この記事は CCoEクリスマス!クラウド技術を活用して組織をカイゼンした事例を投稿しよう! by KINTOテクノロジーズ Advent Calendar 2023 の 4 日目の記事です。
FinOps と Gamification
FinOps とは
FinOps 「Finance」と「DevOps」を組み合わせた造語で、組織のクラウドコストに対するアカウンタビリティを高め、ビジネスチームとエンジニアリングチームが協力してビジネス価値の向上を図る考え方です。
より正確な定義は FinOps Fundations の Web サイトを参照ください。
FinOps は 個人や 1 つのチームによって行われるのではなく、複数の異なるチームが連携して取り組む必要があります。また一過性のコスト最適化などはではなく、継続的に取り組んでいく必要があります。この考え方を組織に浸透させていくにはどうしたらよいでしょうか。
Gamification
Gamification とはゲームのような要素をビジネス活動に取り組むプロセスや戦略のことを指します。ゲーム要素が持つ楽しさや競争要素、成果の共有などにより、参加者のモチベーションを高め、行動変容を促すことができます。
FinOps Foundations でも Gamification のワーキンググループが存在し、以下のページで詳細が解説されています。
また組織内でクラウドコスト管理プラットフォームの Vantage を導入した直後だったこともあり、この活用推進も含め、社内で AWS のコスト削減イベントを企画、開催しました。
コスト削減イベントの開催概要
レギュレーション
イベント実施期間:
2か月
削減効果および順位の算出方法:
参加アカウントのイベントの開始月と終了月費用から削減割合を算出
アカウントにより利用額はことなるため、削減額の絶対値ではなく削減割合で計算しました。「今後の課題」に後述しますが、結論から言うと削減度合いで競い合うというのは改善点も多くありました。
表彰と副賞
全社ミーティングでの順位発表および副賞の進呈を事前に会社側に交渉し、準備してもらいました。会社全体を巻き込んで実施し、参加したいと思ってもらうにはこういったわかりやすいインセンティブは必要だと思っていたので実現に尽力いただいた HR 部門には感謝しかありません。
削減効果部門:
削減割合の高いアカウントを管理する 上位 3 チームを表彰
削減方法部門:
特に効果的または他部門に模範になる削減施策をおこなった 1 チームを表彰
運営側の工夫
ツール (Vantage) のハンズオン
Vantage とは VNTG, Inc が提供するクラウドコスト管理のためのプラットフォーム (SaaS) です。サービス使用料の管理をシンプルにし、料金の予測や今月はどのリソースにいくらかかったか、どのリソースの利用が多かったかなど、支出状況を把握できるツールです。
Vantage ではクラウドプロバイダーやアカウント、サービス、リージョン、コスト配分タグ、コストカテゴリーなどのフィルター条件を設定して Cost Report を作成できます。任意の条件で部門単位やシステム単位のレポートを簡単に作成することが可能です。
未使用の EBS ボリュームの削除などコスト削減の推奨事項を自動で検出し、リソース一覧と削減額を提示する Cost Recommendations といった機能もあります。
Vantage にコストの情報を開発者やビジネス部門でも参照できるようにすることでコストに対するオーナーシップや部門を超えたコラボレーションにつなげ、AWS のコストは AWS の管理者が見るものという意識を変える狙いがありました。
とはいえ、こういった新しいツールの普及には時間もかかります。コスト削減イベントの開催にあわせて Vantage の活用方法を解説、ハンズオンをおこなう勉強会を開催しました。
どうやって削減していくのか具体例を示した
インスタンスの自動起動停止、インスタンスタイプの最新化、不要な EBS ボリュームの削除、gp2 から gp3 ボリュームへの変更、Savings Plans の購入など、ベーシックでコスト削減効果の高い施策について手順を案内しました。
もともと社内ナレッジサイトに AWS コスト最適化ガイドを作成していましたが、あらためての存在をアナウンスし活用してもらえるようにしました。
実際の作業支援
コスト削減を実施するにあたり CCoE に相談をもらえれば、個別に支援を行うこと、それはイベントのレギュレーション違反ではないことを明示しました。
単純に運営側の負荷は増えますが、一緒に作業を行うことで参加のハードルがさがるだけでなく、コスト最適化やそのためのツールの良さを体験してもらい、活動の賛同者になってもらうことが狙いでした。
結果
削減効果
17 チームの参加と月額 5 % 程度の削減効果がありました。参加者の割合は全体の規模でいうと小さく、削減効果も 10 % 程度を目指していたため、コスト削減的な指標での目標達成はなりませんでした。
ただし、イベントの大きな目的はコストに対する啓発であり、今後あらゆるメンバーがコスト意識を持って持続的な最適化を推進していくための第一歩にはなったのではないかと感じています。
参加者のコメント
一部をそのまま抜粋します。
- イベント形式の施策で、告知時に純粋に「楽しそう!」と思うことができた
- 今回は削減率による評価だったが、今後の展開によっては、評価方法を変えていった方が、参加者の納得感があってよいかと思う
- コスト削減のような取り組みは「重要だが緊急でない」対応と考えがちで、日々の業務に忙殺されてどうしても後手に回る
- コスト削減は初めての取り組みではなかったが、何もしなければいつの間にかコストの無駄は発生してしまうことも実感できた
今後の課題
参加者のコメントにもあるとおり、一定期間内での削減率や削減額を評価するというのはイベントの公平性という観点でいうと難しいところがありました。
- 開発やプロジェクトの都合上、一時的に利用額が増えてしまう
- 逆に開発が落ち着いたため、利用金額が下がった
- 直近でコスト削減を実施しているため、追加で見直しできるところがなかった
- サービスの利用量が少ない場合に、すこしの削減でも削減率が高くなってしまう
といった理由です。これらが参加者のモチベーション低下につながっていた事実は少なからずあったと感じています。
以下の事例では複数のコスト削減施策をアクティビティ化し、それをビンゴ型式でポイント化することで公平なエクスペリエンスが得られるように設計されています。
今後の改善案としては、上記のように利用金額や規模に関わらずに参加ができるように工夫したいと考えています。
以上です。
参考になれば幸いです。