はじめに
Raspberry Pi 5では性能の向上に伴い、発熱量が増加しています。Raspberry Piのドキュメントには下記のような記載があり、thermal throttlingにより自身の発熱でSoCが破損することはないものの、ヒートシンクやファンを使うことでthermal throttlingを防いだり、性能を向上できるとされています。
Thanks to built-in throttling, heatsinks are not necessary to prevent overheating damage to the SoC. However, a heatsink or small fan can reduce thermal throttling and improve performance. Mount the Raspberry Pi vertically for the best airflow and thus slightly improved heat dissipation.
また、Raspberry PiからRaspberry Pi 5に装着可能な「Raspberry Pi Active Cooler」も発売されており、併用している方も多いのではないでしょうか?
しかし、弊社の4GPiやslee-Pi 3のようなHAT(Hardware Attached on Top)基板をActive Coolerを装着したRaspberry Pi 5に搭載すると、Active CoolerのファンとHAT基板の隙間が狭くなってしまい、性能を十分に発揮できないことが懸念されます。
そこでActive Coolerを装着したRaspberry Pi 5にHAT基板を搭載し、CPU温度の計測を行いました。
機器準備
- Raspberry Pi 5 RAM 2GB ×2台
- Raspberry Pi Active Cooler ×2台
- slee-Pi 3 ×2台
- ACアダプタ(12V/2A)×2台
- 延長用ピンヘッダ2x20(40P)、基板固定用六角スペーサ(M2.6) ×4本
上記を使用し、下記のようなスペーサ追加あり/なしの2種類の組み合わせを準備しました。
CPU温度の計測は1秒ごとにvcgencmd measure_temp
を実行し、CSVファイルに書き込みました。また、起動直後にpinctrl FAN_PWM op dl
を実行し、Active Coolerのファンが常に動作するようにしました。
アイドリング状態での計測
スペーサ追加あり/なしのそれぞれでRaspberry Pi 5を起動し、特に何も操作をせず、アイドリング状態で1時間稼働しました。CPU温度の計測結果は以下の通りでした。
スペーサ追加なしの方がCPU温度が若干高くなる結果が得られました。Active CoolerとHAT基板との隙間が狭いため、Active Coolerのファンによるエアフローが十分に働いていないことが予想されます。
30分以降の平均値を比較すると、スペーサ追加あり: 29.9℃/なし: 31.4℃となり、1.5℃程度の差が生まれるようです。
CPUに負荷をかけた状態での計測
続いて、起動直後にyes > /dev/null &
を4回実行し、CPUに負荷をかけた状態でCPU温度の計測を行いました。なお、実行中はCPUの使用率が常に100%となっていました。計測結果は以下の通りでした。
アイドリング時と比べて、温度の差がより顕著となりました。30分以降の平均値を比較すると、スペーサ追加あり: 44.3℃/なし: 49.8℃となり、5℃以上の差が生まれる結果となりました。
HAT基板のサイズによる影響
これまでの計測で使用したslee-Pi 3はラズパイと比べると長辺方向が短いサイズとなっています。しかしHAT基板の中には弊社の4GPiのようにラズパイと同じサイズのものもあるかと思います。
そこで、スペーサを追加せず、HAT基板との隙間を狭くした状態で、Active Coolerを装着したRaspberry Pi 5にslee-Pi 3もしくは4GPiを搭載し、CPUに負荷をかけた状態で1時間稼働し、CPU温度の計測を行いました。
計測結果は稼働後30分以降の平均値で、slee-Pi3を搭載: 48.2℃/4GPiを搭載: 50.4℃となりました。基板サイズにより、Active Coolerのファンによるエアフローに影響があることが予想されます。
続いて、4GPiをRaspberry Pi M.2 HAT+に入れ替えて、同様にCPU温度の計測を行いました。計測結果は稼働後30分以降の平均値で、slee-Pi3を搭載: 50.5℃/M.2 HAT+を搭載: 48.2℃となりました。
M.2 HAT+はslee-Pi 3と比較して、部品点数が少なく、スリットがあることや、ピンヘッダ部に隙間ができることもあり、よりActive Coolerのファンによるエアフローが良く働いたものと思われます。また、slee-Pi 3のCPU温度が4GPiとの比較時よりも高くなっていますが、これは計測時の室温によるものと思われます。
まとめ
今回の計測により以下のことが分かりました。
- アイドリング状態のCPU温度の平均値は、スペーサ追加あり: 29.9℃/なし: 31.4℃となり、1.5℃程度の差が生まれた。
- CPU負荷を100%とした状態でのCPU温度の平均値は、スペーサ追加あり: 44.3℃/なし: 49.8℃となり、5℃以上の差が生まれた。
- ラズパイ大のHAT基板と、ラズパイより長辺が短いHAT基板で比較すると、ラズパイ大のHAT基板を搭載した方がCPU温度の平均値が高くなった。また、スリット等のあるHAT基板ではよりCPU温度の平均値が低くなった。
Raspberry Pi 5を使用する際の参考になれば幸いです。