この本書は2017年4月1日にTeradata Japanのブログに掲載された内容を、再掲載したものです。
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著者 山本 泰史 (やまもと やすし)
顧客分析の手順
第9回: 複数のセグメントを比較する
セグメントは、選定基準によって何らかの特徴づけがなされています。性別にとって分類された「女性セグメント」は、当然ながら女性の集団であり、それ自体が大きな特徴の一つです。しかしながら、本来このような形式でセグメンテーションを実施する理由は、「女性に特徴的な傾向」を理解するためであり、選定基準に性別を選択した段階で「女性」であることは明白であるため、それ以外の傾向を把握することが目的となります。今回はこのような特徴を理解するための方法を考えます。
セグメントが有している属性
顧客セグメントは常に、複数の顧客によって構成されています。したがって、このセグメントがどのくらいの「顧客数」によって構成されているかはそのセグメントを理解する上で重要な属性です。そして自社の顧客数全体に対してどの程度の割合を有しているかもここから導き出されます(「顧客数構成比」)。
また、そのセグメントをここまでで捉えてきた各種の変数で捉えることも可能です。平均的な買上金額、合計の買上金額、平均的な借入額、合計の借入額、特定商品/サービスへの利用の偏り(構成比)等がそのセグメントを特徴づけ、また、他のセグメントと比較を実施する際に役立てることができます。
他のセグメントとの比較
セグメント間での比較によって、得られる知識の最たるものとして、セグメント間の重要度が挙げられます。例えばセグメントA とセグメントB が、それぞれ同じ顧客数であるとすれば、平均的な支出額(=合計支出額)の大きなセグメントの方が重要なセグメントです。同様に平均支出額が同じ 2つのセグメントが存在し、それぞれのセグメント顧客数に違いがある場合には、顧客数の多いほうがより重要度が高いと言えます。以下の図16 は、2つのセグメントを比較した例です。いくつかの変数を用いることによって、セグメント間の違いを際立て、特徴を理解することが可能となります。
母集団との比較
同じテクニックを用い、自社の顧客数全体(母集団)と、特定のセグメントを比較することも可能です。図17 は図16 と同じセグメントを母集団と比較しています。これによって、自社顧客全体を基準とした場合の特徴を理解することが可能となります。
ただし、自社の母集団自体が偏っている可能性があることも認識すべきです。例えば自社の市場領域が日本国内であるとし、日本国人口の男女構成比が男性 : 女性 = 8 : 2 であるとしましょう。このとき、自社データベースの母集団における男女構成比が 6 : 4 であったとしたら、自社顧客には男性が多いと言い切れるでしょうか。絶対数で見た場合には確かにそうなのですが、人口という全体構造の中で相対的に見たら、女性が多いとも理解できます。自社の、データ取得範囲外である市場領域の基準値、そして自社母集団の基準値の両方で比較できれば、より正確なセグメント理解が可能となります。
もちろん男女構成比のように、統計資料等から拾うことができる変数ばかりではありません。そのため、優先順位としてまずは自社顧客を母集団として理解し、続いて可能であれば市場基準値とも比較します。
セグメントの利用
このようにして得られ、そして特徴付けられたセグメントは、以下に示すようないくつかの用途で利用できます。そしてこれは自社の顧客全体、つまり母集団に対しても適用可能なアイデアです。
1. 重要セグメントの時系列傾向を把握する:
特定セグメントが自社の収入および利益構造上重要であると理解できたとき、このセグメントの膨張と収縮が自社の収入、利益に大きな影響を与えることも容易に想像がつきます。したがって、時系列でこのセグメントに属するようになる新規顧客、このセグメント内で脱落/離反/解約する顧客の増減を継続的に監視する必要があります。また、当該顧客の支出額増減に関しても重要な監視対象です。このような管理を自社顧客において 8 - 9割を占める複数セグメントに対して実施していければ、それはすなわち自社の顧客数全体と、顧客から得られる収入、利益を管理できることとほぼ同義です。本稿の初回に、「新規顧客の獲得」、「顧客リテンション」、「優良顧客の育成」、「経費効率の向上」が顧客管理上の重要なテーマであると述べました。端的にはこれを指標値に落とし込み、セグメント別に指標値モニタリングすることを意味します。
2. さらなる分析の対象として利用する:
セグメントを分析の対象、つまり母集団として考え、そこに属する顧客群を特定の分析フォーマットに流し込むことによって、より深くそのセグメントを理解することが可能となり、そのセグメントに対して実施するべきキャンペーンのアイデアを導き出すことが可能となります。つまり、具体的な行動を規定するための分析にセグメントを利用することが可能です。顧客行動を「誰が?(顧客属性)」、「何を?(商品やサービス)」、「いつ?(タイミング)」、「どこで?(チャネル)」、「どの位?(定量指標)」の観点から分解し、キャンペーンを実施すべきポイント、決定すべき構成要素(誰に、何を、いつ、どこで案内すべきか?) を理解することが可能となります。
これについてはより詳細に解説する必要があるため、次回以降で、特定の分析フォーマットを利用した分析について解説していきます。