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キャンペノミクス: キャンペーン管理の経済学 第2回 効果創出の起点はヒト

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この本書は2017年4月1日にTeradata Japanのブログに掲載された内容を、再掲載したものです。
掲載内容の正確性・完全性・信頼性・最新性を保証するものではございません。
また、修正が必要な箇所や、ご要望についてはコメントをよろしくお願いします。

著者 山本 泰史 (やまもと やすし)

キャンペノミクス: キャンペーン管理の経済学

第2回: 効果創出の起点はヒト

キャンペーン管理の効果試算をするうえで、その原資をどこから得るべきでしょうか? 本稿ではその起源をヒト、つまり人的資源、より端的に言うなら社員、特にマーケティング部門にあると考えます。1人の社員は 1日 7-8時間、1週間に 5日間、年間200日以上勤務し、マーケティング業務を遂行します。そしてこの社員の方が何名か在籍し、マーケティング部門を形成しています。この中でもマスマーケティング(新規顧客獲得やブランディング)や調査活動のような業務に従事するリソースを除き、キャンペーンの立案や実行に関わる方々がその対象となります。ただし、これらの業務が事業ラインやチャネルに分散配置している場合には、これらリソースの総量を考えます。

自動化によって浮くリソース

このような前提条件で得られるリソースは時間に換算でき、さらに人件費として金額換算できます。一方、このような業務に携わる方々の時間の中で、非常に多くの時間が、キャンペーンの実作業的な部分に割かれています。データを収集し、手作業でキャンペーン対象者のリストを作成し、そこからコンタクト禁止者を除外し、コンタクトチャネルに連携させる作業、そしてキャンペーン実施後に評価目的でまたデータを収集する作業です。最初のキャンペーン管理による効果ポイントは、これら業務をコンピューターに代替させ、自動化することによって、リソースを本来必要なキャンペーンアイデアの立案、キャンペーン構成要素の決定といった分析業務に割り当てなおすことにあります。一時的に実行するキャンペーンの作業時間短縮だけでなく、継続的に実施しているキャンペーンを自動化させることによって、担当者の手を離れ、時間が来たら自動的にリストを抽出し、コンタクト禁止者を除外し、チャネルに連携させることによって、キャンペーンの実作業時間を設定作業のみに圧縮します。

空いた時間をどのように使うか?

このようにしてできた時間リソースを、本来の分析作業に割り当てなおします。具体的には、新たにキャンペーンのアイデアを作り出すための分析、そしてキャンペーンの精度、端的には反応率を向上させるための分析です。定量的に何時間あればキャンペーンアイデア、そしてキャンペーン精度改善の分析に充分かを一般化するのは難しいです。担当者個々人の能力やセンス、その他の条件にも左右されるため、一概には言えません。担当者の方々ご自身にインタビューして得られた情報や業務調査によるデータ、そしてそれらを管理される上司の方からの情報を考慮して決定するのが適切です。最終的にこの投資対効果試算が合意されたときに、キャンペーンを立案し、改善していくのは彼らだからです。

リソースギャップの考え方

当然ながら、キャンペーンアイデアの立案、もしくはキャンペーン精度改善に必要な時間量が足りない場合もあります。また、分析による効果改善は考えず、自動化による人件費削減だけを考えたい場合もあるかと想定します。前者の場合には必要な人員を追加配備することが必要です。一方で余剰となった従業員を解雇、もしくは他部門へ再配置するだけの場合は、余剰時間、余剰人件費分を獲得利益として考えることが可能です。しかしながら現実的に現有リソースを自部門が自ら手放すこと、もしくは解雇させることは難しい場合があり、またこれらのリソースを有効活用して、キャンペーン効果を改善し、顧客価値を高め、企業業績に寄与させることが出来るのであれば、こちらの選択肢の方が魅力的に思えるはずです。企業活動は一般に規模の経済が働くものであり、その意味で現行リソースを最大限に活かす方策が選択され易い傾向にあります。そのため、以降の試算では、このシナリオに基づいた試算例をご紹介します。

人件費と労働時間に関する検討

ここからは図1 を参照しながら、効果試算モデルを検討します。まず、横軸に改善前の現在値と改善後の 1年目、2年目、3年目を比較する形式にしています。

image.png

人件費 / 時間: 時間単価を意味します。ここでは 5,000円と入れています。多くの場合この値は変わらないか微増であると想定します。

総時間: 労働時間の総量を意味します。例えば 10名の担当者が 8時間、月20日、12ヶ月従事しているという前提で、10820*12 = 19,200時間と置きます。効果試算の部分には自動化によって浮いた時間を差し引いた後の時間を置きます。

人月換算: 単純な計算値で、[総時間] / 8時間 / 20日にて求めます。

人員換算: 単純計算値。[人月換算] / 12ヶ月で求めます。もしくはこの値を置き、[人月換算]、[総時間]に分解しても構いません。但し、各担当者の雑務バッファや、キャンペーン業務以外の部分は差し引いて考える必要があります。

総人件費: [人件費 / 時間]*[総時間]にて算出します。人的資源の金額換算した姿です。

余剰時間: 改善前-現在の[総時間]から、改善後の[総時間]を差し引いた時間総数を意味します。分析業務に再割当可能な時間量です。

余剰人件費: [余剰時間]*[人件費 / 時間]にて算出します。仮に当該人件費を削減するのであれば、この金額はそのまま創出利益額となります。

キャンペーンあたりの分析所要時間に関する検討

続いて、余剰時間をどのように利用するか検討します。ここでは[アイデア立案分析]と[反応率改善分析]に集中することにしています。もちろんこれを既存キャンペーンと新規キャンペーンに割り当て、さらに項目ごとに分解することも可能ですし、[反応率の改善]という項目をさらに[初期段階における反応率改善分析]と[実施後の評価と継続的改善の分析]に分解することも可能です。

アイデア立案分析: キャンペーンアイデアの立案に伴って必要となる分析を行う時間を置きます。例えば、顧客の離反傾向を把握し、離反原因を突き止め、「こういったアプローチをすれば離反を思いとどまってくれるのでは?」というアイデアを考えるための時間です。ここでは 24時間、3日相当と置いていますが、企業や担当者能力によって異なると想定されます。また個別担当者の能力やテーマ、キャンペーンによっても当然異なるため、平均値をここでは用います。

反応率改善分析: キャンペーン計画段階における、対象顧客、提案内容、利用チャネル、案内タイミングの検討と選択のための分析時間です。これらはキャンペーンを構成する要素であり、適切な要素を選択することにより、反応率の改善がなされます。またキャンペーン実施後の結果確認、それに伴う微調整の時間も含めます。ここでは同様に 24時間と置いています。

総時間: アイデア立案分析]と[反応率改善分析]の総和です。つまりここでは、1つのキャンペーンに対する分析として 48時間=6日間費やすことを想定しており、次回以降で触れるキャンペーン反応の改善率と、キャンペーン実行量は、この投資に導き出すことが可能であるという前提に立っています。

開発可能キャンペーン数の算出

開発可能キャンペーン数: [余剰時間] / [総時間]で算出した値です。例えば 1年後は余剰時間が 9,600時間想定しているため、48時間というキャンペーン単位時間で割ると 200 のキャンペーンを開発できるという計算が成り立ちます。ちなみに 2年目以降はより多くの余剰時間を導き出していますが、これは 1年目に必要な分析ツールの利用トレーニング、習熟に必要な時間を費やしているためにその分を除外、2年目以降はこの時間が不要となったために、余剰時間が増加したというシナリオ前提です。

以上、ここまでで、キャンペーンの質(反応率)と量(実行本数)を拡大、改善するためのリソース再配分がなされました。次回はこのリソースを利用し、キャンペーンの質と量が拡大、改善された場合の試算シナリオを検討します。

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