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OSS Projectを支援するthe Linux Foundation

日立製作所 橋本尚

The Linux Foundation概要

世の中には、様々なOSS Projectがあります。代表的なものに、Linux, PostgreSQL, Samba, Apacheなどがあります。それらの中には、数人で運営している小さなProjectから、大企業が参加して、100人規模で開発しているものまで様々なものがあります。
 最近は、OSSを商用化目的で利用、開発する動きが活発です。商用として、利用するためには、そのOSSを安定的に開発する枠組みが必要です。そのためには、様々なことが必要です。 それらを支援する組織がthe Linux Foundation(以下TLF
URL英語ページ
URL日本語ページ
です。次章から、団体概要、具体的な支援内容について、ご説明します。

TLF活動概要

TLFの参加企業とProject

現在、TLFには、日本から富士通、NEC、日立を始めとして、日本の企業約10社、世界的に見ると、IBM, Intel,RedHatを始めとして、大小数百社が参画しています。
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このようにたくさんの企業が参加するのは、TLFの理念、OSSの普及とそれによる企業、業界の発展、そして社会への貢献に賛同したからだと思います。その活動の結果、OSSは、様々な分野へ広がりました。皆さんが普段使用するスマートフォン、Androidは、OSSのLinuxをベースとしています。また、最近は、組み込み関係の分野、例えば、家電などにも使われています。組み込みからは、自動車のカーオーディオ、ナビゲーションシステムなどにも採用されています。
これは、団体の名称の由来となっているLinuxに関する話でしたが、それ以外にも、幅広い分野にOSSが広がっており、TLFがその広がりを支援しています。
 例えば、最近、Fintechへの応用で話題になっているブロックチェーン、TLFのHyperledgerが開発されています。また、IoT(Internet of Things)分野では、Device Endからクラウドまでを共通のPlatformでサポートしようとするProjectもあります。また、OSSを開発するProjectだけでなく、Projectが健全に発展していけるようにサポートするProject、企業がOSSを採用する際に、考えなければならないライセンスや法的な問題、組織的な取り組み方法をアドバイスするProjectなど、OSSの普及に必要な下支えするProjectもあります。
 このように当初は、LinuxだけだったOSS Projectも、今は、様々な分野へ広がりました。それにともない,TLFへの参加企業も、当初のIT企業中心から、トヨタ、日産のような自動車関係、AT&Tのような電話関係、Home Depoのようなユーザ企業まで様々な業態から参加しています。また、地域的にも広がりを見せています。加盟会社も、当初は、米国、日本出身の企業が中心でしたが、最近は、中国、韓国のようなアジア系企業、ヨーロッパからも参加しています。
Projectについては、別途、代表的なものを紹介します。その前に、Project以外の活動について、紹介しましょう。

TLFのマーケティング活動

TLFは、OSS開発だけではありません。開発しただけでは、そのOSSがいかに役立つものだとしても、世の中に普及し、使ってもらえるとは限りません。周知してもらうためには、様々なレベルでの普及活動が必要です。いわゆるマーケティングです。
TLFのマーケティング活動には、大きく分けて、
1. イベント
2. 白書等のドキュメント
3. トレーニング
の3種類があります。以下、それぞれについて、簡単に紹介します。

イベント

OSS開発者の情報交換の場として、様々なイベントを企画、運営しています。一番、重要だと思われるものが、Open Source Summitです。 これは、世界各地(北米、ヨーロッパ、日本)で開催され、会期3日間に、Linuxだけでなく、OSS全般の技術者、ライセンス関係者などが集い、発表、議論、情報交換を行います。OSS Projectの今後の方向性がこの場の議論で決まってしまうこともあります。日本でも開催されていますが、海外のそれと同レベルの運営、内容にするため、発表、質疑は全て、英語で行われています。これにより、国内にいながらにして、先進的な海外動向に触れることができます。
 他の主要なイベントとして、Open Source Leaders Summitがあります。これは、その名前の通り、OSS Project Leaderを中心として、各Projectの紹介、メンバーの加入などを情報交換するとともに、Project横断的な議論をし、より新しい発展を目指すものです。
また、開発者の中には、情報交換、発表のテーマがあるのに、旅費などの面で参加できない人がいます。その人のために、TLFから補助を出しています。
 また、もっと小規模なミートアップと呼ばれるイベントも主催しています。これは、主に特定の技術分野、Projectをテーマとして、開発者を主な対象に、そのOSSの使い方、ノウハウなどを技術の具体的な話の提供、議論し、利用、普及の促進を図るものです。
これらのイベントには、一年間で、他のイベントも合わせて、25,000人が参加しています。

教育

TLFは、支援Projectを中心に、数十の教育コースを持っています。その中には、Linux KernelのDevice Driverの書き方のようなコアな教育から、Kubernetesのような、最先端技術の使い方に至るまで、幅広い教育プランが用意されています。また、ブロックチェーンの使い熟しなど、アプリケーション寄りの教育コースも用意されています。現在、100近くのコースが用意されていて、大半のコースがwebinarで実現されているので、自分の好きな時間に、受講することができます。また、大半が無料コースとなっていますが、一部有料のものもあります。ただ、残念ながら、大半のProgramが英語のままで、日本語化はされていません。現在、LF Japanで、翻訳作業を実行中と聞いています。完了するまで待つか、それとも、英語の講座を受講するか。やっぱり、今、英語で受講してください。だって、やはり、OSSの本場は、米国ですから、英語に慣れておくことは、大事です。しかも、マイペースでできるのですから、ちょっとした、英会話講座です。
もし、英会話が苦手というのであれば、教育用のドキュメントも用意されています。聞き取りが難しいという方も、じっくりと勉強できるのではないかと思います。
ぜひ、以下のページ
英語
日本語
を見て、受講してみてください。
 

ドキュメント

TLFは、教育用に、ドキュメントを作成していますが、それ以外に、白書をはじめとする様々なドキュメントを提供しています。
教育用のドキュメントも充実していますが、変わったところでは、米国におけるJob Reportつまり、OSS関連技術者の就職動向です。ご存知のように米国では、転職が多く、また終身雇用制度が無い環境ならではの動向調査になっています。
日本とは、また違う文化、環境での調査ですが、将来海外飛躍を考えている技術者には参考になるかもしれません。
より、重要なドキュメントとして、Open Source Guides for Enterpriseと題された一連のドキュメントです。
これは、Enterprise企業(Enterpriseに限りませんが)が、OSS Projectに参加、もしくは、貢献、製品への採用を検討する際に必要なあらゆることをガイドしてくれます。
例えば、Projectに参加する際に、留意すべきこと、技術者への配慮から始まり、ライセンスの管理方法、開発、管理プロセスの策定、そのための体制作りなど、多岐にわたっています。OSSとは、開発だけでなく、周辺の様々な要素が支えていることが良くわかる文書群です。これについては、日本語への翻訳が完了しています。これを読んでいる皆さんの会社で、OSSを導入しようと計画されているならば、ぜひ、参考にしてください。
英語ページ
日本語
を見て、受講してみてください。

具体的な支援Projectの例

BlockChain

Hyperledgerは、最近FinTechで話題のブロックチェーンをOSSで実装しようとするものです。Intel, IBMを始め、日本からも富士通、NEC,日立などのIT企業が参加しています。当然、金融関係も参加していますが、特徴的なものは、その将来性を見越してか、様々な業界の企業が参加していることです。例えば、Airbus(航空機産業), Change(Healthcare産業)、Daimler(自動車)などがあげられます。これらの企業は、全世界からの部品調達管理、自動車部品管理、保険管理等にブロックチェーンを使うことにより、効率的に事務作業が行われることを期待しているのではないかと思われます。プロジェクトとして、開発だけでなく、その応用についても、PoC(Proof of Concept)として、実証実験が活発なことも、それを象徴しています。

自動車

  Automotive Grade Linuxは、自動車用のLinux Systemの開発を進めているProjectです。OSSの広がりを象徴するProjectと言えるでしょう。本Projectは、トヨタ、日産等の主要自動車Vendorがリーダーシップをとり、それに繋がるDensoなどの業界リーダーが加盟しています。開発Projectとしては、既にVersion 4.0がリリースされており、米国の事例ですが、トヨタが採用しています。

Academy Software FoundationA(ASWF)

 ASWFは、映画に代表されるVFX業界のための、OSS開発Projectです。映画「タイタニック」の特撮にLinux Systemが採用されたのは、有名なことですが、業界は、OSS採用にあたって、いくつかの問題を抱えていました。それは、会社毎に様々な改良を施したり、異なったバージョンを利用したりすることによる所謂サイロ化、OSSライセンスに対する理解不足、等が挙げられます。それらを解決するために、業界とTLFがタッグを組んで、始めたのが、ASWFです。ここでは、VFX業界用のOSSを開発し、提供していきます。参加企業には、CISCO, GoogleのようなITに近い企業がいますが、DreamWorks, Walt Disney, Sony Pictures, Warner Brothersと言った映画、VFX業界を代表する企業が参加しています。

おわりに

TLFは、企業団体で、支援するProjectも大半が巨大OSSですが、中には、Node-REDのように個人でも気軽に参加できるProjectがあります。まずは、開発に参加してみませんか。

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