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企業向けブロックチェーンビジネスについてあれこれ語ろう!Advent Calendar 2024

Day 20

ロボットが、経済的に自立する世界 〜ブロックチェーンとの融合と企業向けビジネスの可能性〜

Last updated at Posted at 2024-12-20

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はじめに

近年、ロボットの技術進歩は目覚ましく、米OpenAI出資のロボット企業が家庭用人型ロボットを2024年中に家庭への試験導入、2025年以降に一般市場へ投入される見込みとのこと。
これらのロボットは今後、自律(Autonomous)動作だけでなく、経済的な自立(Independence)をも視野に入れる時代へと突入しようとしています。

本記事では、「自律」と「自立」の違いから始まり、ロボットが自ら稼ぐ存在へと進化する必然性、そしてそれを支えるブロックチェーン技術と、企業向けビジネスへの応用可能性について掘り下げます。

目次

  1. 2025年、ロボット元年となる背景
  2. 自律と自立の違い
  3. 経済的自立ロボットの出現とインパクト
  4. 人間の収入モデルをロボットへ応用する
  5. シェアリングエコノミーとロボット
  6. 予期的調整で進化するロボット
  7. ロボット導入の加速と寡占化、全体最適化への流れ
  8. ブロックチェーンとの統合がもたらす所有なきロボット経済
  9. ロボットが社会にもたらす新たな文化的生活
  10. 結論

2025年、ロボット元年となる背景

AIや制御技術の指数関数的進歩により、2025年頃には家の中で二足歩行し、複雑なタスクをこなすロボットが想定以上に早いペースで「ロボットが身近な存在」となる未来が訪れそうです。
シミュレーション(SIM2REAL)により何万年というスケールで進化的に身体制御を生物レベルへ高め、ワールドモデル(マルチモーダル大規模言語モデル)により人間や他の哺乳類のように未来をイメージとして想像し予測するなど、これまでクリアできなかった様々な課題が嘘のように突破され、少なくとも50年では到達できないと思われていたような人間を代替できる程のロボット制御技術が、高い確度をもって実現しようとしています。


自律と自立の違い

自律(Autonomous)

  • 外部からの詳細な指示なしに、自分で状況判断し行動できる能力
  • 自動運転車は自律的に移動するが、目的地自体を生み出すことはない

自立(Independent)

  • 外部支援なしに、自ら目的を設定し、手段を講じて自分の存在を維持し発展させる能力
  • 人間ならば、仕事で収入を得たり、問題解決し、生活を営むことを指す

人に置き換えて想像してみると分かりやすいかもしれません。
例えば、自律した人というのは

  • 自分で立っていられる人
  • 自分で食事が出来る人
  • 自分で目的地に移動できる人

こういった状態や能力を指します。
一方で、自立とはどういう状態を指すでしょうか?
生活するために、生きていくために、自分で目的や方向を決め、その理由や優先順位などを判断して行動する人を指します。

したがって一般的に自立している人とは、他者の支援や依存を受けずに、自分の能力や経済力、身体などを用いて生活や仕事に取組み、問題を解決できる人ということになるでしょう。

しかしほとんどの人は、他者の支援や依存を受けずに生活や仕事は出来ませんが、それでも自立していられます。
自立するために必要な条件というのは、自分自身の存在を維持する手段を持っているかどうかという点なのです。

要するに、価値提供とその対価によって互いに他社の支援を受けられる能力、つまり現代社会における自立というのは、おおよそ経済的自立に該当します。

一般的に、自分の身の回りのお掃除ができなければ、自立しているとは言えませんが、家政婦さんや清掃業者へ依頼する経済力があれば、その人は自立していると言えるはずです。

したがって、ロボットが自立するとは、ロボットが経済的基盤を持ち、自ら稼ぐ主体となることを意味します。


経済的自立ロボットの出現とインパクト

ロボットが自立し新しい人間の装備(もしくは環境)となるためには、経済的自立が鍵となります。
ロボットが労働やサービス提供で得た収益を用いて、自身の維持費やアップグレード費をまかなうことで、ロボットが数的・機能的に急増し、爆発的な普及が進む未来も見えてきます。
そうなれば、労働という言葉は死語になり、私たちの生活や経済活動は大きく変革する可能性すらあります。


人間の収入モデルをロボットへ応用する

人間と同様に、ロボットも以下の収益モデルを構築できるでしょう。

  • 労働収入:配膳、清掃、巡回など、物理的サービスの提供対価
  • ビジネス収入:ロボット自体をデジタルサイネージとして活用し広告収入を得る
  • 投資収入:将来的には、ロボット同士がサービスやパーツを取引し、投資的に利益を得る可能性も

これら収益モデルは、電子決済やスマートコントラクト技術と連動して実装可能です。


シェアリングエコノミーとロボット

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世にある自動車のほとんどは、1日のうち、実に95%以上駐車場に放置されており、人間が運転している5%の時間帯以外は役に立っていませんが、自動運転車の場合、ロボットタクシーとしてその時間人を運べば、収入を得ることができます。
こういった経済モデルをシェアリングエコノミーモデルといいます。

この例にもれず、1台のロボットを複数の店舗や企業でシェアすれば、稼働率は大幅に向上し、利用頻度に応じてロボットへ対価を支払う「ペイ・アズ・ユー・ゴー」モデルは、リスクを下げ、導入障壁を減らします。
こうしたシェアリングエコノミーは、ロボットが経済的自立を果たすのに重要な役割を果たすでしょう。

では、人間と同じようにロボットが、労働による対価や、非労働による対価、投資による対価を受け取れるようにするとどう変わるでしょうか?

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代表的なところで労働者としてデリバリーロボットを考えてみます。
このロボットは、料理や商品を届けて、そのサービス料金を得ます。

ウーバーイーツなどをまず思い浮かべますが、こちらは、タスクが複雑でかつ高性能で多機能なロボットが求められますから、少し先ということでひとまず置いておきます。

例えば、ショッピングモールのような場所にあるフードコート、つまりいろんなお店が集まっているタイプの飲食スペースを例にします。


ロボットは、注文した料理が出来上がったら、該当のお店に向かい、料理を受け取ります。(料理を乗せてください~という感じでしょうか)
お客は自分の場所が分かる様に、お店で注文したときに、専用のタグを渡されますから、それを持っています。
そのタグを目指してロボットはお客の元へ料理を運びます。

ここまででロボットの任務は完了なのですが、ロボットは1回料理を運ぶごとに、そのお店から対価を徴収します。
お店ごとに配膳の利用回数をカウントして月に一回請求する訳ですが、もちろん、その都度、お店から電子決済を行ってもらってもいい訳です。

こうやって、沢山のお店がロボットを利用できる環境で、必要に応じてロボットは働くことが出来、その対価を得ることが出来ます。

お店としては、運んでもらった回数分の費用しかかかりません。
使いたくなければお願いしなければいい訳です。

1回の配膳で10円の対価をお店から徴収したとすると、10店舗あるフードコートで1日平均100回の呼び出しが起これば、ロボットは、1日1,000円の対価を獲得することになります。

ロボットにはまだ別の仕事があります。
それは、広告ロボット、営業ロボットとしての役割です。

ロボットは、走行しながらお店のCMを行うことが出来ます。
ロボットの背面にセカンドモニターを付けておき、そこにCMを流しながら配膳のためにフードコートを縦横無尽に動き回ります。

こちらも、100回で50円、10分100円ほどの料金で、お店はスマホからロボットへ動画や音声を渡してCMをお願いします。

また、お客が少ない時間帯、ロボットは時間を持て余します。
そういった場合は、お店へ集客の必要がないかロボット自ら営業へ向かいます。

お店からお客を呼んできてほしいと頼まれれば、ロボットは、フロアやその外にいる客へ声をかけて集客します。
「コーヒーいかがですか~」というような感じです。

お客を連れてきて、注文が発生したら、お店に承認してもらい決済が完了します。
こちらも、一人連れてきたら50円とか100円で働く感じでしょうか。

さらに言えば、夜間や人員の少ない時間帯に数時間だけ特定の場所の警備や巡回をお願いすることもできますし、インフラの保守もできます。
例えば、壊れた机やいすはないか?飲み物がこぼれていたり、床やテーブルは汚れていないか?トイレットペーパー無くなっていないか?など人間に変わって保守点検をお願いすることも出来ます。

このように、ロボットが自ら能動的に収益を生み出すもしくは、収益を生み出す工夫をすることで、ロボットが、経済的に自立する未来が見えてきます。


予期的調整で進化するロボット

経済的自立を果たすロボットは、より多くの利益を生み出すために「予期的調整」を行います。
先読みして行動することで、問題発生前に対策を打ち、顧客満足度や稼働効率を最大化します。
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コンピューターやスマートフォンで動くソフトウエアとしてのAIでは、人を呼んだり、声をかけたり、面と向かってお願いしたりは出来ませんから、予期的調整を効率よく実行するのは困難です。

人を呼んだり、声をかけたり、面と向かってお願いしたりする。
たったこれだけの違いですが、そこには大きな隔たりが存在します。

移動して声をかけるという簡単な動作しかできないロボットであっても、出来る仕事は飛躍的に増加し多くの成果を上げることが出来ます。
人の計画や行動にコミットすることが出来るのも、フィジカル(身体)があるからこそです。

筆者は、この経済的自立可能なロボットが2025年から導入されはじめ、数年で世の中の主流になると考えています。
逆に言えば、経済的自立可能なロボットに対し、自立できないロボットが太刀打ちできる未来は全く想像できません。


ロボット導入の加速と寡占化、全体最適化への流れ

ロボットが普及し、ある程度標準化されると、プラットフォームOSやサービス基盤が寡占化され、巨大なエコシステムが形成されます。
そこから先は、個別最適を超えた社会全体の最適化が議論される段階へシフトしていくでしょう。


ブロックチェーンとの統合がもたらす所有なきロボット経済

ブロックチェーン技術の基礎と強み

ブロックチェーンは、中央集権的な管理者を介さず、複数の参加者間で合意形成を行う分散型台帳技術です。
改ざん耐性、トレーサビリティ、透明性が高く、組織や国境を超えた価値交換に適しています。

ビットコインやイーサリアムなどのパブリックブロックチェーンは、誰もが参加できるオープンなネットワークであり、スマートコントラクトによる自動契約執行が可能です。
一方で、企業向けにはコンソーシアム型、プライベート型といった許可制ブロックチェーンも存在します。
これらはアクセス権や権限を制御し、ビジネス要件や法的要件に応じたカスタマイズが可能です。

またブロックチェーンは、経済的に自立したシステムです。
実態がなく、自分自身を維持するためだけに必要な計算リソースは不要であるため、自立が可能になっています。
したがって、ロボットの自立と比べると難易度は低めではあるものの、自分の電気代は自分で稼ぐことのできる半永久的機関であると言えます。

ロボット経済へのブロックチェーン利用例

ロボットが経済的に自立するには、価値交換のインフラが不可欠です。
ブロックチェーンは以下の点でロボット経済を支え得ます。

  • 分散型決済インフラ:ロボットが得た対価を自動的にウォレットへ記録し、スマートコントラクトで収益分配、コスト精算を実施。
  • サービス権限管理:ロボットは特定企業や顧客からの依頼を受け、サービス提供後に即時決済や承認をブロックチェーン上で行う。
  • 部品・機能取引:ロボットが他のロボットやサービスプロバイダーから特定の機能アップグレードを購入(スマートコントラクトで保証)し、自己強化することも可能。

将来的には、ロボットとロボットが「サービスの取引」を自動的に行い、経済エコシステムを自立的に運営することが考えられます。
経済的に自立したロボットを内包している社会においては、もはや人間社会にロボットを参加させているのか、ロボット社会に人間が参加しているのかの区別が無くなるかもしれません。

企業が参入できるブロックチェーンビジネス領域

ロボットがブロックチェーンと結合し、自立的に経済活動を行う世界では、企業には以下の新たなビジネスチャンスが広がります。

  1. ロボット向け決済・金融インフラ提供

    • ロボット専用ウォレットやマイクロペイメントプラットフォームの構築
    • 安定した価格指標となるステーブルコインの発行・管理
  2. ロボット運用管理システム(RMS: Robot Management System)

    • ロボットの稼働状況、メンテナンス履歴、収益状況をブロックチェーン上で一元管理
    • スマートコントラクトによる自動的な保守契約・保険契約・購買契約の執行
  3. AI×ブロックチェーンによるデータマーケットプレイス

    • ロボットが収集する環境データや利用データを安全に匿名化・集約し、企業が購入・分析できるデータマーケットを構築(プライバシー・セキュリティ確保)
  4. ロボット同士や企業・団体との自動取引所運営

    • ロボットが提供するサービス、データ、機能拡張パーツを取引する専用マーケットプレイス
    • これにより、ロボット同士が自由に経済活動を行えるエコシステムの整備

許可制ブロックチェーンやプライベートブロックチェーンを採用すれば、企業は既存の法規制やコンプライアンス要件に合わせてロボット経済へ参入できます。
例えば、サプライチェーン管理や保険、セキュリティ監査など、既存のビジネス領域と結合することで、新たなサービスや価値を創出できるでしょう。


ロボットが社会にもたらす新たな文化的生活

複雑なタスクや手続き、労働をロボットが肩代わりし、かつ経済的にも自立している状態になれば、人々はリテラシーや複雑な知識に依存しなくても、尊厳ある文化的生活を楽しめる社会が形成されます。
したがって、ロボット経済は、より豊かで多様な社会を支えるインフラとなり得ます。


結論

  • 2025年ロボット元年:二足歩行ロボットの一般販売開始が大きな転換点。
  • 自立ロボット:自律から一歩進んで経済的自立を果たし、自ら稼ぐ主体へ。
  • シェアリングエコノミーブロックチェーンがロボットの普及と進化を加速。
  • 企業向けビジネスチャンス:ロボット向け金融・保険・データ市場、権限管理、AI活用が新たな収益源に。

ロボットとブロックチェーンの融合は、所有者不在の自律的ネットワークを可能にし、ロボットが自然環境の一部として人間社会に深く溶け込みます。
この世界では、ロボットは人間の生活を下支えし、より豊かで自由な社会を実現する役割を果たすでしょう。

私たちは、この経済的自立を達成したロボットと、ブロックチェーンがもたらす価値基盤によって、近未来の社会変革を目前にしています。
企業はこの潮流に乗ることで、新たな価値創造と持続可能なビジネスチャンスを手に入れることができるでしょう。

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