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この本書は2017年4月1日にTeradata Japanのブログに掲載された内容を、再掲載したものです。
掲載内容の正確性・完全性・信頼性・最新性を保証するものではございません。
また、修正が必要な箇所や、ご要望についてはコメントをよろしくお願いします。

著者 山本 泰史 (やまもと やすし)

顧客分析の手順

第1回: 顧客分析の目的

企業がデータを蓄積する理由 - それは知識を導き出し、自社の改善点や、発生するビジネス機会を見つけ出し、自社の業績改善に役立てるためです。そして「本当に知りたい」知識を得ることを考えた場合、多様なデータの中にそれは内在しているため、見つけ出すことはときに困難です。データを表層的に捉えただけでは、「本当に知りたい」知識に行き着くことができません。意図をもち、複数のデータを組み合わせて(つまり複雑な作業を積み重ねて)、分かりやすくすることが求められます。

「分析」とは、この分かりやすくすることを意味します。「分」も「析」も、1つのバケツの中に入っているものを、共通点や近似性、相違点に基づいて幾つかのバケツに選り分けるという意味の言葉です。バケツの中に、オレンジとリンゴが数個ずつ入っているとしましょう。一般に選り分ける基準は、それが「オレンジ」であるか、「リンゴ」であるかです。そしてそれを識別するには色、形状、大きさ、重さ、味等を利用します。これによってオレンジが何個あるか、そしてリンゴが何個あるかを把握可能です。

しかしながら、現実はより複雑です。喩えるなら、真っ赤なオレンジ、オレンジの形をしたリンゴ、リンゴ味のオレンジ ... このような物体が詰まったバケツがビジネス領域における分析の対象であり、そもそも「オレンジ」、「リンゴ」という名前からして存在しません。色、形状、大きさ、重さ、味はそれぞれに異なるため、どの属性/指標を基準にして共通点と相違点を設定するか、頭を悩ませることになります。

目的は企業業績への寄与

このような中で指針を与えてくれるのは、「目的」です。何を目的に分析するかで、採用する属性/指標は異なりますし、それによって抽出すべき知識も異なります。顧客分析の目的は、キャンペーンを中心とした顧客に対するアプローチを実施する際に、「誰に対して、何を、いつ、どのチャネルを通じて案内するか?」という行動を明確にすることが目的です。

そして、適切なタイミングで、適切なチャネルを通じて、適切な顧客に、適切な案内をできれば、顧客に対して無用なマーケティングプレッシャーをかけて気分を害することも無くなり、これに伴って無用な経費を垂れ流すことも少なくなり、何よりも顧客の金銭的負担を伴う支持を得ることになります。これが売上/収入であり、そこから経費を差し引いたのが、利益です。「利益が業績指標の全てである」とまで言い切るつもりはありませんが、最も重要な指標の 1つであることは確かであり、これを改善することが接客やキャンペーン活動の、そして顧客分析の目的です。

図1 をご覧いただきたいのですが、利益は売上/収入と経費の差分によって生まれ、これを最大化するためには売上/収入を最大化し、一方で経費を最小化しなければなりません(でも必要な経費はかけなければなりません)。売上/収入を最大化させるためには様々な方法がありますが、CRM/マーケティング/顧客管理といった分野に限れば、もっとも単純かつ強力な因子として、これを「顧客数」と「顧客単価」に分解できます。

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そして顧客数を増加させるためには、新規の顧客を獲得して固定化し、既存顧客を増加させること、そして既存顧客の離反/解約を防ぎ、顧客数を維持することに分解できます。これによって、4つの課題が浮かび上がります。新規顧客の獲得、既存顧客の維持(リテンション)、優良顧客の育成(支出の拡大)、そしてこの 3課題を経費効率よく実施することです。

顧客生涯価値の最大化

もちろん、顧客の意向を無視し、満足を得られない中で収入を拡大することは出来ません。これは倫理的/法律的な意味で詐欺行為やそれに近しい行為が認められないというばかりでなく、純粋に利益を最大化するという目的、経済的合理性からも衝突するためです。以下の図2 をご覧下さい。4つの課題(新規顧客の獲得、顧客リテンション、優良顧客の育成、経費効率の向上)を 1人の顧客に当てはめ、それを経時で示したチャートです。1人の顧客にあてはめた場合、得られる利益幅は LTV: Life Time Value (顧客生涯価値)と呼ばれ、手法や指標として LTV を考える場合には、将来的に得られるこの利益幅を予測する行為を指します。

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このチャートにおいて新規顧客の獲得とは、言い換えれば「なるべく早く取引を開始する」ことであり、顧客リテンションとは「なるべく長く取引を継続する」ことです。そして取引関係が継続している中で、無駄な経費( = 顧客にとっての付加価値とならない行為、それに伴う発生経費)を最小化することが求められ、一方で顧客からの期間あたり支出を最大化することが求められます。

この期間あたり支出の最大化は、顧客にとって財布の中身を減らすことを意味し、顧客からすればある意味では痛手です。しかしながらそれを許容できるのは、それと引き換えに価値ある商品/サービスを得られるからであり、それによって生活上のニーズを満たすことができるが故です。従って、企業は顧客に対して、その支出金額に見合う価値を提供しなければなりません。これが出来ない場合には、顧客は満足せず、離れていってしまい、顧客リテンション = なるべく長く取引を継続することが困難となります。これは顧客数に影響を与え、最終的には利益を減損させます。

そしてもう一つ考慮しなければならない点。顧客が一時に利用できるお金には限りがあります。人によって許容幅は異なりますが、それぞれ資産を有し、収入を得て、その範囲の中で支出をして、日々の生活を送っています。もちろん将来的な収入や既存の私有資産を担保に信用を得て、そこから必要な支出に充てる場合もありますが、これも限度があります。つまり、一時的に多額の支出を顧客から得て売上/収入を最大化し、あとはサヨナラという商売の形態よりも、長期に渡って取引関係を継続していくほうが、最終的には売上/収入、そして利益の最大化につながるのです。

長期に渡って取引関係を継続する際、だまし/だまされて不満足が発生するよりは、支出額に見合う価値が交換され、お互いに満足が得られるように努めるほうが、関係の継続が容易です。もちろんこの前提の範囲内で支出額を増額してもらうための努力をすることは必要ですが、これらの前提なくして信頼の醸成はあり得ず、関係の継続も成り立ちません。話を図2 に戻すと、この売上/収入から経費支出を差し引いた利益幅を 4つの観点から最大化することが、顧客分析の目的です。

次回は分析を進めていくための枠組みについて整理します。

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