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本書は2017年4月1日にTeradata Japanのブログに掲載された内容を、再掲載したものです。
掲載内容の正確性・完全性・信頼性・最新性を保証するものではございません。
また、修正が必要な箇所や、ご要望についてはコメントをよろしくお願いします。

著者 山本 泰史 (やまもと やすし)

セグメンテーション/ターゲティングの考え方

第3回:セグメンテーションの基礎 - 2

セグメンテーションの基礎2 - 属性の種類

前回にご紹介した変数の種類に続いて、属性の種類について紹介していきます。 変数とは、その個人がどのような特徴を保持しているかを量的、もしくは質的に表したものです。そして個人の特徴とは、デモグラフィック属性、サイコグラフィック属性、ビヘイビアル属性の 3つに大別されます。

デモグラフィック属性は、年齢、性別等の身体的な特徴や、その名の通り人口統計として利用されるような地理的な居住地域や世帯人数、保持している車の種類や年数等、その個人や関連する保持物の外見的な特徴を変数化したものです。 これに対してサイコグラフィック属性は、主にアンケートデータ等から採取され、その個人がどんな意図や欲求、嗜好性、反応を保持しているかといった内面的な特徴を変数化したものです。 買うつもり/買うつもりは無い、欲しい/欲しくない、好き/嫌い、良い/悪い等といったある事象に対する心理的な特徴や、趣味、欲しいもの等の嗜好性を変数化します。 そしてビヘイビアル属性は、その個人の実際の行動を変数化したものです。従来から、ダイレクトマーケティングの業界においては最終来店日や来店頻度、支出額等は集計され、RFM : Recency Frequency Monetary という形でスコア化されてきました。 企業から見た場合、何らかのコンタクトがあったり、取引があったりという情報がこれらのソースとなりますし、時にはそのソースそのものがビヘイビアル属性として活用できるものです。 それらはインタラクション、トランザクションデータと呼ばれ、その企業のチャネルから採取することが可能ですし、通常採取しているデータでもあります。購入した商品や、その商品属性、利用したチャネルやそのタイミング、支出金額や、金融業における返済履歴、通信業における通話時間等がそのセグメントの生活パターンや行動の範囲、嗜好性を表すものであり、これらを複数組み合わせることによって、その顧客に対する解像度はより高くなることでしょう。

それでは、これらの属性種類間において、優越はあるのでしょうか。 結論から言えば、どの属性も絶対的なものではなく、その優越を決めるのは実施するキャンペーンであり、実施するキャンペーンによって属性間の優越は異なります。 実施するキャンペーンやそこで対象となる商品群と最も合致するのがいずれの属性であるかという観点から選択されるべきです。そしてその為にはこれらの属性を複数組み合わせて利用することも重要な手法になることでしょう。 そもそも、ある属性を保持しているが故に絶対にそのキャンペーンに反応する、対象となる商品を購入するということはありえません。有限であるキャンペーン資源をどの顧客に向けるべきかという問いに対して、広範かつ詳細な選択肢を提供するのがセグメンテーションであり、その中から少しでも合理的で可能性の高い選択を行うのがターゲティングです。 例として、女性向けのイヤリングをキャンペーンで仕掛けるときに、それぞれの属性を選択した場合の肯定論と、否定論を挙げます。

デモグラフィック属性 :

女性がイヤリングを購入するはずである。

ターゲットとなる顧客におけるデモグラフィック属性の変数と商品の属性が一致しているという意味においては合理的ですが、一方で女性という属性に絞るということは最も基礎的な変数を約半分に絞ったというのみであり、女性も様々です。 ファッションや個人のスタイルという観点から装飾品を身につけない女性もいらっしゃることでしょうし、イヤリングの種類(デザインや素材等)そのものに対する好みも存在することでしょう。従って、この点からは絶対的な判断は出来ません。

サイコグラフィック属性 :

“イヤリングが好き”とアンケートに答えた人がイヤリングを購入するはずである。

ターゲットとなる顧客におけるサイコグラフィック属性の変数と、商品が一致しているという意味においては合理的ですが、一方で答えに対する確実性の度合いは様々な観点から異なります(以下参照)。この点からは絶対的な判断は出来ません。
購入可能性に対するギャップ
イヤリングは好きだが、この商品は嫌い、値段が高い等の理由で購入意欲がわかない。
イヤリングは好きか嫌いかと聞かれれば好きだが、さして買いたいとも思わない。
イヤリングは好きなのでたくさん持っている。よって今は欲しくない。

ビヘイビアル属性 :

過去にイヤリングを買った人がイヤリングを購入するはずである。

ターゲットとなる顧客におけるビヘイビアル属性の変数と商品の属性が一致しているという意味においては合理的ですが、一方で当該属性は過去のものであり、未来に対する確実性を示すものではありません。この点からは絶対的な判断は出来ません。
購入可能性に対するギャップ
同じようなイヤリングは既にあるのでもう必要ない。
過去にイヤリングを買ったが、結局自分には似合わないことがわかった。
ここで紹介した例は、デモグラフィック、サイコグラフィック、そしてビヘイビアル属性をベースに購買予測の判断をした際に想定される是非論を対比させたものです。 将来の顧客行動を正確に予知することは不可能であり、少しでも合理的なターゲットを選択するしかありません。上述した例において、男性で、イヤリングが嫌いと答え、過去にイヤリングを買ったことの無い顧客にアプローチすることと比べたら圧倒的に合理的であることは想像に難くありません。 結局のところ合理的な顧客を選択するためには、昔ながらのデモグラフィック属性、そして非常に曖昧な“心理的側面”を質的変数に閉じ込めたサイコグラフィック属性、そしてビヘイビアル属性を総動員して、手元にある知識の中からベストといえる顧客グループを絞り込むしかありません。 但し、関連する属性、中でも今まで活用されてこなかったビヘイビアル属性を上手に取り入れることによって、特定の商品案内や、キャンペーンに合致するであろう顧客リストの精度を高めることが可能となります。例えば複数回イヤリングを購入している顧客の場合、オファーするイヤリングのデザインにおいて、過去に購入したものとの類似性が低ければその購買可能性は高いかもしれません。 自社ブランドの、イヤリング以外の商品カテゴリーは全て購入しているためにブランドロイヤルティが高いことが想定でき、かつ今までイヤリングを案内していないのであれば、案内する価値はあるといえます。
“百聞は一見に如かず”と言いますが、ビヘイビアル属性はその人間が過去に行った行動がベースとなっており、その属性が持つ現実性は他の属性に比べて非常に優れているものです。どんな商品を、いつ買ったのか、どんな頻度で、どのようなチャネルを介してコンタクトがあったのか、どのようなキャンペーンに反応を示し、逆にどのようなキャンペーンには反応を示さなかったのか等、ターゲティングに必要なリアリティを如実に示してくれるだけでなく、実施するキャンペーンの手法に対しても示唆を与えてくれます。もちろん一方でそれ以外の属性の価値をおとしめるものではありませんが、ビヘイビアル属性は大きな価値を内包した属性であることが分かります。

次回以降は、これらの属性および変数を利用したセグメンテーションの手法について論を進めて行きます。

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