3
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

【AWS】FsX for NetApp ONTAPコスト最適化戦略

Last updated at Posted at 2025-08-10

はじめに

AWS FSx for NetApp ONTAP (FSxN) は非常に高機能ですが、その分コスト管理が課題となりがちです。
常に最適なコストでストレージを運用するには、どうすればよいのでしょうか?

この記事では、ワークロードが変動するシステムを例に、FSxNの機能を最大限に活用したコスト最適化戦略をご紹介します。

対象読者

  • AWS上で大規模なファイルストレージの運用を検討している方
  • FSxNのコストを最適化したい方
  • ワークロードの変動が激しいシステムのインフラ設計を担当している方

課題:変動する要件とコストの両立

前提条件

  • ストレージ: Amazon FSx for NetApp ONTAP (FSxN) を利用。
  • データ: 主に動画コンテンツ。
  • 各フェーズの想定データ量:
    • 通常時: 約2週間分の動画コンテンツとして最大 25TB を格納。
    • 繁忙期: 25TB を超える可能性がある。
  • 各フェーズの想定アクセス: HDD層へのアクセスでも、性能要件を満たせることを想定。

実現したいこと(課題)

  1. 徹底的なコスト削減: 運用コストを極力抑えたい。
  2. SSDは最小限に: 高価なファイルシステムサイズ(SSD)は最小限で運用し、安価なHDD(キャパシティプール層)を有効活用したい。
  3. SSDは増やしたくない: ファイルシステムサイズは一度増やすと縮小できないため、安易な拡張は避けたい。

これらの課題を解決するため、FSxNの機能を活用したフェーズごとの最適化戦略を立てました。

FSxNのコスト最適化機能をおさらい

戦略を説明する前に、今回の鍵となるFSxNの主要機能を確認しておきましょう。

  • ファイルシステム (プライマリ層 / SSD):
    • FSxNでいう「ファイルシステムサイズ」とは、高速なSSDで構成される プライマリ層 の容量を指します。このため、実際にデータを格納するボリュームサイズは、ファイルシステムサイズを超えて設定することが可能です。
    • 性能が求められるデータを配置するのに適していますが、高価です。
    • 一度拡張すると縮小できないという重要な制約があります。

  • キャパシティ層 (HDD):
    • プライマリ層からあふれたデータを格納する、安価で大容量なストレージプールです。
    • プロビジョニングしたサイズではなく、実際に利用したデータ量に基づいて課金されるため、コスト効率に優れています。

  • ティアリングポリシー:
    • データをいつキャパシティ層に移動させるかを決めるポリシーです。
      • Autoモード: プライマリ層で一定期間アクセスがないデータを自動で移動させます。
      • ALLモード: プライマリ層に書き込まれたデータを即時キャパシティ層に移動させます。

  • ボリューム自動拡張:
    • ボリュームのデータ使用量が増加した際に、キャパシティ層の容量を自動で拡張してくれる機能です。

これらの機能をどう使い分けるかが、コスト最適化のポイントです。

【フェーズ別】コスト最適化戦略

1. 通常運用時:コスト最優先の「ALLモード」運用

通常時は、HDD層へのアクセスでも十分なレスポンスが得られる想定のため、コストを最大限に抑える構成を選択します。

  • ファイルシステムサイズ (プライマリ層/SSD): 5TB (最小限)
  • ティアリングポリシー: ALL
  • ボリューム自動拡張: 有効

1.png

【ポイント】

最大のポイントは、ティアリングポリシーに ALL モード を採用することです。
これにより、データは書き込み後すぐに低コストなキャパシティ層(HDD)へ移動します。高価なSSDはメタデータなどは保存されますが占有量を最小限に抑えることができます。

【注意】
ALL モードはHDD層へのアクセスが主体となるため、性能要件を満たせるかの事前検証は必須です。

2. 繁忙期:データ増には「ボリューム自動拡張」で対応

繁忙期にはデータ量が25TBを超えて増加することが想定されます。しかし、一度増やすと縮小できないファイルシステムサイズ(SSD)をここで安易に拡張してはいけません。

  • ファイルシステムサイズ (プライマリ層/SSD): 5TB (維持!)
  • ティアリングポリシー: ALL (維持)
  • ボリューム自動拡張: 有効 (維持)

image.png

ポイント

ファイルシステムサイズ(SSD)は 5TBのまま固定 します。増加するデータは「ボリューム自動拡張」機能によって、すべてキャパシティ層(HDD)で受け止めます。キャパシティ層は利用量課金のため、データが増えた分だけコストは増加しますが、SSDを拡張するよりもはるかに安価です。

繁忙期が終了し、不要になったデータを削除すれば、その分課金対象も減り、スムーズにコストを通常レベルに戻すことができます。

【注意】
ALL モードはHDD層へのアクセスが主体となるため、性能要件を満たせるかの事前検証は必須です。

まとめ

FSxNのコストを最適化するための、フェーズごとの戦略をまとめます。

フェーズ 目的 ファイルシステムサイズ(SSD) ティアリングポリシー ポイント
通常運用時 コスト最優先 最小限 (5TB) ALL SSDを極力使わず、HDDでコストを抑える。
繁忙期 データ量増加への対応 最小限 (5TB) ALL SSDは増やさず、ボリューム自動拡張で対応。

このように、FSxNのティアリングポリシーや自動拡張機能を組み合わせることで、ワークロードの変動に対応しながら、トータルでのコストを最適化することが可能です。

この記事が、皆さんのストレージ設計・運用の参考になれば幸いです。


注意事項

本ブログに掲載している内容は、私個人の見解であり、所属する組織の立場や戦略、意見を代表するものではありません。あくまでエンジニアとしての経験や考えを発信していますので、ご了承ください。


ご質問やご意見はコメント欄へどうぞ!
「いいね」や「ストック」もお待ちしています!


#AWS #FSxforNetAppONTAP #クラウド #コスト最適化

3
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
3
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?