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この本書は2017年4月1日にTeradata Japanのブログに掲載された内容を、再掲載したものです。
掲載内容の正確性・完全性・信頼性・最新性を保証するものではございません。
また、修正が必要な箇所や、ご要望についてはコメントをよろしくお願いします。

著者 山本 泰史 (やまもと やすし)

チャネル最適化のための分析

第5回:必要となる分析環境の考察

さて、前回まででご紹介してきたような分析を実現するためには、どのような分析環境が必要となるでしょうか。実際にシステムとして実装する際には、データを分析する主体である、ユーザーの利用形態を想定する必要があるでしょう。

最初に、全社的に共有していくような分析レポートは定型レポートとして提供していくことによって、同じ視点で把握し、かつ簡単に情報にアクセスできるようにしなければなりません。但し、ユーザーによって絞込みの条件が異なる場合も想定されます。例えば 3-7 の分析例であれば、あるユーザーは特定の数ヶ月間を把握したいと思い、別なユーザーは異なる部品の状況を把握したいと考えるでしょう。これらに対応するためには、ユーザーが自由に条件を指定できなければなりません。

次にチームや個人用の分析レポートも必要になるでしょう。これは全社で共有している定型レポートと少しだけ体裁の異なる分析や、全社的なニーズは無くともそのチームや個人が分析を実施していく上では必要になるような分析です(図3参照)。

image.png

そして、前述のチームや個人用の分析レポートをセルフサービス型で作成していくための環境が非定型レポートの環境です。これは、ユーザーがご自身で絞込条件やレポートの縦軸、横軸に表示させるデータを選択し、まるで一からレポートを作るような感覚で分析をしていく手法です。この非定型レポートの結果を保存/再利用することにより、チームや個人用の分析レポートを充実させ、各個人のニーズに合わせた分析環境をセルフサービス型で提供することが可能となります。この非定型レポートのもう1つのメリットは、ユーザーが緊急で今までに無い条件に分析をしなければならない場合にも利用できるということです。例えばサービス開発やビジネス企画を担当しているユーザーの方であれば、突発的で多面的なデータ分析のニーズがあることが想定され、このようなケースで非定型レポートは大きな威力を発揮します。

そして最後に、この定型レポート環境と非定型レポート環境の関係が考慮されなければなりません。定型レポートは、ユーザーが分析をするための最初の入り口ということができるでしょう。しかしながらそこから原因を探り、違う視点で検証していくためには、別な条件で分析をしていくことが必要になります。定型レポートによって発見された疑問が非定型レポートによる分析を促し、疑問に対する更なる回答を得ることが可能になると共に、ユーザーの分析スキルやデータに対する見方を育て、問題に対しての改善能力を高めることにつながります。

逆に、非定型レポートで発見された知識や、その知識の発見を容易にする分析レポート形式は、チームもしくは全社的に共有することによって組織全体のボトムアップにつなげることが可能となります。そのためには非定型分析の結果を保存、再利用できる環境が必要となります。

つまり、定型レポートと非定型レポートの環境は相互補完、そして相互作用をもたらす関係にあることを意味しています。従って、この2つの分析をスムーズに連携させるためには、2つの環境を共存させることが望ましい姿となります。そしてそのためには、データソースが一緒で、一元的なデータベース環境を基盤にすることが必要となります。

必要なデータ基盤の条件

データソースが一緒で、一元的なデータベース環境を説明するために、1つの例をご紹介します。

image.png

図4をご覧頂くと、同じ[コール受付数]という指標値を分析する際にも、ユーザーによっては見たいと思う切り口は異なることが分かります。ここでは週別、障害種別、事業所、顧客といった視点の違いについて触れていますが、日別で見たい方もいらっしゃれば、もっと長い期間で把握したい方もいらっしゃるはずです。これはユーザー毎に、またはユーザーでもそのときの分析ニーズによって異なり、そのパターンは膨大となることを意味しています。公約数的なニーズに対しては定型的なレポートで対応することも必要になりますが、それ以外のニーズに対しては、非定型レポートという形でユーザーが自由にデータの範囲や集約のレベルを設定できるようにするべきでしょう。

そのためには、データをそれぞれのレポートフォーマットに近い形で保持するのでは無く、データとして独立させ、同時に必要なリレーションを設定した、つまり一元的な形でデータを保持することが必要になります(図5参照)。

image.png

そしてこのデータ基盤上で、非定型レポートだけでなく、定型レポートを作成することによって、前述した相互補完/相互作用が実現しやすくなります。

まとめ - チャネル最適化の枠組み

最後に、まとめとして販売及びサービスチャネルを改善していくにあたっての枠組みについて触れていきます。

販売及びサービスチャネルの改善を行うためには、3つの点を考慮する必要があります。1つ目はプロセス指向のアプローチです。プロセスとは、一つ一つの作業や機能の順番を示したものです。A、B、Cという作業がA > B > Cの順番で行われる場合、ひとつにはAからBに、そしてBからCに顧客を引き渡していく際に、なるべく減耗させることなく引き渡すことが必要となります。この減耗が大きい場合はボトルネックが発生しており、何らかの改善が必要です。もう1つはスループットという考え方です。AからBにたどり着くための時間を短縮することによって作業の時間やコストを低減しつつ、プロセスを通る顧客や従業員のパフォーマンスを最大化することが可能となります。

2点目はリソースの最適化です。これは基本的に需要にあわせることが必要となります。需要にあわせることが出来なかった場合にはプロセス上でのボトルネックやスループットの問題を発生させることになります。固定的なリソース、例えばコールセンターの回線数に関しては需要のピークに合わせることが必要になります。そして可変的なリソース、同様にコールセンターであればエージェントの配置などはタイミング毎の需要を理解することによって、それにあわせてリソースを増減させることが必要となります。

3点目はチャネル最適化に関わらず、データ分析する上で重要になる点で、良い部分、悪い部分の両方から学ぶということです。良い部分に関してはなぜその素晴らしい結果をもたらすことが出来たのかを突きとめ、それを成功事例として共有化することによって、特定の個人や組織だけでなく全社的にボトムアップを図ることが必要となります。同様に、悪い部分に関してもなぜ悪いのかを突き止めることによって、改善策を講ずることが必要となります。

保持しているチャネルに対して、これらの観点から分析を実施し、分析から導かれた知識や意思決定をベースにチャネルの最適化に取り組むことによって、継続的に顧客サービスレベルや販売機会の向上を実現しつつ、チャネル運営のコストを低減させることが可能となります。

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