はじめに
「Japan AWS Top Engineers」は日本限定の制度で、年度内(年度始めの4月から年度終わりの3月)の間の活動を元に、技術力を発揮して活躍したエンジニアを表彰する制度です。
選ばれるためには「クライテリア」が非常に重要になってきますが、「2025 Japan AWS Top Engineers」のクライテリアがつい先日発表されました。
※クライテリア(criteria):評価を行う際の条件や基準のこと
前回の「2024 Japan AWS Top Engineers」と比較すると、今回は割と大きめの変更点がいくつかあります。
この記事では、去年「2024 Japan AWS Top Engineers」に選定いただいた経験も交えながら、2024と2025の違いを分析していきます。
なお、前年と今年の違いはクライテリアのお知らせページにも記載がありますので、まずはこちらを確認いただいた上で本記事を読むと良いかと思います。
本記事はあくまでも個人的なまとめ記事にすぎません。本記事を参考にしたからといって必ずTop Engineersになれるという保証はありません。
経験者としての所感であることを念頭に置いた上で、本記事を読んでいただけますと幸いです。
公式に発表されているクライテリアを読んだ上で、本記事を読んでいただくことをお勧めします。
また、これは個人的な所感ですが、Top Engineersのクライテリアは2023,2024,2025の3年間通してみると、かなりの変更が出ていると感じています。
私は「2023 AWS Top Engineers」には応募していませんが、社内で応募した方々の文章を読ませていただく機会があったり、2024の応募の際に2023のクライテリアを確認したりしました。
その経験も踏まえて、本記事では2023年の時からの差分も所々書いています。
今どのようなエンジニアをAWSJは重視しているのかを推測できるので、2023からの変遷も参考程度に知っておくと良いと思います。
実際の応募内容について
本記事では、実際にどんな内容で応募文を書いたら良いかという点には触れません。
この点に関しては他の方が良い記事を書かれているので、そちらをご参照ください。
クライテリアの概要
2024と2025において概要部分での違いはほぼないのですが、2023と比較すると若干変化があります。
2023の時は「技術力を発信して社外にアピールしている方を選びます」という感じの記載になっています。
「AWS Top Engineer Partner Program」とは、AWS Partner Network (APN) に参加している会社に所属している AWS エンジニアを対象にした日本独自の表彰プログラムです。特定の AWS 認定資格を持ち、会社を超えてパブリックに技術力を発揮した活動を行っている方、または技術力を発揮したその他の重要な活動や成果がある方を、AWS Top Engineers として、AWS Japan が審査し選出しています。
(2023 AWS Top Engineersのクライテリア)
一方で、2024と2025では「AWSビジネス拡大につながる」という文言が追記され、言い回しも少し異なっています。
特定の AWS 認定資格を持ち、AWS ビジネス拡大につながる技術力を発揮した活動を行っている方、または技術力を発揮したその他の重要な活動や成果がある方を、Japan AWS Top Engineers として、AWS Japan が審査し選出します。
(2024 Japan AWS Top Engineersのクライテリア)
アウトプットをたくさん出している方の中でも、AWS利活用の推進につながるアウトプットが多い人を重視するというメッセージだと読み取れます。
純粋な活動量だけではなく、どのような目的を持っていたのかという観点や、何を成し遂げたのかという観点が重視され始めていると感じます。
以下記載の比較でも書いていますが、「量より質」が重視されてきていると感じています。
求めるエンジニア像、ベネフィット
2024と2025での違いは特にありません
表彰のカテゴリー
カテゴリーについては、専門領域の部分で大幅に変更がありました。
2024年までは6つの専門領域が用意されていました
- Networking
- Security
- Machine Learning
- Database
- Analytics
- SAP
これが、2025年は以下の3つに再編されます
- Networking
- Security
- AI/ML Data Engineer
2024の時にあったMachine Learning、Database、Analyticsが「AI/ML Data Engineer」という枠に集約され、SAPが廃止されます。
この背景にはAWS認定資格の再編があると思われます。
ここ最近の生成AIブームに影響されてか、新規AWS認定資格の登場や廃止が連続しています。
特にAI/MLやデータベース、データ分析関連の資格に大幅な変更がありました。
(詳細は割愛します)
クライテリアの発表記事にもあるように、これらの領域は分けて考えるものではなく、横断して考えるものになりつつあるためカテゴリーの変更が行われたようです。
背景として、データ戦略の構築において従来のカテゴリーを横断した活動をされるエンジニアが増加していることがあります。また昨年の応募者からも、カテゴリーを選択しづらいとのフィードバックがあったため、今回の変更に至りました。
(2025 Japan AWS Top Engineersのクライテリア)
SAPカテゴリーの廃止も、認定資格の「SAP on AWS」が廃止されたことに伴っての変更と思って良いでしょう。
2025 Japan AWS Top Engineers クライテリア
ここから具体的なクライテリアの内容に入っていきますが、クライテリアは大きく分けて3つ存在します
- 各カテゴリー共有の条件
- 所属パートナーおよび認定資格の条件
- AWS ビジネス拡大につながる技術力を発揮した活動
各カテゴリー共通の条件
評価の対象になる活動対象期間、カテゴリーの選び方が定義されています。
活動対象期間には変更は無く、年度始めの4月から年度終わりの3月と定義されています。
カテゴリーの選び方については、2024と2025いずれにおいても複数カテゴリーの応募が可能です。
しかし、2025はカテゴリーごとに応募そのものを分ける必要があります。
複数カテゴリーに応募される際は、表彰カテゴリーごとに応募申し込みをお願いいたします。(応募フォームを分けることで、各カテゴリーの記載量を確保できるようにします)
(2025 Japan AWS Top Engineersのクライテリア)
2024年は一つの応募で複数のカテゴリーに応募することができたため、去年に引き続き今年も複数カテゴリーに応募するつもりの方は要注意です。
なお、2023では応募できるカテゴリーは1つだけでした。
おそらくフィードバックを受けての変更だと思いますが、複数カテゴリーを選択できるというのは応募者にとってのメリットだと思います。
事実として、私自身も「Services」と「Networking」の2つを選択し、Networkingのカテゴリーで選んでいただきました。
複数カテゴリーにまたがって活動されてきた方は、ぜひ複数カテゴリーに応募してみてください。
所属パートナーおよび認定資格の条件
応募するカテゴリーごとに、自身が所属する企業のパートナーティアや、自身が保持している認定資格の条件が定められています。
表彰カテゴリーの種類に変更はあるのものの、所属パートナーと認定資格の条件には大きな変更点はありません。
強いていうのであれば、対象認定資格に求められる有効期限が若干短くなっています。
AWS 認定資格は申し込み時点で有効、且つ審査期間である 2024 年 5 月 31 日まで有効である必要があります。
(2024 Japan AWS Top Engineersのクライテリア)
AWS 認定資格は申し込み時点で有効、且つ審査期間である 2025 年 4 月 30 日まで有効である必要があります。
(2025 Japan AWS Top Engineersのクライテリア)
ただ、2024の時はクライテリアの公開後に応募期限が伸びているため、今年も同様の動きがある場合は有効期限も変更になる可能性があります。
クライテリアの対象資格の更新期限が近い場合は、早めに更新しておくのが無難でしょう。
パートナーティアについては、各企業内での担当部署やAWSのパートナーSAさんに確認するのが確実ですので、各自確認をしておきましょう。
AWS ビジネス拡大につながる技術力を発揮した活動
この部分が、Top Engineersのクライテリアにおいて一番重要であり、一番労力を割く部分です。
2024と2025を比較すると2つの大きな変更点があります。
- 「AWS Well-Architected レビュー」というカテゴリーが「技術リードとしての活動」に吸収された
- 技術的な難易度が「Level 200以上」から「Level 300以上」に底上げされた
1. 「AWS Well-Architected レビュー」というカテゴリーが「技術リードとしての活動」に吸収された
W-Aレビューが技術リードとしての活動にまとめられたのは、両者の活動が割と似ていることが理由の一つかと思います。
あくまで推測ですが、応募者からそのようなフィードバックがあったのではないかと考えています。
実際、W-Aレビュー活動はレビューして終わりではなく、レビューを行う目的やレビュー後の対応が非常に重要です。
そこまで実施しているかどうかを評価するためにも、カテゴリーを変更したのではないかと推測します。
2. 技術的な難易度が「Level 200以上」から「Level 300以上」に底上げされた
技術的な難易度については、今回のクライテリアの変更の中で一番影響がある部分だと感じています。
Level 300で求められる水準は、AWSについての詳細を理解した中上級者向けのアウトプットというイメージです。
Level 100 : AWS サービスの概要を解説するレベル
Level 200 : トピックの入門知識を持っていることを前提に、ベストプラクティス、サービス機能を解説するレベル
Level 300 : 対象のトピックの詳細を解説するレベル
Level 400 : 複数のサービス、アーキテクチャによる実装でテクノロジーがどのように機能するかを解説するレベル
「やってみた」「新機能触ってみた」というブログや、AWSサービスの概要紹介のアウトプットは対象外ということになります。
AWSサービスを実際に活用し、使っている中でのつまずきを解消し、より良い形で使いこなしてきた、そんな実績が求められます。
この背景にあるのは、AWS関連のアウトプットが非常に多いことと、応募者の増加が影響していると思われます。
今やAWSを使うことは当たり前、インターネット上のナレッジを使えば誰でも入門できる状況です。
Top Engineersの応募者も年々増加傾向にあり、レッドオーシャン状態であると聞いています。
そんな中でも、特に質の高いアウトプットを生み出す人を重視するために、今回技術的難易度の底上げを行なったと考えられます。
Level 300で求められる水準がよくわからないという方向けに、公式ブログでも参考記事のまとめページが紹介されています。
いくつか記事を読むことで、レベル感のイメージが掴みやすくなるでしょう。
Level 300 および Level 400 の記載内容のイメージは Amazon Web Services ブログに掲載されている記事および AWS Summit Japan 2024 のアーカイブのコンテンツを参考としてください。
Amazon Web Services ブログ Category : Advanced (300)
Amazon Web Services ブログ Category : Expert (400)
AWS Summit Japan 2024 の Advanced (300) および Expert (400) のセッション
(2025 Japan AWS Top Engineersのクライテリア)
2023年の時の要件との変更点
実は2023と2024の間にも大きな変更がされています。もう少し長期的な視点に立って分析するためにも、2023年のクライテリアとの比較も書いておきます。
2023のクライテリアではパブリックコントリビューションという区分はまだ存在しておらず、ブログと外部登壇で分かれていました。
加えて、パブリックな活動を必ず1つは書かないといけないという条件がありました。
一方で、2024年からはパブリックな活動は「パブリックコントリビューション」にまとめられ、パブリックな活動が必須ではなくなりました。
活動カテゴリーを見直しました。
ブログや登壇等をパブリックコントリビューションという形でまとめ直しました。
必須カテゴリーとして扱うものはなくなりました。
(2024 Japan AWS Top Engineersのクライテリア)
また、2023の応募文章では文字数制限などは特にありませんでした。そのため、実績の絶対量が多い応募者の方が有利になりやすい構造でした。
2024からは文字数制限が設定され、応募文一つに対する密度が求められるような形に変更されています。
これらのことから、「量より質」を重視する方針は2024から徐々に強まっていたと推測できます。
最後に
全体的に去年よりも更に高いレベルが求められそうな状況ですので、読んだ方に対して少しハードルを上げる内容になってしまいました。
しかしだからと言って、「どうせ自分の実績じゃ無理だから諦めよう」とは思わないでほしいと私は考えます。
普段何気なくやっている業務や案件対応の中にも工夫があると思いますし、その工夫は社外の人から見たら重要なTipsかもしれません。
そして、その案件を対外的に見ると希少性があったり、比較的規模感が大きかったりするかもしれません。
応募までまだ3ヶ月あるので、まだ実績が足りないと感じる方にもアウトプットを生み出す時間が残されています。
ハードル高く感じている方も、ぜひこの機会にチャレンジしてみてほしいと思います。
この記事が誰かの助けになったら幸いです。