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顧客分析の手順 - 分析フォーマットの適用例: パーセンタイルプロファイリング 獲得顧客の利益性デシル

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この本書は2017年4月1日にTeradata Japanのブログに掲載された内容を、再掲載したものです。
掲載内容の正確性・完全性・信頼性・最新性を保証するものではございません。
また、修正が必要な箇所や、ご要望についてはコメントをよろしくお願いします。

著者 山本 泰史 (やまもと やすし)

顧客分析の手順

第14回: 獲得顧客の利益性デシル

今回から 3回にわたり、「パーセンタイルプロファイリング」という分析手法を利用した分析例をご紹介します。今回ご紹介するのは「新規顧客の獲得」に関する分析例、具体的には獲得した新規顧客の収益性に関する分析です。

分析の前提

今回の分析例は特に業界を問わない汎用的な分析例ですが、顧客毎の利益額を把握できることを前提にしています。利益額は単純には、得られた収入から、商品/サービスの原価を差し引き、各種の経費を差し引いて得られます。考え方としては単純なのですが、発生した経費を顧客別に割り振るためには様々な按分処理を行なったり、時には経費インプット方法を変更したりしなければならないため、実施は単純ではありません。

例えばキャンペーンの経費 1つとっても、ダイレクトメールの葉書代金、クリエイティブ作成を外注した費用、印刷費用、郵送費用が発生します。またそれをコーディネイトするマーケティング担当者の人件費も費用です。これらはキャンペーンを案内した顧客に対してのみ、等分に付与されなければなりません。次いで、これらの顧客が何らかの商品やサービスを購入していただけた場合、それぞれの商品/サービス原価と、これに併せて実施されたインセンティブ(景品代、ポイント付与等)を反応顧客に対して付与する必要があります。これらを得られた収入から差し引いて初めて正しい利益額が算出できます。肝はこれをアクティビティ・ベースで実施することです。平均的な経費額を全ての顧客に付与すれば、利益額は押しなべて「収入マイナス x円」にしかならず、それなら収入額を理解しているのとさしたる違いはありません。

一方、このような形式で利益額を正しく把握することができれば、それぞれの顧客に対してどれだけの経費を追加的にかけることが可能かを把握できます。経費をかけてマーケティング案内をしても反応が無いのであれば、それを止め、より投資効率の高い対象へと振り向けるべきです。

セグメント内構造の理解

パーセンタイルプロファイリングは、顧客セグメントを特定の定量指標に基づいて並び替え、並び替えた順に任意の数に分割し、特定定量指標に基づいて考えた場合に、各顧客がどのように分布しているかを理解するための分析です。

図22A では、昨年度新規に獲得した顧客が、その後の 1年間でどのような利益パフォーマンスであったかを把握しています。顧客を利益金額に基づいて並び替え、利益金額の高い順に 10 のグループに分割して、グループ毎の顧客あたり平均利益金額、そして利益金額合計を把握しています。片方が新規顧客の中でも 20歳代男性を対象としたグリッド、もう片方が新規顧客で 20歳代女性を対象としたグリッドです。

これを見るに、まず対象となる顧客数が男女で異なっていることを把握できます。10 で割っているため、男性が 10,000名、女性が 15,000名の獲得結果です。そして番号1、つまりデシルランク 1 の顧客を比較すると、利益金額ベースで倍のパフォーマンスの違いが出ていることが分かります。また、一方で下位ランクに目を移すと、女性の方に赤字顧客が多いことが分かります。そしてこういったデシル分析ではお決まりの結果ですが、男女共に上位ランク顧客で利益の大部分を占めており、非常に貢献度が高いことが分かります。

image.png

図22B、そして図22C をご覧いただくと、この傾向はより顕著に理解できます。男性セグメントは得られた利益金額は女性セグメントに比べて各ランク共に小さいですが、ほとんど赤字のランクはありません。一方で女性セグメントは振り幅が大きく、ランク7以下の顧客群における赤字で、ランク3 からランク6 の利益金額がほとんど吹っ飛んでいます。

image.png image.png

アプローチの方向性

最初にこの赤字に陥っている顧客群について検討します。赤字に至る理由は 2つあり、1つは商品やサービスの利用において、もともと収益性の伴わない商品やサービスを顧客が頻用しているケースです。例えば小売業であれば赤字覚悟の安売り商品のみ購入する顧客がこれに当てはまります。もしこれに該当するのであれば、商品開発部門やプライシングを管理している部門でこれを改善する必要があります。ただ、現実にこのような取引を許容する企業はそんなに多くないと想定されるため、もう 1つの理由が現実的です。

それは、より多くの商品やサービスを購入/利用いただこうとマーケティングアプローチを重ねたが、一向に好ましい反応を得られず、結果として赤字に陥ってしまうケースです。既に投下してしまった経費は帰ってこないのでどうしようもないですが、これらの顧客に特有の傾向を掴むこと、そしてマーケティングアプローチを実施するにあたって覚悟する経費幅やアプローチ回数を予め決定しておくことです。

これらの顧客に特徴的な傾向を理解できれば、今後新規顧客を獲得できても、同一傾向を有する顧客に対しては経費支出上の優先順位を下げる、もしくはなんらマーケティングアプローチを行なわないという意思決定ができます。

また、後者の決定(覚悟する経費幅やアプローチ回数の決定)によって、その損失幅をある一定以上に抑えることが可能となります。これはこのように考えることもできます。経費として顧客あたり 10,000円まで許容する、もしくはアプローチの回数として 3回までを許容するとした場合、ここまでの経費はテストマーケティングの経費として捉え、このアプローチまでで、今後積極的にアプローチを実施するべき顧客なのか、何のアプローチをしても反応の無い顧客なのかを選り分ける期間として考えます。

そしてこの赤字幅以外を考えれば、顧客数が多く、また顧客あたりの平均利益金額も大きいのは女性です。今後の顧客獲得にあたって重視するべきは男性よりも女性に向けて効くメッセージを訴えていく、そして女性からの接触が多い媒体を選択するほうが、高い経費効率を期待できます。

新規に獲得する顧客の分析は難しいですが、獲得した顧客の分析は可能です。そして獲得した顧客から「自社にとって重要な顧客」と「相対的に重要でない顧客」を選り分け、それぞれのプロファイル上の違い(性別や年齢、利用している自社商品やサービス、特徴的な顧客行動等)を明らかにします。この違いが分かれば、ここから逆算し、「自社にとって重要な顧客」を獲得できそうなチャネル/媒体、そしてメッセージを選択することが可能となります。

加えて可能であるならば、さらにこの「相対的に重要でない顧客」の長期的な生涯価値を予測し、将来的に利益改善が想定される顧客と、結局生涯価値ベースでも利益を得られない顧客と選り分け、両セグメントの違いを明らかにします。もしくはこれらの顧客群を追跡し、長期的には利益性が改善した顧客と、しなかった顧客にさらに選り分け、両セグメントの違いを明らかにします。これによって、今現在は利益性を伴わなくとも、長期的に改善する顧客群の特徴や改善に必要な手立てが理解できますし、今後の新規顧客獲得時における次善のチャネルや媒体、そして対象顧客群の選択肢も生まれます。

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