皆さんこんにちは.ハシュマルです.
今回は本題の人工筋の作り方について書いていこうと思います.わかりにくいところがあれば答えるので,質問してください.
阪大の増田先生の研究室にも見学させてもらったため,それについても記事を書こうかなーと思っております.
人工筋肉の材料(ラバーレス)
人口筋の作り方については増田先生の動画と新さんの論文(予稿)を参考にしています.後者はJ-STAGEの購読が必要です.見たい人は購読するか先生にお願いしてダウンロードしてもらいましょう.
そして材料・道具は以下の通りです.
- 材料
- アルミ蒸着袋(DigiKeyの袋)
- ほつれにくい編組チューブ(通称:スリーブ)
- ポリエチレン袋(なくてもOK)
- シリコンチューブ
- ユニオンストレート
- 9-11mm ホースクランプ
- 3Dプリンターパーツ
https://github.com/hashmal2/What-I-created/tree/hashmal2-artificial_muscle_kotei
- 道具
- アポロホースカシメ工具
- スタンプシーラー(ダイソーのイージーシーラーなどでも代用可能な可能性が浮上)
- スタンプシーラー用専用台(ダイソーのシーラーを使うなら不要)
- はさみ
- 定規
- 油性ペン
- ねじを締められる道具
以下にモノタロウのリンクを貼っておきます.
- アルミ蒸着袋(買う場合):https://www.monotaro.com/p/2035/2736/
- ほつれにくい編組チューブ:https://www.monotaro.com/p/3506/8345/
- シリコンチューブ:https://www.monotaro.com/p/2225/2536/
- ユニオンストレート:https://www.monotaro.com/p/4138/4786/
- 9-11mm ホースクランプ:https://www.monotaro.com/p/4993/6617/
- アポロホースカシメ工具:https://www.monotaro.com/p/8848/9344/
- スタンプシーラー:https://www.monotaro.com/p/6079/0022/
- スタンプシーラー用専用台:https://www.monotaro.com/p/6079/0047/
人口筋肉の作り方
今回紹介する人工筋肉は名前の通り,ラバーレス素材(アルミ蒸着袋)を使用した人工筋です.この人工筋はスリーブの中にエアバック(下の写真)が入っており,それに空気を入れるとエアバックが膨らみ,その膨らむ力をスリーブがうまいこと引張力に変換してくれます.詳しい理論については参考文献1に載っているので,それを読んでください.(理論式については本記事の下の方にも書いてありますので,読む気力があれば読んでみてください.)
(1) プリンターパーツ
人口筋を作るにあたり,まずはプリンターパーツを印刷しておきます(下の写真).この組み合わせで片端を固定できます.なのでこのセットを2つ作ってください.
(2) エアバック
- 袋を用意します.DigiKeyの袋を使えます.
- 袋の幅は約100mmです.幅が小さすぎると(少なくとも75mmでは)収縮率が低下します.
- スリーブと袋の大まかな長さは下式で決められます(あくまでも大体の長さ).
(スリーブの長さ)=(目標長さ)\div0.52+50
(エアバックの袋の長さ)=(スリーブの長さ)\div2
例えば,100mmまで縮む人工筋を作りたい場合はスリーブの長さを240mm,袋の長さ120mmの時,自然長(ちょっと引張った時)が195mmになり,収縮後長が約100mmになります.(実験済)
袋が小さいと下の写真みたいに端の方が膨らまなくなります.エアバックが膨らんだ後の直径があまり大きくないと,スリーブとエアバックとの接触点付近のみが膨らみ,このようになります.逆に十分に大きければ,エアバックがその径以上に膨らまなくなり(実際は少しだけ限界を突破する),エアバックが膨らんだ後の形状が,スリーブなしの場合だと球状だったのが瓜状に変形し,端の方まで膨らむようになると考えられます.
また,短すぎると収縮率が減少します.エアバックが膨らんだ後に,内部でユニオンストレート同士がぶつかって縮まなくなったと考えられます.収縮後長50mmのものを作ろうとしたら75mmのものができました.
3. スタンプシーラーなどを使って,切れた袋の端をシーリングします.
4. シリコンチューブを長さ12~15mmに切っておきます.2個作ってください.
5. 袋を蛇腹状に折ります.幅は適当でOKです.(8~10mmぐらい)
6. 折った袋に,切ったシリコンチューブ2個をかぶせます.シリコンチューブはある程度袋の中心に寄せた方が次の工程で楽になります.
6. 袋の口の中心にユニオンストレートを入れ,シリコンチューブで仮止めします.(ユニオンストレートは自作できる可能性があります.自作できた際にはデータを公開するのでお待ちください~)
6. ホースクランプをかぶせます.このとき,袋の端が3mm程度余るようにしてください.ここが短すぎると圧縮空気を印加したときにずれて壊れます.(おまけ1に写真を記載)
6. カシメ工具でカシメます.かしめるときは,一度にかしめるのではなく,少しづつかしめましょう(増田先生の動画を参考にしてください).また,下の写真のように,ホースクランプの端を,カシメ工具で持てるギリギリを持ってかしめてください.空気が漏れにくくなります.
これでエアバックは完成しました.このタイミングで空気漏れがないか自転車の空気入れなどで確認すれば,失敗していた場合のリカバリーが簡単にできます.
(3) 組み立て
ここから組み立てていきます.
- エアバックにエアチューブを接続しましょう.ここで,高い収縮率を実現するためにはエアバックをスリーブの中心に固定する必要がありますが,輪ゴムで固定する方法(小細工)を使用するためにエアバックにポリ袋をかぶせます.幅が約80mmのものを使いましょう.この袋がなければ小細工が通用しません.(小細工を行うかは任意)
- スリーブをプリンターパーツで固定しましょう.写真のように,プリンターパーツの穴にエアチューブを通し,ねじでスリーブを挟むように固定してください.中心のY字のパーツは,ねじを挿す前に差し込みましょう.
これを両端にすれば完成です.
小細工とは中心に巻いてある輪ゴムのことです.割とうまく中心に固定してくれます.
(おまけ1) 失敗集
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高圧印加(事故)
前回の記事にも書いた暴発事故です.増田先生のレシピを基に,直径が大きな人工筋を作っていました.その時は,スリーブの固定をホースバンドで行っていました.実験しようとしたとき,エアタンクに0.8MPaの圧縮空気が入っていることに気づかず,人工筋に印加してしまい,派手な音と共に栓とホースバンドが吹き飛びました.皆さんは実験前に気圧を確認するようにしましょう(戒め) -
高圧耐久テスト
今回作った人工筋の耐圧を検証するため,圧力を0.1MPaずつ上昇させて人工筋に印加しました.すると,0.5MPaの空気を印加した時に空気を入れ始めてから3秒後に袋が破裂しました(写真).おそらく,集中荷重がかかったために,袋が耐えられなくなったものと考えられます.
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引張試験
人口筋の引張力を計測するために人工筋を動作させたのですが,途中でプリンターパーツが取れました.今回,プリンターパーツとスリーブは摩擦で固定しているため,このように外れてしまったものと考えられます.スリーブをプリンターパーツで挟む時に,深めにスリーブを固定すると抜けにくくなります.
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作り方が下手くそ
見出しの通りですが,作り方が下手くそすぎてよく空気が漏れます.漏れる場所は大抵ホースクランプの隙間です.ホースクランプの側面の飛び出た丸の部分に袋が挟まると,そこから空気が漏れてきます.これが起こる確率を大きく減少させてくれるのがシリコンチューブです.シリコンチューブを袋とホースクランプの間に挟むことで,袋が挟まれにくくなります.従来型の切れ端を使えるのでSDGs的にもヨシ!!
また,ホースクランプを止める場所が悪いと壊れやすくなります.袋の端を,ある程度余らせて固定しないと写真のように袋がすっぽ抜けます.余るように固定しましょう.
(おまけ2) 人工筋肉の理論式
参考文献1によると,マッキベン型人工筋肉の引張荷重の理論式は以下のようになります.
F=\frac{\pi}{4}D_0^2P\left(\frac{1}{\sin\theta_0}\right)^2\{3(1-\varepsilon)^2\cos^2\theta_0-1\}
ここで,それぞれの文字は
- $F$ : 軸方向の引張力[N]
- $D_0$ : 人工筋肉の初期直径[m]
- $P$ : 印加圧力[Pa]
- $\theta_0$ : スリーブの繊維の初期編み込み角[rad]
- $\varepsilon$ : 軸方向の収縮率[%]
を表しています.要するに,印加圧力や人口筋の直径を大きくすれば引張力が大きくなります.つい最近まで新さんの人工筋を再現できなかったのは径が小さかったからでした.(気づくの遅杉)今回使用するスリーブの最大拡大径は32mmですが,50mmのものを使用すれば大体25kgf(約245N)の力が出ました.
次回予告
今回は人口筋の作り方について紹介しました.年内に書けてよかったぁ...
次回は番外編として,阪大の石川・南研究室を見学し,増田先生のお話を聞くことで得られることができた情報をまとめようかなと思っております.
あまりにも記事の更新が遅いようでしたらTwittarに尻を蹴りに来てください.必死になって書きます.
また,ご意見・質問などありましたらQiitaのコメントやTwitterのDMなどに送ってください.よろしくお願いします.