この本書は2017年4月1日にTeradata Japanのブログに掲載された内容を、再掲載したものです。
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著者 山本 泰史 (やまもと やすし)
顧客分析の手順
第2回: 分析の枠組み
前回、企業の目的である利益の最大化、これを CRM/マーケティング/顧客管理の観点から支援し、その実現に寄与する - このための改善ポイントとして、「新規顧客の獲得」、「顧客リテンション」、「優良顧客の育成」の 3点を挙げ、これを「経費効率の向上」を伴って実現させるべきと述べました。そして、これを実現するためには、何らかの「行動」が不可欠であり、どんな行動を選択するべきか「意思決定」することが求められます。そして正しい意思決定を行なうためにデータを分かりやすく解き明かし、知識を導き出すことが「分析」です。
今回は、この分析の枠組みについて整理します。分析の結果得られる「知識」は、データというレシピを調理して得られた美味しい料理のようでもあり、鉱山で採掘した資源を精製して得られるレアメタルのようでもあります。いずれも必要なデータ(レシピ、資源)を不足なく用意して、必要な手順を経ることによって知識(美味しい料理、レアメタル)に変化します。
天下り的にこの枠組みを示すと、それは以下の通りです。もちろん、世の中には様々な分析対象が有り、それに対する分析のアプローチが存在します。ここでは顧客分析、そして上述した 3つの改善ポイントを特定するために、最低限必要不可欠なものを提示しています。
1. データを用意する
1-1. データ単位(顧客毎のデータ)の用意
1-2. 変数(顧客属性/指標)の用意
2. 各変数の特徴を理解する
3. 複数の顧客群に分類し、比較する
4. 意思決定/行動に適用できる知識を析出する
4-1. 新規顧客の増/減ポイント
4-2. 既存顧客の増/減ポイント
4-3. 顧客支出の増/減ポイント
データの用意
データを分析するのですから、何を差し置いてもデータが必要です。このフェーズでは、分析の基礎とすべきデータを用意します。分析の対象は顧客であるため、顧客毎のデータが必要です。そして各顧客に関する様々な事実が「変数」つまり顧客属性や顧客指標として集められます。つまり、行と列で構成された単一の表として基礎データは説明でき、このとき、行はそれぞれの顧客、列は各顧客に関する様々な事実として配置されます。
変数の特徴理解
データが用意された段階で、各変数の特徴について把握します。単一の変数でその特徴を理解するだけでなく、必要に応じて 2変数の相関を理解する必要があります。また、ここで得られた変数の特徴に応じて、元のデータからの変数作成自体を再度実施しなければならない場合もあります。
複数顧客群への分類と比較
変数特徴の理解が、列に主眼をおいたアプローチであるのに対して、ここでは、行を適切に分割し、複数行をグルーピングした上で変数特徴を比較します。ここで言う行とは顧客であり、行の分割とは顧客のセグメンテーションです。2つのセグメントを各変数で比較することも必要ですし、顧客全体(母集団)と特定の条件で切り取ったセグメントを比較することも必要です。
意思決定/行動に適用できる知識の析出
変数についての理解、そしてセグメントについての理解が得られた段階で、これらを特定の分析フォーマットに流し込みます。そしてここから、4-1. から 4-3. に記載したような「おかしなポイント」を見つけ出します。このおかしなポイントこそが、なんらかアクションをとるべきポイントであり、このポイントを見つけ出すこと、そしてこのポイントに対して何をすべきかを特定することが、「知識」の析出です。それは行動を促すものでなければならず、採るべき行動を明確化してくれるものである必要があります。
以上の枠組みを通じて分析を実施することにより、必要な知識を獲得し、「行動 = キャンペーンを中心とした顧客へのアプローチ」を決定することが可能となります。次回以降で、この枠組みのそれぞれについて解説していきます。