この本書は2017年4月1日にTeradata Japanのブログに掲載された内容を、再掲載したものです。
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著者 山本 泰史 (やまもと やすし)
顧客分析の手順
第24回: 顧客行動パターンの類型化に基づく提案検討
パターン検出分析を利用した分析例。2つ目の分析例として「優良顧客の育成」をテーマとした分析例をご紹介します。シーケンシャルな顧客行動のパターンが理解できれば、次にクロスセルすべき商品やサービスの方向性としてその知識を活用することが可能となります。
分析の前提
今回の分析データの対象としては、旅客企業の移動先を顧客行動データとして想定しました。図35A がそのグリッドチャートとなります。対象となる顧客セグメントとしては、2008年に東京発の各都市行を利用した顧客群で、指標値としては顧客数を利用しています。したがって、福岡、北海道、大阪、名古屋の各都市を横軸に指定しており、縦軸には 2008年4-6月を基準として、3ヶ月ごとに前後2期間を分析対象としています。また、基準となる顧客行動として、東京から福岡へ移動した顧客を対象にしています。したがって、2008年4-6月に東京-福岡間を利用した顧客 63,022名が同一期間、もしくはその前後のそれぞれ 6ヶ月間でどちらに移動したかを捉えています。
前後の顧客行動を把握
図35A をグラフで示したのが、図35B です。2008年4-6月期を基準に、-1 の期間が 3-6ヶ月前、-2 の期間が 6-9ヶ月前です。全体傾向としては、1月から 3月の期間で利用が大幅に落ち込んでいることが分かります。一方でそれ以外の期間に関してはコンスタントな利用が存在しています。ちなみに -2(2007年10-12月)と 2(2008年10-12月)の値は、ちょうど 1年後の同一顧客の行動を示しています(-2 と 2 の比較)。これを見ると若干の増加が見られますが、基本的な渡航先構成に変化が無いことがわかります。
そしてこの中で、名古屋、大阪への移動は需要に大きな変化が無いことが見て取れます。ビジネス用途(出張)で利用される顧客であれば、タイミングを問わず一定量、幾つかの都市へと移動されることが想定されるため、ビジネス用途でパターンの見受けられない顧客群も混じっていることが想定されます。
一方で大きな違いが見られるのは、北海道と福岡です。まず北海道に関してみると、2008年7-9月で多くの顧客が北海道に移動していますが、一方で他のタイミングでは極めて少ないです。4-6月期のゴールデンウィークで福岡、7-9月期の夏休み期間で北海道に移動したと考えると、国内観光旅行をされるセグメントかもしれません。一方で、福岡に 3ヶ月毎に行かれる方は一定数存在していますが、1-3月期と 7-9月期では減少しており、10-12月期では増加していることがわかります。したがって、端的には 6ヶ月に 1回、ゴールデンウィークと年末に、福岡に帰省する顧客が多く含まれているのかもしれません。1-3月期と 7-9月期で若干の量的違いが発生していることを考えると、夏休みに帰省される顧客が混じっていそうです。
アプローチの方向性
ここからこの分析には、以下 3つの行動パターンに類型されるセグメントが混在していることが見て取れます。
1. ビジネス利用、福岡中心に、大都市に一定頻度で移動する顧客群
2. 旅行利用、春は福岡へ、夏は北海道へ
3. 帰省利用、3ヶ月毎に帰省、6ヶ月毎に帰省、6ヶ月毎+夏休みに帰省
ビジネス出張の顧客に関しては、出張そのものが不定期であることから、マイレージ(ポイント)プログラムで利用頻度の維持/向上を狙います。旅行利用と想定される顧客群に関しては、関連するサービスをタイミングに応じてご案内することが考えられます。4-6月の福岡行き予約を促す案内、旅行会社等と提携したホテル、レンタカー等の追加サービス案内です。そしてこれと同様の案内を、今度は提案先を北海道に変え、7-9月期向けに案内します。また、これらの顧客が、福岡、北海道以外の需要があるのかも気になるところです。何シーズンもこの傾向ならゴールデンウィークや夏休みの予定が固定化していることが想定されますが、もしシーズンによって他の地域へ移動しているのであれば、シーズン毎に案内旅行先を変える、もしくはもっと幅広い旅行先を案内して、顧客に選択して頂いたほうが好まれるかもしれません(旅行先を吟味するのも旅行の楽しみの 1つですので)。
そして帰省利用の顧客に関しても、個別の帰省頻度を捉え、帰省タイミングと想定される前のタイミングで、予約を促すこととします。特にゴールデンウィークや夏休み、そして年末年始に関しては予約が埋まる前に案内をし、帰省顧客に関する需要を確実に押さえる必要があります。