この記事はPHC BXC Advent Calendar 2022 18日目 の記事です
はっし〜〜こと、橋本です。2021年4月から PHC株式会社メディコム事業部ビジネストランスフォーメーションセンター(以下、BXセンターと略す) に所属しています。現在、エンジニアが総勢37名うち、社員が20名という体制で内製組織になっており、そのシニアテックリードという立場でエンジニアの統括をしています。
これまでのキャリアは、
- 2002年より大手シンクタンク系SIerにてシステム構築、技術コンサルティング、新規事業立ち上げ等々の業務経験を積み、
- 2014年よりベンチャー企業にてチャットボット事業立ち上げとそのシステム開発に従事、
- 2016年よりジモティーにて、第二創業期における技術部長として、上場に向けたエンジニア組織作りとシステム構築を中心に従事、上場準備が整ったタイミングからIC(Individual Contributor)1として貢献し、最終的にジモティーのIPO達成(東証グロース2への株式上場)まで経験
- 2021年4月から現職。当初ICとしての参加だったが、現在は組織マネジメント中心に従事
という感じです。
そーだいさんのキャリア記事と橋本のキャリア振り返り
2022/12/13にそーだいさんの非常に良い記事がでて、色々と教わることや考えることがあったので、2022年がそろそろ終わり来るべき2023年に向けて、もう一度自分の価値観を見直し、今後どのようなキャリアを歩んでいくかを再確認する場としてこのアドベントカレンダーを書いてみることにしました。
もっと成長したいソフトウェアエンジニアへ、出会いと経験で自分を変える「キャリアの螺旋」の歩み方
そーだいさんの記事を短くまとめると、
マネージャーからプレイヤーに戻ったときにCTOの経験が生きた等、「キャリアの螺旋」を歩みロールを変えることによって自分の視座・視野・視点が磨かれる
という内容です。
これまでの自分のキャリアを振り返ると前職ジモティーでは、第二創業期での技術部長職を経験し、上場に向けたエンジニア組織作りが整ったタイミングでICに戻り、最終的にジモティーのIPO達成まで経験しています。
私は今年でエンジニア20年選手になったので、ある程度、技術的スタック的にもキャリア的にも一周した感はあります。マネジメントも経験しましたし、IC(Individual Contributor)としての経験もしたことになります。
確かにそーだいさんのおっしゃる通り、「キャリアの螺旋」は自分のエンジニア人生にとって重要なことだなと思っています。おそらくそーだいさん自身、自分自身のキャリアの振り返りの為に上記の記事を書いた側面があると思っています。上記の記事を感銘を受けたものの(逆に受けたからこそ)、ここで自分の中からフツフツと沸いて出てくるのが「キャリアの螺旋の先をどうするか」という課題です。
私自身、2010年代前半まで様々な対外活動、紙の雑誌(!)、Web 媒体に寄稿したり、講演をしたりしていました。特にこういった対外活動の末期となった2014年3には、かなりエンジニアのキャリアに関する内容が多くなっていたので、自分としても自分のキャリアをこれからどうするのか迷っていて、整理のために記事を書いていたのだなと今振り返って思います。
それぞれの記事は、技術的には既に古くなってしまった話が多いのですが、それぞれ自分の悩みに対してどのように答えを出していったかの記録になっています。
例えば下記の記事では、フルスタックエンジニアについて扱っていまが、
なぜ、フルスタックエンジニアが必要とされているのか ~ 「ゆでガエル」になる前に
振り返ると自分がどの領域に注力すべきか、あるいは、このまま器用貧乏でいて良いのかと迷っていた時期でもありました。しかし、結局、社会に対してバリューがある目的に立ち返って、その目的に対して自分が取り組める技術にその場その場で取り組むことが重要ではないかという結論に至るのに役立った記事だと思っています。
また、下記の講演では2014年当時の今後注目すべき技術領域とコミュニティの重要性について話しています。
もちろん私自身、その時に注目した技術領域、つまりJava・機械学習(AI)・クラウドといった領域に現在進行形でがっつり携わることになりましたが、それよりも大事なのが、技術を支えるコミュニティ、そういった技術を利用する領域や目的対して抱く熱い気持ちが重要という結論に至るのに役立った記事だと思っています。
上記の記事を書いてから約8年経っていますが、2022年がそろそろ終わり、2023年がそろそろ始まりそうな現時点での自分の価値観を見直し、今後どのようなキャリアを歩んでいくか、つまり、自分自身の「キャリアの螺旋の先」を少し模索したいと思いました。
今回はアドベントカレンダーということで、まずは軽く「初版」かつメモということで書いてみます。今後、時期は機会を見てもう少し長い論考に仕上げようとは思っていますが、ひとまず今回は「初版」ということでお楽しみいただければ幸いです。
自分の根本にあるモチベーション
こういったことを考える時に定石なのが、世間のベストプラクティスを抽象化して自分に引き付ける、あるいは、案外知られていないのですが「自分のこれはイヤ!」ということを明確にしてそのイヤなことを考えていくというやり方もあります。
今回は後者の手法を使ってみることにしましょう。
自分がイヤなこと
まだ自分が20代後半から30代中盤の頃は技術にこだわり、なるべくそれ以外の仕事はしないと決めていた時期がありました。もちろん、それはそれで、自分の技術を磨くのに役に立ってくれました。
しかし、その時に一番辛かった経験が、
- 会社やチームといった組織のビジネス自体うまくいかない(=もうからない)と、どんなに技術を頑張ったとしても、組織が本当になくなる
という経験です。
2010年くらいからキャリアとして、新規事業に取り組むことが多くなり、その後ベンチャー企業に転職してからも新規事業を手がけることが多く9割は失敗しているので私の2010年代のキャリアは壮絶たる失敗の歴史と言えるでしょう。
そういった経験を数多くしているので、「なんとかして、そうならないようにしたい!」というのが、実は自分のモチベーションの源泉になっています。
イヤから生まれた副次効果
そのため、その目的(=事業を潰さないことや事業成長)を達成するために、エンジニアという自分の立場を限定しないで提言して組織を良い方向に持っていきたいという意志を持つようになってきました。
確かに、自分はエンジニア出身なのでPdM(Product Manager: プロダクトマネジャー)、CS(Customer Support: カスタマーサポート)、Sales(営業職)といったロールを担う人々の専門領域に深く立ち入ったアドバイスをすることは難しいです。
しかし、その一方で例えば、エンジニア観点でチームにいる人の役割や作業フローの効率化など、エンジニアチームのマネジメント経験を抽象化して適用できそうなところは、当該ロールのマネージャーなど担当者と話をして改善に持って行く動きは社内で評価を受けたことは多かったです。
また、それぞれのロールが持つ事業KPI(Key Performance Indicator)を測定するシステムのメンテナンスを担当していたので、何か数値的な異常に対して敏感になります(システムの異常の場合もあるので)。そういった時に、各ロールの方々とその原因について議論することで感謝されることも多かったのです。
上記は一例ですが、エンジニアは様々なロールに対してシステムに関わる組織内のロールが持つ目的や課題を把握するようになります。もちろんシステム視点に偏りますがそういった過程の中で全体を見渡すことになるので、組織最適化に向けた提言できる能力は自然と身についていくのだなと感じるようになりました。
これは、20代から30代中盤にこだわっていたエンジニアは技術に集中すべきという自分の考えにとらわれていたら、上記のような考えにはたどり着けなかったので、これは「イヤから生まれた副次効果」と言えるでしょう。
エンジニアの本業も死ぬほど大事
とは言え、エンジニアの本懐はもちろんエンジニアリングです。事業成長に向けたビジネスのアジリティを達成するための
- コード品質の維持
- 事業インパクトが高い機能のスピードリリース
- 新技術採用による開発生産性の向上
- SLA/SLO達成に向けたインフラ改善、パフォーマンスチューニング
- 時代の半歩先を行く技術開発(機械学習(AI)含めて技術開発をしないと他社に対して機能格差をつけられてしまう!)
は至上命題と言えるでしょう。
結論
結局、例を複数出しましたが非エンジニアの領域もエンジニアの領域も、組織に対するバリューを与えるという意味で
事業成長させるために我々エンジニアが何をやるべきか常に考えること
が重要なのは変わりないのかなと思います。
オトナなエンジニアのバリューとは何か
事業成長させるために我々エンジニアが何をやるべきか常に考えることは重要と述べましたが、
この20年の自分のキャリアを振り返ると、結局、役職・ロールは自分のアウトプットに対して後からついてくることが多い、つまり、個人が組織に対して与えたバリューの質と量が継続的に高い領域に応じて後からふさわしい役職・ロールが付いてくることが多かったです。
これまでの伝統的年功序列的仕組みでは、年齢が上がったり、キャリアとして深みが出てくると、役職やロールが上がって基本的には上がるか維持されるだけで変更はできないキャリアでしたが、今後、エンジニアはそれぞれの組織の重要度・緊急度で整理した時に事業観点で優先順位が高いことに対して一定期間でどれだけ影響を与えたかに対してお給料が支払われて、その結果で役職・ロールがどんどん変わる仕組みになりそうだなと思っています。
よくよく考えると過去・現在、一緒に働くパートナーの方でも事業成長に対して最もバリューが高い提言や解決に向けた行動をしてくれる人の単価が高い傾向があるので、社員に対しても似たような評価になってくるだろうなと思います。
簡単に言うと、解いた事業課題の重要度に応じてポイントがついて、一定期間ごとにその数を集計して、それに応じて給与や単価が変わっていく世の中になっていくように思います。
エンジニアの成長の方向性
常に獲得できるポイントが高くなるエンジニアになる(=総じて価値が高い課題を解決する)には自分の知識・経験をどんどんアップデートしていく必要があります。
基本的にエンジニアの仕事は縦軸が「組織マネジメント・事業成長」、横軸が技術の幅(と高さ)となります。その縦軸横軸の中で、自分の得意領域と今後伸ばしていきたい、経験したい領域を明確にして、インプットを続けながら自分の経験を積んでいくことが大事です。
その中で、自分のライフイベント(結婚、子育て、介護等々)やその時々のコンディション(絶好調の時から自分のやることに確信が持てなくて迷いまくる等)に応じて、得意領域を中心にやるのか、チャレンジ領域を中心にやるのかなど、どのようにエンジニアとして働くかポートフォリオを決めることが今後更に重要になってくると思っています。
私の古くからのエンジニア仲間には、自分がこれから伸ばしていきたいチャレンジ領域が経営者だったため、エンジニアを超えて、SalesやPdMにジョブチェンジしたりする人もいらっしゃいますし、ある程度の年収を維持したいため常に技術トレンドを追って、組織影響が高そうな(自分がコモディティ化しない)技術領域の開拓に励んでいる方もいます。これは人それぞれ好き好きなのでしょう。
そしてこれから(「キャリアの螺旋」を超えて)
自分自身に目を向けると、やはり自分の中で出てくるのは社会貢献というキーワードです。
自分がお世話になった「この社会」(もちろん、現在進行形で様々な問題を含むこの世の中なのでもちろん恨み深い部分も沢山ありますがw)、または、自分の子供達がこれから生きていかなければいけない「この社会」をどれだけ良いものにしていけるか、あるいは、良いものを残していけるかということが自分のキャリアの中で重要な要素になっています。
前職ジモティーでは、社会的基盤としてのコミュニケーション基盤、つまり、人同士の情報や物といったものをどのように流通させていくか、マッチングしていくか、その結果として地元の掲示板たる、地域でのコミュニティーをどのように形作っていくという目的でコミットしていましたが、現在は日本の未来を見渡した時に最大の課題になっている医療費の問題、つまり、国民皆保険制度をどのように持続可能にしていくかということが一番大きなテーマになっています。
現在コミットしているBXCも様々なサービスを開発中です。
現状、世の中に出ているのが、
- 調剤薬局向け経営ダッシュボードサービス
- クリニック向け予約サービス
- 電子カルテ
の3つで、一見したとろ繋がりはなさそうですが、全てのサービスが持続可能な医療というテーマの実現が通奏低音として流れています。
そして、今は発表できないものの様々なサービスを「点」として開発していますが、こういった点のサービスが繋がって、広がって面となって大きな価値を作り出し、相乗効果で大きなパリューを出すプラットフォームにしていく野心的な想いで取り組んでいます。そのために、各種インフラを整えたり、採用を頑張ったり、次の事業創出に向けた取り組みをがんがん進めています。
終わりに
そーだいさんの記事を最後までお読みになると分かるのですが、「キャリアの螺旋」をテーマにしながらも、その行き着く結論は「エンジニアコミュニティに対する恩送り」でした。結局、「キャリアの螺旋」も自分の目的を達成するための視野を広げる手段に過ぎないのです。
結局、自分の場合の結論はここまで述べた通り、自分の後に続く人たちがきちんと生きられるための「社会貢献」でした。
皆さんそれぞれが、自分自身の価値観に照らして自分のキャリアを考え、形作っていくことが本当に大事だと思います。
是非、この年末のタイミングで皆様振り返って、次にどうしていくかをおぼろげでもいいので考えることをオススメします。
本当に人生が変わりますよ。
大募集
というはっし〜が働くBXセンターやその事業に対してに少しでも興味を持っていただけたら是非、下記のサイトを眺めていただき、応募していただけますと大変嬉しいです!待ってます!
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Individual Contributorに関しては、@__gfx__さんの良い記事、生涯現役のソフトウェアエンジニアでありたい。IC(Individual Contributor)のキャリアパスがあると自覚するまで10年の軌跡があるのでご参照ください。 ↩
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上場時点(2020/2)では東証マザーズ ↩
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対外重要な活動とは認識しているのですが、2010年代後半からほぼほぼ事業成長にコミットするようになり、対外露出はかなり減りました。それはそれで、対外的な自分の価値や企業の広告等として所属企業の価値を高める効果がありました ↩