この本書は2017年4月1日にTeradata Japanのブログに掲載された内容を、再掲載したものです。
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著者 山本 泰史 (やまもと やすし)
顧客分析の手順
第8回: 分析の対象を特定する(セグメント)
前回までで、顧客分析の対象データとしてまず単一の表(分析データセット)を準備し、これを用いて分析を実施していく手順を示してきました。ここではこのようにして得られた単一の表を、特定変数に基づいて分割する方法について整理します。
単一変数を用いた分割
非常にシンプルな例として、たった 1つの変数を利用して、顧客をいくつかのグループに分岐するケースが考えられます。性別で 2つのグループに分割する、口座残高額の多、中、少から 3つのグループに分割する等です。このように分割することによって、例えば「女性に特有の購買行動」や「残高の多い、つまり高貯蓄層に特有の金融行動」を理解することが可能となります。
複数変数を用いた分割
このような分割を発展させていくと、複数の変数を用いて分割することも考えられます。「女性で 20歳代のセグメント」、「残高が多く、投資商品を契約しているが、ローン商品は契約していないセグメント」のような形です。これによって、顧客数は絞り込まれますが、セグメント内の顧客の近似性は増加していきます。つまり「より似たような顧客」が同一セグメントに含まれるようになり、セグメントに対するイメージも具体的になってきます。
テクニック的には、複数の選定基準を設定し、これに該当する顧客を抽出します。「女性で 20歳代のセグメント」であれば、「性別が女性(AND)年齢が 21歳から 30歳」といった形式で表され、複数の選定基準は AND、OR等で結ぶことによって条件が接続されます。
生活に着目したセグメンテーション
このような手法を高度化させたとき、その一つの究極形は、「生活シーン」、「生活スタイル」、「生活ステージ」に基づいたセグメンテーションであると考えます。本来の分析対象である顧客は、何らかの生活を送っており、この生活上の欠落がニーズとなり、このニーズを満たすものとして企業が提供する商品やサービスが提供されます。従ってこの生活を基準に類似の顧客を分類することができれば、同一セグメントに属する顧客は同一のニーズを有している可能性が高く、同じメッセージや同じアプローチが効く可能性が高くなります。
この中で「生活シーン」は、日常の中で良く見られる風景に喩えられ、これを形作るような顧客属性、もしくは指標値を有しているか否かによって区別されます。例えば朝食のシーン、オフィスで働くシーン、海外旅行に出かけるシーン... 等がその代表例です。
そしてこの生活シーンの中でどのような嗜好性やルールを有しているかを「生活スタイル」と呼びます。和食を好む、便利なオフィスツールを積極的に活用する、ヨーロッパ旅行よりもアジア旅行を好む... 等が生活スタイルです。
そしてこのような生活シーン、生活スタイルに大きく影響を与えるのが生活ステージです。主婦、会社員、会社役員といった社会的な位置づけが生活ステージの代表的なものであり、より細かく考えれば同じ主婦でもお子さんがいらっしゃるか否か、お子さんが大学入学を控えているか否か等によってもステージは異なります。
(「生活シーン」、「生活スタイル」、「生活ステージ」については、別稿「ポストCRM を読み解く 10 のキーワード」内の各回を参照下さい。またセグメンテーション手法やコンセプトの詳細については「セグメンテーション/ターゲティング」にて記述していますので、併せて参考にしてください。)
複数セグメント間の関係
このような形でいくつかセグメントを作成していった場合、セグメントとセグメントの関係に関してもいくつかの作成ポリシーが生まれます。シンプルなセグメンテーションの場合、セグメントA(例: 女性)とセグメントB(例: 男性)は互いに排他的であり、その総和が顧客の全体となり、包括的に全ての顧客を把握します。一見するとこれは分かりやすい分類です。
しかしながら顧客群本来の姿に基づいてセグメンテーションを実施しようとした場合、必ずしも包括的である必要もなく、また重複も発生します。例えば、「婦人服専門購入顧客」、「紳士服専門購入顧客」の 2つのセグメントが管理対象であれば、それ以外は「その他」として考えれば良いかもしれません。またこの 2つのセグメントと重複する形で「生活用品購入セグメント」が管理対象となるかもしれません。
管理の方法としてはいずれの場合も一長一短あり、特にどちらかの方法に固執する必要はありませんが、どのような作成ポリシーで作成されたセグメントであるかは理解した上で活用する必要があります。
セグメントの管理方法
また、実質的にそれぞれの顧客が属しているセグメントを識別する方法として、前述した選定基準による管理方法と、顧客に直接セグメント番号を割り当てる方法の 2つがあります。前者を利用する場合には、最新の顧客データを対象としてセグメントを理解することが可能です。例えば「預金額 > 1,000万円以上」のセグメントを理解するのであれば、セグメント番号を一旦割り当ててしまうと、その後、ある所属顧客の預金額が 1,000万円を割った場合に困ることになります。
一方、直接セグメント番号を割り当てることによって、理解が容易になる場合もあります。例えば「買上金額ランク」を毎年付与し、履歴で管理していくことによって、ランクアップ、ランクダウンのトレンドを明らかに出来ます。これに関しても、一長一短あるため、目的に応じて適した方法を選択します。
次回は、このようにして得られたセグメントを特徴付け、セグメントの特徴を理解するための方法について解説します。