にトラベル利用の案内をしても余り反応を期待できません。それよりは年末年始の旅行を早めに確定したほうがよさそうですし、いっそ前倒して夏休みの利用を促したほうが良いかもしれません。これに関しては職業に関する情報、それまでの旅行頻度やインターバルに関する情報を参考にしたうえで、7月案内顧客(8月需要)、9月案内顧客(10月需要)、11月案内顧客(年末年始需要)に分けたほうが良いと思われます。
そして、レストラン利用の案内に関しての個別化も検討候補です。海外旅行先がスペインへの旅行であれば、スペイン料理の案内が好ましいかもしれません。旅行仲間で集まるのであれば、個室や大テーブルの用意できるレストランを求めるかもしれません。またショッピング用途に関しては 3ヶ月待つだけでなく、前述の旅行需要の前段階で旅行関連商品を購入できるショッピング関連加盟店をご案内するのもアイデアです。旅行後は買物を控えるかもしれませんが、旅行前にはいろいろと物入りで、準備のためのショッピング需要が想定されるためです。
このような案内は、通常請求書に同封する形で実施されるか、旅行会社等と提携して別個のダイレクトメールで案内されるかと思います。前者の場合には、請求書に同封するパンフレットやリーフレットの掲載スペースの中で、前述してきたプッシュすべき案内をトップに持ってくる、もしくはより多くの掲載スペースを割く等して、利用を促します。
このように、パターン検出分析を利用して、特定顧客行動の後に、どのような顧客行動の発生する可能性が高いかを理解することが可能となります。