Vantage とは
Vantage は マルチクラウドに対応したクラウドコスト管理のためのプラットフォーム (SaaS) です。ドキュメントなどでは Cloud cost transparency platform と表現されています。クラウドサービス使用料の管理をシンプルにし、料金の予測や今月はどのリソースにいくらかかったか、どのリソースの利用が多かったかなど、支出状況を簡単に把握できます。
3 大クラウドの AWS, Azure, Google Cloud の他、Snowflake や Datadog, New Relic などの複数の SaaS にも対応し、対応サービスも順次増えています。これらのサービスのコストを 1 つのレポートで確認できるのが大きな魅力です。
Vantage を使用するメリットや提供される機能の概要は以前別の記事を投稿しているので、もしよければこちらもご参照ください。
本記事では Vantage はいいぞ!ということをお伝えしたいのと、自身の振り返りのため最近 (2022 年後半~2023 年前半) の推しアップデートをまとめました。
推しアップデートの紹介
Cost Report での複数ディメンションのサポート
2023 年 7 月に Cost Report をレポートを複数のディメンションでグループ化できるようになりました。これまでは単一条件でしかグループ化できませんでしたが、最大 3 つまでグループ化できます。
たとえばアカウントとサービスでグループ化すると、どのアカウントのどのサービスでコスト増えた、減ったかというのが簡単に分析できます。
情報をマスクしてしまっているのでイメージが伝わりづらいかもしれませんが、以下は部門単位で作成したレポートに対して、Provider, Service, Account を指定してグループ化しています。
最大 3 つというのが特に嬉しいポイントです。例えば AWS Cost Explorer の場合、コンソールでは 1 つしかグループ化できません。Cost Explorer API を使用することで 2 つのディメンションを指定できますが、レスポンスはネストされた JSON になるため、そのままでは可視化に難があります。
対応サービスの拡大
直近の 1 年間で、サポートサービスが 7 つ増えていました。
- 2022/8 Snowflake
- 2022/10 Datadog, Azure
- 2022/11 Databricks
- 2023/2 MongoDB Atlas, New Relic
- 2023/4 OpenAI
2022 年 10 月の Azure 対応は大きかったかなと思います。Vantage の Cost Report では特定のサブスクリプションやサービス、リソースグループなどでフィルターをかけて任意をレポートを作成できます。
ただし、Vantage は日本円の料金を正しく表示することはできません
ドル以外の通貨に対応していないので、デフォルトでは日本円の額がドルとして表示されてしまいます。(1 万円の料金が 1 万ドルとして表示されてしまう)
実際の円建ての請求ではないため、参考程度になりますが、Azure の API ではドルベースの料金も取得できます。サポートに問い合わせを行い、Vantage にはドル金額ベースでの取り込みを行っています。
余談
私の所属会社では社内向けの ChatGPT 環境として Azure OpenAI Service を採用しています。AOAI だけでなく、Slack Bot や WebUI なども Azure 上で稼働しているため、リソースグループをまるっとレポート化しています。全社公開直後の利用料金の伸びや打ち分けなどを確認し、一喜一憂していました。
以下は 2023 年 6 月の日別料金を示したものですが、Add your data が話題になったあたりから Cognitive Search の料金が増え始めたことがわかります。
SOC 2 Type 2 準拠
クラウドサービスの利用において第三者認証によるセキュリティー体制やプライバシーポリシーの確認が必須となる会社も多いのではないのでしょうか。
2023 年 5 月に SOC2 Type 2 への準拠が発表され、採用を検討しやすくなりました。
単位あたりのコスト (独自 KPI) の取り込み
2023 年 3 月に追加された Per Unit Costs を使用すると、ユーザー数やトランザクション数などといった独自のビジネスメトリクスを Vantage の Cost Report に追加できます。
例えば日ごとの顧客数データを取り込むことで、Cost Report 上で顧客あたりのコストをプロットできるようになります。数値データであればよいので DAU あたりのコスト、1,000 API リクエストあたりのコストなど、任意の尺度でレポートできます。
以下の画像は Vantage ブログからの引用です。
100 万ユーザーあたりのコストをプロットしています。
データの取り込みは CSV をアップロードするか、CloudWatch に送信されているのメトリクスを直接取り込むこともできます。
Resource Report
2023 年6 月に Resource Report 機能が追加されました。
Vantage は EC2 インスタンスや S3 バケットなどのリソース単位で料金を参照することができます。これは Vantage がリソースのインベントリとしても機能することを意味します。以前はサービス毎にリソースの一覧を確認することができましたが、アカウントやリージョンなどの条件を使用してフィルタリングすることはできませんでした。
Resource Report を使用すると Cost Report のフィルターと同様に独自のレポートを作成し、リソースごとの料金を簡単に確認できるようになります。
例えば以下のようにボリュームタイプを指定してリソースをフィルタリングし、組織の gp2 ボリュームを一覧化できます。これにより gp2 ボリュームを価格パフォーマンスの良い gp3 ボリュームへ移行し、コスト削減につなげるなどの施策が検討しやすくなります。
国内ユーザーがもっと増えるといいな
Vantage は米国の VNTG Inc.というスタートアップにより開発、提供されています。Square や NASA といった企業でも採用事例がありますが、サービスやサポートは英語のみの提供であるため、日本国内ユーザーはそれほど多くないのではと推測しています。
私が所属する会社でも 2022 年の秋頃よりクラウドコスト管理に Vantage を活用しています。本記事で同じようにコスト削減や FinOps に取り組んでいる方々に Vantage の魅力が伝わればと思いますし、あわよくば情報交換させてください!
以上です。
参考になれば幸いです。