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顧客分析の手順 - 分析フォーマットの適用例:パーセンタイルプロファイリング 解約想定顧客の利益構造

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この本書は2017年4月1日にTeradata Japanのブログに掲載された内容を、再掲載したものです。
掲載内容の正確性・完全性・信頼性・最新性を保証するものではございません。
また、修正が必要な箇所や、ご要望についてはコメントをよろしくお願いします。

著者 山本 泰史 (やまもと やすし)

顧客分析の手順

第16回: 解約想定顧客の利益構造

今回はパーセンタイルプロファイリングを用い、顧客リテンションを目的とした分析例をご紹介します。

分析の前提

この分析例では、解約確率が高い顧客を対象にパーセンタイルプロファイリングを実施します。ここでは、データマイニングの作業を通じて、既に解約確率を顧客毎に付与済みであることを前提としています。解約確率 - これは離反確率、休眠確率と言い換えても良いですが - の高い顧客が、どのような定量的パフォーマンスを有しているかを把握することは重要です。

企業が「解約されて困る」場合、それはその顧客が自社の利益構成の一部を占めており、解約によってそれが減損するためです。これを裏返すと、赤字になってしまっている顧客が解約することは、「困らない」ということでもあります。

冷徹なコトを言うつもりはないですが、八方美人になんでも提供できる企業というのは稀です。従って自社のビジネス形態に合致した顧客もいらっしゃれば、合致しない顧客も確実にいらっしゃいます。日常的な企業活動の中で、このような顧客との取引が発生し、それが継続することも有り得えます。このとき、無理に取引や関係を継続し、赤字を発生させてしまうことは好ましいことではありません。その赤字を補填するのは、自社の商品やサービスに対してより多くの利益金額を与えてくれている優良な顧客であり、このような優良顧客にとっても、自社にとっても、報われない関係が長く続くことは得策ではありません。

もちろん顧客は自らが得られる価値に対して支出し、企業はそれに対して対価を払い、差分としての利益をプールします。利益は税金、株式配当等の形で企業のステークホルダーに対して分配されるだけでなく、投資として事業活動の継続/発展をするためにも用いられます。従って他の顧客、他の商品、他のチャネル、他の投資対象に投資されることは一定の範囲内において認められます。しかしこれも回収されるという見込みがあって成り立つものです。

解約顧客の利益性

このため、ここでは解約が想定される顧客の利益額に基づいてパーセンタイルプロファイリングを適用します。図25A がその分析例ですが、対象セグメントとして解約確率0.7以上の顧客に絞り込み、この顧客を対象として分析を実施しています。そして利益金額を基準に 7つのグループに分割し、それぞれのグループが有している利益パフォーマンスを把握しています。

image.png

これを見るに、ランク1 の約4,400万円の利益をもたらしてくれる 410名が解約の危機にあるという事実はショッキングです。これらの顧客を維持すべきという意見に異を唱えることはないと思います。そして、利益額が赤字になっているのは、ランク6、およびランク7 の顧客群です(もしかしたらランク5 の顧客群も)。これは、図25B を見るとさらに明らかです。

image.png

アプローチの方向性

まず、利益貢献度が高い顧客に関して。何らかの維持施策が必要であることは明らかです。これらの顧客プロファイルをさらに確認して、どのような顧客群か、何か不満の傾向があるのかを把握することが必要です。また確率をはじき出した数式が、どの変数を大きな確率上昇要素として捉えているかも参考になると思います。

そして、赤字もしくは利益額の薄い顧客群に関して。まずは赤字の原因を理解し、それらを改善する可能性があるのかを判断します。大別すればそれは、無用なキャンペーン案内経費をかけてしまっているのか、そもそも商品/サービス原価が顧客支出額と伴っていない構造になっているのか、のいずれかです。前者の場合には単純にこれ以上の経費支出をストップします。そしてこれによって利益構造が改善するのであれば、解約阻止の施策の実施対象として含めます。

一方、後者の場合は何のアクションも必要ありません。維持施策の経費が効けば、これまで以上に赤字を増大させることになります。残念ですが、このままではこれらの顧客群とはこれ以上ビジネスできません。もちろん契約上取引を継続しなければならないのであれば、それはもう勉強料として最低限の赤字を覚悟しなければなりませんが、もしそうでないならば、このような赤字をもたらしている商品/サービスの価格を見直すことも必要です。

但し、マーケティングだけでなく、企業全体の問題としてこの問題点を捉えた場合には、価格を見直す前にすべきことがあります。とるべき手順としては以下の通りです。

1.商品/サービスの機能や属性の中で、無用な経費(顧客に求められていないサブ機能やサービス)が存在しているかどうかを確認し、そのような経費支出の原因が存在しているのであれば、それらの機能やサービスを取りやめる。
2.更なる経費支出をもカバーするような高い価格設定をできる機能/属性を追加する、もしくは別の商品/サービスで利益回収する、等の手段により赤字をカバーできるよう商品/サービス体系を改善する
3.1. および 2. を以ってしても利益構造が改善しない場合、当該商品/サービスに関する価格設定、価格構造を見直す。これによって赤字につながる取引を実質的にストップする。
要は、提供している商品/サービスや、その組み合わせ、そして機能要素に手を加える余地があるかを検討することが必要です。これはどちらかというと商品/サービス開発分野の専門となります。組み合わせの仕方で顧客支出額を改善できる、もしくは顧客満足に大きな影響を与えずに商品/サービス原価を改善できる点があるかを探すことができれば、これらの顧客からの利益を改善することが可能となります。

価格は顧客が購入/利用を決定するにあたって検討する要素の 1つでしかありませんが、それによって顧客の支出が決定されるため、重要な要素でもあります。また、競合他社との関係の中で競争力のある価格であることも求められます。従って、企業としてはこれを機会にコスト構造を改善できるのであれば、まずそれを検討すべきです。

次回からは、クロスセグメント分析を利用した分析例についてご紹介します。

Teradata Vantageへのお問合せ

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